28 海咲(ミサキ)ちゃんはどこにいるの?
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人カナの娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
村田(26)東京の芸大からやってきた。日本のゴーギャンと呼ばれた画家、田中一村へ憧れてやってきた青年。
了解が得られた村田は、愛人の手をとって、
「愛人さんがモデルになれば、僕にも二科展へ応募する絵が描けます」
そう言って村田は破顔して、スケッチブックの海咲の絵を、持参していた筒状のアジャスターケースへ入れKJへ渡した。
これでプレゼントができた!
KJは、アジャスターケースを肩へ引っ掛け走り出さんばかり、その時、若葉が気づいた。
「プレゼント渡すにも、海咲ちゃんどこにいるのかしら?」
と、愛人を見た。
愛人は、絶縁されてる自分の口からはちょっとと口ごもる。
村田が見かねて、
「あの少女なら、この時間だったら、嘉入のウティリミズヌの滝にいますよ」
「ウティリミズヌの滝?」
「昔は島のノロ。神事を司る巫女さんが身を清めた滝壺だよ。巨大ウナギもいるそうだよ」
「ありがとう!」
KJは大声で礼を言うと、勢いよく駆け出した。
スグに海咲へプレゼントの絵を届けるのだ。
飛び出したKJを心配になって、若葉も村田と愛人へ頭を下げ、後を追っかけた。




