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秘密結社KJラボ☆  作者: 星川亮司
2章初恋のハイビスカス
54/82

32 黒豚の角煮カレー

KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。


宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。


花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。



愛人(カナ)(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。


海咲(ミサキ)(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人(カナ)の娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。


リリィおばぁ(76)愛人(カナ)の島唯一の理解者

愛人(カナ)は、圧力鍋へ薩摩の黒豚の三段バラ肉のブロック、生姜のスライス、ネギの青い部分を放り込む。


「リリィおばぁ豚肉は脂身と赤身が半々だよね?」


「そうだよ」


鍋へ、日本酒、黒砂糖、醤油、鰹と昆布の出汁を入れ蓋をする。


さっと、別の火口で、ざっくり大切りのニンジン、玉ねぎ、ごろごろジャガイモを鍋にかけカレーを作る。



ピーっと、圧力鍋から蒸気が上がる。愛人(カナ)は少し置いて肉に竹串を刺す。


肉抜きで仕上げたカレーへ贅沢に、トロトロの黒豚の角煮を放り込む。


「出来上がった。KJくん、若葉ちゃん、リリィおばぁ、さぁ食べて」



ーー一時の団欒(だんらん)


若葉、カレーに絡めた豚肉の角煮を口へはこぶ。


「角煮。口へ入れたらとけるようにトロットロ」


KJが角煮を口へはこぶ。


「お肉が、う~ん、あまあ~い!」


愛人(カナ)、我が子を見るように微笑を浮かべKJを見つめて、


「元気出た?」


「・・・うん」


「加計呂麻島は今日、明日、2日間で最後だからね」


加計呂麻島滞在あと1日!


KJはびっくりして、隣の若葉を肘でつつく。


「本当なん?ぼくたち、明日が加計呂麻島最後や言うの?」


「そうよ。奄美大島発ー伊丹空港の飛行機は奄美大島から12:05分に出発するわ。加計呂麻島を朝イチで船で渡らないといけないから、加計呂麻島は明日が最後ね」


この時ばかりは、父・賢治のちゃっかり用意周到な性格を恨んだ。


だが、台風でもない限り飛行機は定刻通りに出発する。


なんと、言うことだろう。海咲(ミサキ)ちゃんとはこれでお仕舞いなのだ。このまま永遠に離ればなれになってしまう。


めまいがするように、目の前が真っ暗だった。海咲(ミサキ)ちゃんの笑顔が遠退いて行く。


ピンポーン!


インターフォンが鳴った。


「ごめんください」


と聞き覚えのある声が玄関から聞こえてきた。




つづく

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