5 愛する人
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家。失踪中。
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
麦ワラの女性。
「・・・あの、大丈夫ですか?・・・もしかするとKJくんと若葉さんじゃないですか?」
空港の待合ロビーでKJと若葉でアホやってると、懐かしい声のする麦ワラの女性が、若葉へ寄り添い抱き起こし声をかけて来た。
若葉、大丈夫ですと、ふと顔をあげる。
「お、お、お姉ちゃん!」
若葉を助け起こした麦ワラの女性は、若葉の姉・涼子であった。
「ふぁーん。お姉ちゃん」と若葉。涙があふれだし麦ワラの女性に抱きつく。
若葉の様子を見ていたKJは、幼くして母・涼子を失ったせいか、顔が思い出せない。
「(若葉、KJに)KJ!お母さんよ」
「おかあさん?」
「そう。お母さん」
若葉、KJにそばへ来るよう促す。
KJ、一歩。二歩近づくが、逢いたかった母との対面に、どう振る舞えばよいか分からない。
「おかあさん?」
麦ワラの女性、帽子を脱ぎ顔をあげ、ばっと、頭を下げる。
「KJくん、若葉さん、ごめんなさい。私、涼子さんとは違うんです。ここ奄美大島でガイドをしているカナと言います」
「・・・カナさん?」
「奄美大島の方言で『愛人』と書いて、愛人です。宮里先生から、奄美にいる間、二人のガイドをするよう頼まれました」
「(若葉、涙をぬぐい)義兄が、手紙に書いて寄越した逢わせたい人って、愛人さんのことね」
「私も宮里先生から涼子さんの写真を見せられて、私と瓜二つで驚きました」
愛人が母・涼子じゃないと分かったKJは、サングラスと帽子のツバを下げ表情を読み取られまいと隠してしまう。
愛人、KJへ歩み寄って膝を折り、下から覗くように座り、KJの帽子とサングラスを取る。
「KJくん。よくお顔を見せて」
KJ、下を向き必死で涙をこらえている。
カナ、自分の麦ワラ帽子を、フワッとKJへかぶせてニッコリ笑って、
「今日はもう遅いから我家へ泊まって、明日一緒に海行こうか!」
KJ、「うわ~ん」と涙腺が決壊し、愛人の首に抱きつき泣きじゃくる。
赤いルビーの海は夕暮れに染まり、KJを静かに包み込むように抱き寄せるのであった。
つづく。
早朝から和事芝居を書く作者って、やっぱり頭どーかしてる(笑)
もう、ストックないから、明日はラボ☆の連載休ませて~。




