12 キミはなんてかわいいんだろう
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
愛人カナ(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲ミサキ(8)徳浜ビーチで出会った女の子。
KJは、そろーり爪先を海面へのばす。見守る海咲の目もあるからKJは勇気を振り絞って、ザブンッ!と海へ飛び込んだ。
「恐くないよ。海咲ちゃんもおいでよ」
海咲は恐々、海面へ足をつける。
「キャーッ!」
KJがイタズラに水をかけた。
「ほら、大丈夫」
「ケケケ」と笑って海へ潜るKJ。
海咲、不安ながらまた一歩海へ足を踏み入れる。
「冷たい」
KJ、海坊主のように海面から、突然、顔を出す。
驚いた海咲海へ尻餅をついて全身を濡らす。
「やったな!」
海咲は、KJにやり返そうと体を肩に乗っけて沈めにかかる。
すっかりリラックスした海咲を見て、KJは思った。
なんてかわいいんだろう!
KJは海咲を追いかけて、逃げる海咲は楽しげに笑いかける。
「KJの言うとおり海は恐くない」
KJとたわむれながら海咲は言った。
「ねぇ、好きになった?」
KJは心を見透かされたように驚いて、ごまかすようにトボケて、
「なにが?」
「海。もう海は恐くないわね」
「(照れながらモジモジと)うん。ねぇ、海咲ちゃんはいくつ?」
KJは海咲に歳を尋ねてみた。ずっと気になっていたのだ。
「8歳よ」
「え!!」
「どうしたの?」
「もっと上かと思ってた」
体もKJより大きいし、態度もずっとおマセだ。とても同じ歳には思えなかった。
「KJはいくつなの?」
「ボクは・・・ボクも8歳(・・・まだ、数ヵ月あるけど)」
「あら」
海咲は、イタズラっぽい目でKJを見下ろすような仕草をしてみせた。
二人は、時間も忘れて海で遊んだ。いつの間にかザーっと、スコールが降ってきた。
空にお日様は登っているのに、雨を降らせるなんて神様の祝福だと思えた。
まるでこのビーチにいるのはKJと海咲の二人だけのような気がしてくるーー。
「海咲ィィィーー!」
ビーチに甲高い声が響いた。
つづく




