19 伝説のカレー
kjこと宮里賢太は、町の問題児。売れない作家宮里賢治の一人息子だ。
母、涼子を交通事故で早くに無くし、賢治の不在中は、涼子と歳の離れた女子高生の妹、若葉が身の回りの世話をしている。
そんな、夏のある日の夕方・・・。
<登場人物>
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
水を薄く張った寸胴鍋から灰汁を取るマチコ。
お手並み拝見と、皿を並べて様子を窺う若葉。
「(あっ!と、気づいたように)マチコ先生!そろそろカレールーですよね?」
若葉、「どうぞ!」とキッチンの引き出しから、熟成カレーのルーを取り出す。
「いいえ」と、マチコ。リュックサックから、
「まずは・・・」と、
ボイルしたトマトの缶詰。つづいて、スパイス。
1つ、甘く爽やかなカルダモン。
2つ、葉巻のようなシナモン。
3つ、真っ赤な太陽鷹の爪。
4つ、海の男の汗の臭いクミン。
5つ、熱い男のスパイス、ガラムマサラ。
最後に、これ
「賢太くんが、大航海時代の作文へ書いたターメリックよ」
ヤヤッと、若葉。
「kjの大航海時代の話は義兄さんが作った作り話じゃないんですか?」
「賢太くんの話がやけに面白いから、私、詳しく調べたのよ。すると、ジョーダン船長たちがデリーで食べたカレーが実在したんです!」
kjは、マチコの言葉に目を輝かせる。
マチコ、フライパンを火にかけ、さっと、みじん切りした玉葱を飴色になるまで炒め、ボイルしたトマトを放り込む。
フライパンの中身を寸胴へぶちこみ煮込む。
空になったフライパンへサラダ油を注ぎスパイスを炒める。
「これが、カレーのルーよ」
若葉、フライパンに顔を近づけ、クンクと、香りを嗅ぐ。
「目に染みるような刺激的なスパイスですね」
マチコ、スパイスのルーを寸胴へ投入し、かき混ぜると、カレースープが出来る。
「出来ました。名づけて、ジョーダン船長のカシミールカレーの出来上がり~」
若葉、聞きなれない言葉に首を傾げて、
「カシミールカレー?聞きなれないカレーですね」
「ジョーダン船長たちが居た町がインドのデリーよね?」
「はい。スープのようなカレーでした」
「実は東京にデリーと言うインドカレー屋さんがあって、そこの名物がシャバシャバのカシミールカレーなのよ」
「義兄さん、それを知っていて、さらっと物語へ織り込んでいたの!ねえ、kj」
「僕は、そんなん知らへんわ」
「宮里先生は、わかっていて簡単に即興で物語を作っちゃうんだから、誰でもは真似できないと私は思うわ」
「kj、義兄さん。ただのスケベな作家じゃないの?!」
「そんなん知らんって!」
マチコ、カシミールカレーと、炊きたてのごはんを別々の皿へ取り分けて、三人前をテーブルへ並べる。
「さあ、召し上がれ」
つづく
ストック使いきってしまった。賢治カムバック~。作者の代わりに書いてちょ~。