20 KJの宿題
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている女子高生。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。
リリィおばぁ(76)
時刻は午後8時をまわった。KJは卓袱台を片付けたあとに、勉強道具を広げ頭を捻っている。
算数、理科の宿題は、若葉がつきっきりで勉強を見てくれたから片付いたが、国語の絵日記の宿題と、読書感想文の宿題は賢治の指示で、愛人がみっちり見てくれている。
まずは絵日記。
昼間、海咲に出会ってからずっと姿が頭から離れない。どうやったらもう一度会えるだろうか、お婆様に散々叱られただろうからどう謝ろうか、ぐるぐる回っている。
もしかすると2度と会えないかも・・・。と、とても耐えられそうにない不安もよぎる。
海咲ちゃんに会いたい。あの顔に見つめられたい。
そう思うとKJは胸がきゅ~っと締め付けられるように苦しい。
眉を寄せて困った顔。
海でお婆様に叱られた時の目を伏せた顔。
そして、出会った時の寝ていたKJを笑顔で見かける顔。
海は怖くないと言ったあの笑顔を!
国語の勉強を見てくれているのが、若葉じゃなくて愛人さんだから、ボクのお母さんで、海咲のお母さんだから、なんだかうれしくて夢の中にいるような気持ちもする。
「愛人さん。海咲ちゃんのことを思うと胸がきゅ~っとするんだ」
KJは、なぜそんな気持ちになるのかわからないから正直に愛人へ尋ねてみた。まったく初めての経験なのだ。
愛人優しく微笑んで、
「それは恋ね」
「今度いつ海咲ちゃんに会えるか分からないからスグに思いを伝える方法ないかな?」
「そうね手紙を書いてみたらどうかしら?」




