第二話 空野雪斗の転生
遊戯
俺、空野雪斗は住んでいるアパートから程近いコンビニで、アルバイトをしている。
俺には親がいない。両親共に俺が幼い頃に事故で他界したらしく、身寄りの無かった俺は孤児院に引き取られそこで育った。
そして、小中学校を卒業し、高校生となってからは、孤児院を出てアパートを借りてバイトをしつつ高校に通っている。
で、今は午後11時。あと一時間であがれる。
「うっし。もうひとがんばりだ。」
そう自分に気合いを入れつつ、店内の商品の確認を終える。
「あとは、在庫の確認っと」
そう思って、今レジを打っている俺と同じバイトの女性に、
「ちょっと在庫の確認してきます」
そう声をかけてレジとは、反対方向にある在庫の保管室に入った。
それからしばらくして、在庫の確認ももう少しで終わるという時、
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
店内に悲鳴が響き渡った。
聞こえたのはレジの方だ。
俺は急いで保管室から出る。すると、フルフェイスヘルメットを被った男が、ナイフを持ってレジの女性バイトさんに向かってなにか喚いていた。
俺は考えるより先に体が動いていた。ナイフを奪おうと、強盗に向かって躍りかかる。
すると、俺に気付いた強盗が、ナイフを取られまいと抵抗してきた。
しばらくそうやって揉み合っていたが、不意に胸の辺りに鋭い痛みが走った。見てみると、強盗が持っていたナイフが俺の左胸の辺りに刺さっている。
そして俺は、急に力が抜けて立っていられず、倒れ込んでしまった。その拍子にナイフが俺の胸から抜けて大量の血が、吹き出した。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
二度目の悲鳴をあげながら女性が俺に駆け寄ってくるのが見えた。
「空野さん、空野さん大丈夫ですか!?い、急いで救急車を呼ばないと」
「う、ぁあ」
いつの間にか強盗は居なくなっていた。どうやら逃げたらしい。よかったぁ。
…ヤバイ、なんか体の中から寒くなってきて、意識が薄れてきた。
「空野さん、目を閉じてはだめです!今救急車を呼びましたから頑張って下さい!」
そう泣きながら言ってくる女性。
あぁやべぇ、意識が朦朧としてきやがった。俺、死ぬのかな。まぁ最後にこんな美人さんに泣いてもらえるんだからよかった...の...かも...な....
そうして俺は意識を失った。
「ん、ここは...?」
気がつくと俺は、ただただ白いだけの何もない空間に立っていた。
何故俺はこんな所にいる?確か俺は、バイト中に強盗がきて、そいつが持っていたナイフで刺されて、意識を失った。
「ってことは、俺は死んでて、ここは天国ってことか?」
そう呟いた時だった。
「まぁ、大体正解かな」
「!?、誰だ!!」
「うふふ。後ろ、後ろ」
俺は慌てて後ろを振り返った。
すると、そこには濃い茶髪をセミロング位に伸ばし、白いワンピースを着た中学生位の少女が立っていた。
「君は、誰だ?」
俺は反射的にそう聞いていた。
「初めまして、空野雪斗くん。私はメーティス。智慧の女神をしている者よ?」
「女神!?...ってことはやっぱり俺、死んだのか?」
「えぇ。あなたは既に死んでいるわ」
「...そうか」
「ずいぶんと冷静なのね。もっと驚いたり嘆いたりすると思っていたのだけれど」
「そう見えんのか。これでも結構堪えてるんだけどな」
「そう。そうなのね」
ん?なんか急に遠くを見だしたぞ。なんか話題変えたほうがいいのかな?
「てか、ここは一体何処なんだ?」
「えーっと、そのことと、君自身のことについて話そうと思っているんだけど...遅いなぁ...」
「ん?誰かを待っているのか?」
「えぇ、そろそろ来てもおかしくないのだけれど...」
「何の話ですか?」
いきなり真横から声が聞こえてきた。
「うぉぉ」
びっくりした~。
「もー、遅いよアテナちゃん」
「ごめんなさい。お母さん」
「ん!?」
なんか今、かなり聞き捨てならん言葉が聞こえたようなきがしたけど...お母さん?何処をどう見ても、後から来たアテナとかいう女性の方が年上に見えるんだけど。
綺麗な金髪のロングヘアに、メーティスと同じ白いワンピースを着ている。ぶっちゃけどう見ても姉と妹にしか見えない。
「...い、,..お..い、おーい!雪斗くん?」
「は、はい!」
「なーにぼんやりしてるんだい?」
「い、いえ別に」
「ふ~ん。まっいいや。それよりも、ほらほらアテナちゃん自己紹介」
「あ、はい。えーっと、初めまして、アテナと言います。一応、調和の女神をやっています。よろしくお願いします。」
「あ、ご丁寧にどうも、こちらこそよろしくお願いします」
.....なにを?
「じゃ、アテナちゃんも来たし、君のことについて話そっか。...君にはね、別の世界に転生してもらうよっ。ここはそのための空間。」
「は?異世界に転生?なんで?」
「うーん、強いて言うなら神々の気まぐれでもあり、慈悲でもある」
「ど、どうゆうことだ?」
「私達神はね、君のようにまだ若い人間が死んでしまうと、たまに思うんだよ。もっとやりたいことがあったのではないか、とね」
「だから、転生という手段を使っているのか」
「そうだよ」
「あの雪斗さん。どうかお気を悪くしないで下さい。私達もこうした方法以外、なかったのです。」
「あぁ、そうなんだろうな」
アテナの顔、必死だった。それはきっと、本心なのだろう。
「と、言ってもただ異世界に放り出すだけじゃあれだから、担当した神々が加護をあたえてるの。君には私とアテナちゃんの加護をあげるね」
【ユニークスキル、[智慧の女神]を獲得しました。】
急に頭の中に流れてくる声。
「これが私の加護。全ての智慧を知る力。そして今のが世界の声」
「世界の声...」
「そ。大切なことを言ってるから聞き逃さないようにしてね?」
【ユニークスキル、[調和の女神]を獲得しました。】
「そしてこれが私の加護です。様々な生き物と調和する力。大切に使って下さいね?」
「ああ、なんかよくわかんないけど...ありがとう、二人とも」
「気にしないで」
「当然のことをしているだけですから」
優しい人...神達だな
「そうだ、転生前に聞いておきたい事とかない?」
聞いておきたい事...
「じゃあさ、俺以外にも転生者っているのか?」
「えぇ。いるわよ」
「確か、雪斗さんを含めて5、6人程いるはずです」
「そっか。ありがとう」
そう言った後だった。
「そろそろ時間の様ね」
「時間?」
「えぇ。転生するってことよ」
「そうか。もう転生するのか俺」
「そう。最後に私達が見届けてあげるから、向こうでも頑張ってね?」
「私も見届けます!だからあっちに行っても頑張ってくださいね!」
「あぁ、最後の最後までよく分かんなかったけど...これだけは言える。二人とも、本当にありがとう!俺向こうでも頑張ってくるよ」
そうして、俺は再び意識を失った。
初めての投稿です。まだちょっと興奮しています。初めてなので、誤字、脱字その他の間違いがあるかもしれないので、見つけたら教えてくださいね。
それでは、読んでくれてありがとうございました。次回もお楽しみに。




