10 海は恐くないさ!
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
愛人カナ(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
海咲(8)白い帽子の女の子
ビーチパラソルの陰で並んで座って海を見つめるKJと少女。少しお姉さんに見える少女が、
「あなたお名前は?」
「ボクはKJだよ。キミは?」
「海咲」
KJと海咲が同時に、
『「変な名前」×2』
「ボクは賢太だけど、お父さんが賢治でその息子だからJr.をつけてKJなんだ」
「わたしもお父さんがここ加計呂麻島の徳浜ビーチに咲くハイビスカスが好きで名付けてくれたの」
KJが、恥ずかしそうにもじもじしながら尋ねた。
「海咲ちゃん、泳げる?」
「もちろん・・・」
KJは、女の子に負けたのかと、がっくりと頭をたれる。
海咲は首を横に振って、
「もちろん泳げないわ。見てるだけ」
「ボクも見てるだけなんだ。お父さんがプールしか連れていってくれないから足がつかない海は怖いよ」
「わたしは、お母さんと一緒に泳ぎたいけど、お爺様とお婆様が危ないから海へ入ってはダメだと言うの」
「なぜ?」
「わたしは危ない海へ入っちゃいけない・・・」
海咲はそう言うと、きっと口を結んだ。
KJはまずいことを言ってしまったのかとツラクなり、自分を励ますつもりで、
「海なんて危なくないさ。さっきも溺れたらガイドをしている愛人さんがスグ助けてくれたもの大丈夫!」
海咲は無言のまま、首を横に振る。
寂しそうな海咲を見ているうちに、KJは、なんとかしてあげたいと思った。
思ったらスグ行動に移すのがKJだ。KJは、自分がカナズチだと言うのも忘れて海咲の腕を取り強引に海へ向かった。




