11 イルカとTシャツ
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)白い帽子の女の子。
「何するの?」
「ボクにまかせて」
ヤシの木立の前でテントを張った海の家で、イルカの浮き輪を貸してくれる島のおばぁの店。
「いくらですか?」
「500円」
島のおばぁが答える。
海咲を振り返ると、途方に暮れて首を横に振るばかり。
困っていると、島のおばぁが「ほらね」とイルカとTシャツを持ってきた。
「お嬢ちゃんが海へ入るには、大人物サイズのこのTシャツがいいさぁ」
差し出されたTシャツを、ためらう海咲に渡してやりながら、KJは言った。
「さすがおばぁ。海へ入るなら着替えなきゃね」
「Tシャツはサービスさぁ。海から戻ったら返してね」
KJがポケットから500円出して渡しておばぁに、
「イルカはいいや」
「楽しんでおいでね」
おばぁの店のテントの陰で海咲が着替えるのを待った。
おばぁのサービスは、海咲の体には大きくて、ちょうど胸から腰までのワンピースのようだ。
二人はさっそく海辺へ出た。
つづく




