15 若葉のばーか!
kjこと宮里賢太は、町の問題児。売れない作家宮里賢治の一人息子だ。
母、涼子を交通事故で早くに無くし、賢治の不在中は、涼子と歳の離れた女子高生の妹、若葉が身の回りの世話をしている。
そんな、夏のある日の昼下り・・・。
<登場人物>
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
朝から熱をだしたkjは、縁側の部屋に横になり、うすぼんやりと雨の音をきいている。
車が走って水たまりをはねた。
急に雨脚がまして軒先へ鳥が逃げ込んだ。
もう、表の声は雨に消されて聞こえなくなった・・・。
みんな、家でどうしてるのだろう。
こういうときのkjは、兄弟のいる家庭がうらやましい。
肉屋『花田』のはっちゃんの家は9人兄弟だから、毎日、夕飯になると、とんかつ、からあげ、ハンバーグの大きい小さいで取り合いになるそうだ。
そろばんネズミ男の家は、公務員の家で、お父さんが必ず夕飯にはそろってる。仕事のことこそ話はしないが、一緒にお風呂に入って、テレビを見て、たまに、宿題を見てくれるそうだ。
「はーあ」kjは、ごろりと寝がえりをうった。
お父さんはどこへ行ったか姿こそ見せないが、読みかけの本や、アイデアのメモ書きが、移動したり、現れては消えすることで、帰っていることはわかる。
若葉は天然だからkjには、何を考えてるかすらわからない。
家はへんな家族だ。いつも、普通の家族にあこがれる。
きっと、お父さんは休みになれば、公園でキャッチボールをしたり、遊びにつれていってくれるんだろな。
お母さんは、やっぱり、お弁当を作ってくれて、僕が学校のテストで100点とったらほめてくれて、熱を出したら、そばにいてくれるーーー。
軒先の鳥が鳴きだした。雨が上がったようだ。
表でシャッターを上げる音や、人の話し声がする。
♪あめあめふれふれかあさんが じゃのめでおむかえ うれしいな ぴちぴち じゃぶじゃぶ らんらんらん・・・・・・・。
そんな唄が聞こえてくるようだ。
・・・ようだ!
耳を澄ますと、ふすまの向こうの部屋から聞こえてる。
アホの若葉が唄ってる。唄って、水と熱さましをもって入ってくる。
「あんたね バカは風邪ひかないっていうのに、いつも、簡単に風邪ひいちゃうんだから、バカもやっぱり風邪ひくのね」
僕はなんだか顔を見られるのがいやで、布団をかぶった。
「なんとか言いなさいよ。あんたも義兄さんに似て、悪口以外は話下手!ねえ、なんとかいいなさいよ!」
「若葉のバーカ!」
「人が心配してあげてるのに あんたどう言うこと恩を仇で返す気!」
「バーカ、バーカ、若葉のド天然!」
「ちゃんと、顔みせなさい!」
そして僕はちょっと泣きながらグリグリされる。
僕の頭のいたいは いっこうに治らないけれど、若葉の一つだけある取り得にいつも救われる。
お父さんも僕も、若葉のそこが好きなんだけど、バカだからきずかない。言ってあげれば喜ぶけど、言わないところが作家だし、僕らしいのだ。
だから、かわりに、
バーカ。
と言う。
うわぁ~!調子にのって毎日連載してたから、書きだめストックが今週分しかないぞ!
どうするkj!どうする賢治よ!ダメ作者に代わってつづきを書いてくれまいか?