10 グー!
【秘密結社kjラボここまでのストーリー】
kjこと宮里賢太は、町の問題児。売れない作家宮里賢治の一人息子だ。
母、涼子を交通事故で早くに無くし、涼子と歳の離れた女子高生の妹、若葉が身の回りの世話をしている。
そんな、夏のある日の夕食・・・。
<登場人物>
KJ=宮里賢太(7)小学生でありながらサングラスをかけた町の問題児。
宮里賢治(36)KJの父、売れない作家
花巻若葉(18)KJの叔母、賢治の亡くなった妻、涼子の妹で、押し掛け女房のような事をしている。
オレンジの裸電球がkj、賢治、若葉が囲むテーブルを優しく照らしている。
賢治のおかわりの皿にカレーのルーだけを注ぎ手渡す若葉。
「(kjに)ふーん。そうなの面白そうな話ね。それより、早く食べちゃわないとカレー冷めちゃうわよ」
賢治、若葉からおかわりの皿をうけとって、トボケたそぶりで、カレールーへちぎったフランスパンをつけて食べる。
「カレーはスープより熟だな」
「(裏切った!!)」
唖然とするkj。
「kj!おとぎ話はいいから、ボヤボヤしねぇ~で早く、食っちまえ。全く、誰に似たんだか」
しれーっと、賢治が、たたみかける。
「(騙された!!!)」
呆気にとられるkj。
「で、誰から聞いたんだその手の込んだ作り話は?」
と、賢治は止めを指す。
とりなすように優しく若葉。
「あら、作り話だったの面白かったのに」
「あったり前だ。背景の大航海時代が『宝島』。目的地のガンダーラが『西遊記』。主人公が『マイケル・ジョーダン』バスケットの伝説的なプレーヤーとくりゃやり過ぎ!物書きなら致命的。オチャラケすぎだ」
賢治のカレースープにまつわる伝説の作り話を信じこんでいたkjは、チェッと、口を尖らせて怒ったような表情をみせ、カレーに手をつけない。
「あら、お腹すいてないの?」
kjは返事もせずに若葉へ背を向け、プーっと、ふくれる。
賢治、もちろんkjの心情を見てとって頭を捻って、
「あっ!お前、若葉に甘えよーと思って食わねーんだな」
「(わなわなとむきになって肩を震わせ)甘えてへんよ。僕は、辛口が好みなんだ!!」
へへッ、しめた!と賢治。
「おっ、カレーの王子様は卒業か、今日からは俺と同じ王様だながんばれよキングジュニア」
そうなの?と、若葉。kjの甘口カレーは自分が引き取って、代わりに若葉の辛口カレーを交換してやる。
思わぬ展開に威勢をはったkjは、まだきついであろうスパイシーなカレーをしょうがなく口へ運ぶ。
「辛くない?」と、心配そうな若葉。
kjは、ピリピリ痛い口の中を、必死でこらえてみせる。
そして、小さな指の人差し指と、親指をくっ付けて6の字を作り見栄をはる。
賢治、クスっと可笑しさがこみ上げながら、
「グーだってよ。グーだ。kj、若葉のカレーは旨いって言ってるぜ」
「そうなの、美味しかったのkjありがとね」
そうして、kjは照れくさそうに、顔を背けた。
kj、賢治、若葉の会話劇の回でした。次回、若葉急接近!?