9 徳浜ビーチの出会い(挿絵ひつじこ様@A_Stray_Sheeep @_SatoseeN_)
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
愛人(32)奄美大島で観光ガイドをしている。賢治の亡くなった妻・涼子に瓜二つ。
白い帽子の女の子(8)
照りつける太陽、真っ白な砂浜、打ち寄せるエメラルドの海。空色のビキニの若葉は、海へと駆け出す。
挿絵提供 ひつじこ 様 @A_Stray_Sheeep @_SatoseeN_
「夏はやっぱり海よね。KJもいらっしゃい!」
ビーチパラソルの下でKJは、大きな浮き輪を枕に、ヤドカリと遊んでいる。
「ぼくは、海はいいよ」
若葉、波に体をあずけ
「気持ちいいわよ」
メンドクサそうに手をあげて「ま、そう言う事で」と返事をする。
若葉、海からあがって来て、KJを起こすと浮き輪を頭から無理矢理つっこみ海へと引っ張りこむ。
「おかしいと思ったのよ。こんなに暑いのに海に入りたがらないなんて、あんたカナズチね」
若葉、KJの手を引いてばた足の稽古。
「お父さんが、プールしか連れて行ってくれないから・・・」
「家の家系は海の民だから、みんな最低50mは泳げるのよ」
プスプスーー。
「ねえ。沈んでるよね浮き輪?」
「そう言われれば、何となく沈んでるような・・・」
KJ暴れてバタバタと、
「わ~沈む~!」
若葉、海に足をついて立ち上がろうとするのだが、思った以上に深瀬へ来ていて足がつかない。
もがくKJ、必死で若葉の首へととりすがる。
「KJ暴れないで(海水が口へ入る)」
憐れ二人は溺れてしまった。
「大丈夫二人とも?」
ジェットスキーで横付けた愛人が、ひょいと、二人を後ろの座席へ助けあげる・・・。
ビーチパラソルの下で寝ていたKJ、鼻をヤドカリが挟んで夢か現か目が覚める。
「ウフフ」
KJを覗き込む白い帽子の少女。
「うはっ!(びっくりするKJ)」
南国の海育ちのはずなのに、育ちの良さそうな薄いブルーに花柄のワンピース。日焼けもしていない真っ白な肌。
少女、KJの隣へ座って、
「あなた、島の子じゃないわね。何しに来たの?観光?」
「ぼくは、お父さんを探しに・・・君は?」
「わたしは、お母さん・・・」
つづく




