16 夏はこれからだ!
【秘密結社kjラボここまでのストーリー】
kjこと宮里賢太は、町の問題児。売れない作家宮里賢治の一人息子だ。
母、涼子を交通事故で早くに無くし、賢治の不在中は、涼子と歳の離れた女子高生の妹、若葉が身の回りの世話をしている。
そんな、夏のある日の夕方・・・。
<登場人物>
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
パタパタパタ。
パチン!
パタパタパタ。
パチン!
KJは、縁側にすわって、団扇でシツコイ蚊と格闘しながら、賢治の金タライに足を浸して涼んでいる。
「kj、甘いの食べる?」
と、台所から学校から帰ったまま制服の若葉が優しく声をかけた。
「洋菓子だったらいらないよ」
「kjあんた贅沢いうわね」
若葉は水をはった木目の風呂桶へ氷を浮かべ、品良く猪口(陶器の器)を沈めて、アンコが透けて見える水まんじゅうを運んできた。
「何これ?」
「和菓子よ。お父さん出してくれたことないの?」
「ここは日本人やったら、かき氷イチゴに練乳やろ!」
「水まんじゅう美味しいのよ。だまされたと思って食べてから文句いいなさい」
そういうと若葉は、竹串で水まんじゅうを切り分けて、「はい、どうぞ」と、kjへ差し出した。
kjは、顔をしかめて、イヤイヤ口へ運ぶ。
「どう?美味しいでしょ?」
kjは、モグモグしながら、口をとんがらせて、
「美味ないわ。僕は駿河屋の栗羊羹夜の梅の方が好きやわ」
と、女子高生の叔母の若葉へ反抗した。
「あんたお父さんが消えてから、生意気になってきたわね」
「若葉はうるさいねん!」
と、kjが生意気いうと、若葉にこめかみグリグリ攻撃をされた。
「まったく、この子は誰に似たんだか生意気ね。完全に宮里家のDNAね」
そうこうしていると、玄関の引戸がガラガラと開き、
「すいみません、宮里さんいらっしゃいますか?」
と、若い女性の声がした。