17 リリィーおばぁの鶏飯
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)徳浜ビーチで出会った女の子。
リリィおばぁ(76)
愛人の車でリリィーおばぁの家へ帰って来た3人。
リリィが、湯気あがる鍋に鶏肉を灰汁抜きしながら、出汁をとり茹でる。
酒、淡口正油、塩を濃いめに調え干し椎茸。
白米に鶏肉を崩しながらバラ切りにして、金糸卵、鶏肉、椎茸を刻んで海苔を散らして出来上がり。
最後に、鶏肉からとったスープをサラサラかけていただきます。
リリィ「島の料理だよ」
愛人「鶏飯ね。リリィおばぁの鶏飯は出汁が一味違うのよね」
リリィ「それは、わたしが死ぬときに教えてあげようね。それまでは秘密さ」
愛人「死ぬときって、それじゃ秘密のまま墓場へ持っていくってことじゃない。イジワル」
若葉は、卓袱台へ並べられた鶏飯をクンクと、出汁の匂いを嗅ぐ。
若葉「美味しそうな出汁の香り。お茶漬けみたいだけど手が込んでる」
リリィ「昔はほんとに貧しい島だったから、本土から大和人が来ると、こうやって鶏を潰してもてなしたの」
若葉「鶏を潰す?!」
リリィ「庭先で飼ってる鶏を首を絞めて殺して食べるのよ」
「えっ!」と、若葉・KJ箸をとめる。
リリィ「今は、スーパーでササミを買って来るさあ」
若葉「それはそうと、今日、加計呂麻島病院の孫娘ちゃんに会ったんです」
つづく




