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仕事の電話をしながらホームに立ち電車を待つ都姫の隣に、彼女の同僚が並んだ。ちょうど電話を切った都姫は彼に気がつき、「あ。」と小さく声を上げた。彼はそんな彼女に、久しぶり、と言った。
「1週間くらい見かけなかったから、死んじゃったのかと思ったわ。」
都姫の不思議そうな顔に、彼は一瞬驚きの表情をみせたが、すぐに可笑しそうに笑った。
「外部と組んで仕事してたからね。会えて嬉しいよ。」
「そお?じゃあ、私も嬉しいわ。」
都姫も微笑みながら言った。
二人は電車に乗り、世間話をした。ついでに、夕食も摂ることにした。
彼は疲れているようだった。茶髪の少し長めの髪がクシャっとなっている。
「颯太…」
「ん?」
お好み焼きを切り分けながら、彼が都姫を見た。
「何か、悩みでもあるの?ムンクの叫びみたくなってるよ。」
「え、そんなヒドい?俺」
都姫が真剣に頷くので、彼は吹き出した。都姫は頬を膨らませた。
「なによ、心配してあげてるのに。」
「ごめんごめん。まあ、悩みが無いって言ったら、ウソになるからね。あるよ。」
彼は正直に言った。あら、と都姫が少しだけ眼を丸くした。
「いつも幸せそうなあなたでも、悩みがあるのね。」
都姫はお好み焼きを一切れ皿にのせ、もぐもぐ食べ始めた。彼が苦笑した。
「悩みの種に言われたくないなあ。」
彼の言葉は冗談の色を帯びていた。けれど、ちょうどカシスの炭酸割チューハイを飲んでいた都姫は、眉をしかめた。
「私が、あなたの悩みの種なの?私、何か悪いことしたかな…」
本気で心配している様子の都姫を見て、彼は首を振った。
「何も。ただ…」
「…ただ?」
しばらく沈黙が流れた。ジュージューという音とざわめきが流れている。煙が換気扇に吸い込まれる。
「何でもない。」
彼はそう言って、お好み焼きを食べ始めた。




