27 村田の条件
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。父・賢治の手紙で夏休みの間、奄美大島へ来ている。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。KJの保護者。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。愛人の娘。今は、祖父母である加計呂麻病院の院長夫婦が無理矢理引き取っている。
村田(26)東京の芸大からやってきた。日本のゴーギャンと呼ばれた画家、田中一村へ憧れてやってきた青年。
がっかりしたKJを見かねて若葉が助け船を出した。
「村田さん。子供の一生に1度の思い出に、そこをなんとか協力してあげる事は出来ませんか?」
村田は、難しい顔をして、また頭を掻いた。
「条件があります」
「条件?!」
村田は、下を向いてぼそぼそと、
「・・・絵のモデルになって欲しいんです」
呆気に取られる若葉。
「絵のモデルですか?」
村田、上目遣いに若葉を見つめる。
「・・・そうです」
若葉、そんな事かとあっさりと、
「イイですよ」
と、モデルみたいにポーズを決める。
村田、ブルブル首を振る。
若葉は、ポーズが違うのかと、ちょっと、サービスセクシーポーズ。
村田、ブルブルと怯えたように頭を掻きむしり。
「違います。愛人さんにモデルになって欲しいんです!」
ポッと頬を染める若葉。ケケケとKJ。
その条件は困ったなと、顔を見合わせるKJと若葉。
「分かりました。わたしモデルやります!」
振り返ると愛人が、ウェットスーツを着て立っていた。




