13 書斎から見えるもの
kjこと宮里賢太は、町の問題児。売れない作家宮里賢治の一人息子だ。
母、涼子を交通事故で早くに無くし、kjは母恋しい。現在は、涼子と歳の離れた女子高生の妹、若葉が身の回りの世話をしている。
そんな、夏のある日・・・。
<登場人物>
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
賢治の書斎は、本棚から溢れ出た本の山で足の踏み場もない。
いつも整理して片付けようとするのだが、馴染みの古本屋から作家必推の金塗りのリストが届き増える一方である。
若い頃、伝説の夏目のおっさんから連なる一門の末の師匠に鍛えられ、作風や癖、思考。 一銭にもならない妙なプライドまで引継いだばっかりにこの始末。
「ややこしいオっさんに捕まったもんだ……」
道に入っる時、はじめて師匠から渡された埃のかぶった本の「千利休 」を手に取って多少感慨に更ける。
俺は本が大嫌いでおっさんの手を焼かせたな……グゥ~……いけねぇ、あさたべしないと今度こそ寝込みを襲われる。
若葉の作った飯でも食うかと、さっきまで徹夜で書いた机上の少年向け探偵小説「暗闇ゾロ」の原稿に、かって師匠から渡された本で重しをする。
「キャー!」
書斎の窓から見える眼下に広がるたこ公園から少女の悲鳴。
「kj!また女の胸を触りやがったな!!」
草むらからピョンと飛出し、ワァーと駆け出すkj。
夏目漱石は、自宅で沢山の門弟を排出した。芥川賞の芥川龍之介が有名だね。漱石の愛弟子の一門は、今も連面とつづいているそうな。