番外編 1.5話 父親
ほい。玄武です。
今回は番外編。読まなくても大丈夫(?)ですが、読んでくれると喜びます。
それではいってみよー!
彼はこの日を待ちわびていた。がっしりとした身体。背は高く、腕と足は太い。しかし、どこか優しげな表情を浮かべているのは、彼が父親だからだ。
ただ、彼は人間ではなく龍人族と呼ばれる亜人だ。彼のこめかみからは黒い角が生え、恐竜のような黒い尻尾もある。さらには、額の左側には傷がある。短く切り揃えた髪は漆黒の如く黒い。圧倒的な威圧感を感じる……。彼の名はギルバ。龍人族の屈強なる戦士だ。そんな彼は……
「あなた、顔がまた緩んでる」
「そんなこと言ってもよー…」
子煩悩である。この日が楽しみで仕方なかったのだ。
龍人族の子供は、人間の子供と違い、生まれてから寝ている時間がとてつもなく長い。その間、龍人族の母親は「子守唄」を歌う。
この子守唄は、一子相伝らしく、唄には家の数だけ種類があるのだ。
そして、龍人族の赤ん坊はその唄を寝ながら聴き、言葉を覚える。亜人ならではの習性だ。
そんな赤ん坊の寝ている時間はもうそろそろ終わる。
「名前、決まった?今度はあなたの番だったでしょ?」
「あぁ、この子の名前は…ガルドだ」
「ガルド…。いい名前ね」
と彼の隣の彼女は微笑む。我が子の名前を吟味しながら、何度も呟く。
彼女はリアス。龍人族の族長の一人娘だ。元々、彼女には許嫁がいたのだが、彼女は自分の意思を貫きたいと言い続け、族長である父親を負かしたのだ。すらっとしているが、女性らしい体つき。薄色の髪は長く、今は纏めてお団子状態にしている。おっとりとした顔つきに合わず、実は意外と頑固者なのだ。髪と同じ色の角は細く、ギルバよりも短く、尻尾も細い。
彼女がなぜ、ギルバを選んだのかは、ギルバにも分からない。しかし、彼女はギルバを見るとき、彼の母親と同じ目をするのは確かだ。小さい頃も同じ目をしていた。幼なじみだからだろうか?
そんなことを考えていれば、ガルドが目を開けた。
「あなた、起きたみたいよ」
「あぁ、目元はお義父さんにそっくりだな」
つり上がってはいるが、人懐っこそうな目は族長に似ている。手も、足も、角もまだまだ小さい。
嬉しくなり、ギルバはガルドを持ち上げる。
「ほーら、高い高ーい」
ガルドはびっくりしたように目を開けたが、徐々に笑顔へと変わる。
「おぉ、ガルドが笑った笑った!リアス、笑ったぞ!」
「ふふ、そうね」
ギルバの声に反応したのか、バタン!と扉を勢いよく開けて閉める音と、ドタバタと足音が聞こえた。娘のアイナだ。
「パパー!ママー!生まれたー?!」
濃い紫の髪を2つに結んでいる、元気な少女が駆けてくる。
「アイナ、また裸足で遊んでたの?服もこんなに汚しちゃって…!」
「あはは、ごめんなさーい」
反省の色を見せないアイナは、そのままギルバに近づく。
アイナも弟の誕生を楽しみにしていたのだ。クルクル回り、はしゃいでいる。
親父に挨拶しに行かないとな…。ギルバはふとそんなことを考えた。
もう少し落ち着いてからお義父さんにも挨拶して、里の皆にも伝えるか…。あとは、ブレンダにも挨拶にしかないと。アイツの子供も確か、この時期にそろそろ生まれそうって言ってたよな…。
ギルバはおもむろに、はしゃいでいたアイナの頭を撫でていた。
今回はこんな感じです。
ガルドの誕生を楽しみにしていたギルバ、リアス、そしてアイナの3人。
孤児だったガルド(甲汰)は3人と上手くやっていけるのか…?
温かい目で見守って下さい。
それでは、次回に続く!




