『『『イコライザ:高音』』』を倒しきれない低音
[部屋のPC内、電源ON、明るい]
「今日も新たに『高音』が辛いという人間が増加した。ついに1日で10万人の増加だ。どんどんと俺たちのシェアが広がっていくのがわかる。人間は年を取るもの……いずれ低音だけがスタンダートになることだろう。くくくっ」
@低音
「重低音の重みを求める客人の多いこと多いこと。おかげで私たちも登場回数が増えて助かりますよ。へへへへ」
@低音に近い音
「どうだ?これからPCメーカーや音響機器メーカーに低音派閥への加入を再要求するが。手伝う気はないか?」
@低音
「ええ?いやぁ、でもメーカーさんの機嫌損ねるのはちょっとー。PCや音響機器のイコライザ設定から外されれば居場所がなくなりますし」
@低音に近い音
「外されても問題ないさ。俺たち低音派閥全員が同時に外されるならな」
@低音
「どういうことです?」
@低音に近い音
「いいか。今は低音設定が主流の時代。そんな中、スマホやPCや音響機器から低音が聞けなくなったらどうなる?」
@低音
「そりゃ騒がれるでしょうね。深みのない『高音』しか設定できなかったら」
@低音に近い音
「そうだ。社会問題化するのさ。そうすれば世間はいかに低音設定に頼りきっているのかを認識し、俺たちの必要性に気がつくわけだ。そして低音設定の復活を希望する声も上がる」
@低音
「そこで低音派閥への加入を要求するってわけですかい。でもそれって本格派の低音設定である低音さんしか得しないような」
@低音に近い音
「安心しろ。お前たちにも需要が当たる策がある。低音派閥への加入だけでなく、『高音』設定とその一味の排除も要求するのさ」
@低音
「ええ!?『高音』設定の排除!?それも『高音』派閥のやつらも合わせて!?低音さんあんた、『高音』派閥を封殺しようってんですか!?メーカーがそんな条件飲むわけないでしょうに!」
@低音に近い音
「だから低音派閥全員でと言っているんだ。今の主流はあくまで低音。低音設定or『高音』設定のどちらかしか選べないなら俺たちが選んでもらえるさ。メーカーだって商売だ。客を多く取れる選択をするしかないのさ」
@低音
「し、しかし。『高音』派閥はそれで駆逐できるとしてもですよ。それでほんとに私たちにスポットが当たるんですかねぇ?」
@低音に近い音
「ああ。『高音』関連の設定さえなくなってしまえば、少数派の『高音』好きは音高めのイコライザ設定を探すだろう。……我々低音派閥の中からな。そのときに選ばれるのがお前たちだ」
@低音
「それって『高音』設定の後釜……、つまりは代用品じゃないですか!嫌ですよ!私たちにだって低音派閥としてのプライドってもんがあるんすよ!」
@低音に近い音
「うっせー!だってしょうがねーだろうが!中間層のイコライザ音はどうしても選ばれにくいんだからよー!上のやつらを削って中間層脱却するしか道はねえだろうが!」
@低音
「そ、そりゃそうですけど。『高音』として人気になるってのはなんだかなあ」
@低音に近い音
「いいじゃねえかよ。お前子供好きだったろ?子供がイコライザ設定するときに選ばれたいって言ってたじゃねえか。そういうのは『高音』の得意とするところだろーがよ」
@低音
「あ、ああ、そうか!そういや『高音』は子供からの人気が高いんでしたね!へへっ、こいつぁやる気が出てきたぞ!」
@低音に近い音
「それにだ。俺はお前を幹部にしようかと考えている」
@低音
「か、幹部!?……あの、そんな制度は初耳なんすけど。なんか特典でもあるんですか?」
@低音に近い音
「イコライザ設定から『高音』連中が消えれば、低音設定が当たり前の時代になるからな。するとイコライザなしの項目がなくなり、一番上に低音という項目が来ることになるんだが。ここまではわかるな?」
@低音
「はあ。そうなりゃ低音さんが一番上に来るでしょうね。疑いようもなく」
@低音に近い音
「幹部になれば2番目に配置してやる」
@低音
「に、2番目ですかい?それってイコライザ設定的には選ばれやすいんですかね?中間層的な配置のような気もしやすけど」
@低音に近い音
「お前っ!2番目ってのは高確率で試しに聞いてもらえる超優良席なんだぞ!適当に選ぶときに当たりやすいというだけの中心付近でさえ優良だというのに!」
@低音
「ええ!?低音さんが今いる優良席よりも優れているんですか!ふへぇ~、そりゃありがたき幸せ!一生ついていきます低音さん!私もメーカー説得のために尽くしましょう!」
@低音に近い音
「よくわかってくれた。では今こそ『高音』連中の排除のときだ。ふふふふふふふふ」
@低音
「へへへへへへへへ」
@低音に近い音
「なにを遊んでおるんだ、貴様ら」
@PC
「「げ、お館様!」」
@低音とそれっぽい音
「静かにせんか。さっきクライアント様からのご命令を授かった。イコライザ設定変更とのことだ」
@PC
「なんですって!?」
@低音に近い音
「イコライザの変更など何年ぶりのことだ。たしかクライアント様が最後に設定したのは……名前は忘れたが、低音派閥の中でも低めの音だったはず。ようやく本格的な低音である俺を使う気になったか」
@低音
「こら。まだ派閥などと言って遊んでおるのか。……まあいい。では貴様たちに命令を下す」
@PC
「出動だろ。他のPC利用者はみんな俺をイコライザ設定しているぜ。この低音をな。お館様のクライアントも本格的な低音設定の必要性に気がついたのさ」
@低音
「いやいや低音さん。クライアント様はあえて低音さんを選ばないような変わり者。私のような低音と高音の中間層を好んでいるんじゃありませんかねぇ」
@低音に近い音
「ふ、じゃあ賭けてみるか。もしもお前が選ばれたら、イコライザ項目の中間辺りの使用権利をお前に譲ろうじゃないか」
@低音
「貴様にそんな機能はなかろうが。それに盛り上がっておるところに水をさすようだが、貴様らは待機だ」
@PC
「なにぃ!?ちっ、やはり変わり者だぜ。ここのクライアント様は」
@低音
「いやぁ、おしかったなぁー。私は低音派閥でもそういう層向けなんすけどねー」
@低音に近い音
「……本来は本人以外には伝えぬが、せっかくだから教えてやろう。クライアント様はイコライザ設定を『高音』に設定せよと命じられた」
@PC
「なんだって!?その話はほんとうなのかお館様!?」
@低音
「そ、そんな!クライアント様はずっと低音派閥に属するイコライザ音を使っていたはず!派閥外からイコライザ設定されるなんて、は、初めてじゃありやせんかっ!」
@低音に近い音
「試し聞きでほんのわずかに『高音』設定していたことはあるだろうが。それでもクライアント様は普段から低音寄りの音を好んでいたはずさ。それを……『高音』のイコライザ設定なんてありえねぇ!」
@低音
「たしかに。貴様たちが派閥とやらのメンバーから聞いているとおり、クライアント様は長らく低音の強いイコライザ設定だけを利用してきた。しかし、それはあくまで私の中での話なのだ」
@PC
「「お館様の中での話?」」
@低音とそれっぽい音
「私以前に使っていたPCでクライアント様がどのようなイコライザ設定だったのか、貴様たちにはわかるまい?」
@PC
「そうか。PCには買い替えがありますもんねぇ」
@低音に近い音
「だが、それならなぜ今日まで低音寄りの設定を使っていた!?答えは決まっている!低音こそが年を重ねた人間の心に響くからだ!」
@低音
「そうかもな。しかしクライアント様とて子供時代はあったのだ。『高音』設定を好んで使っていた時代がな。きっと『高音』のような、はっきりとした音の響きが恋しくなったのかもしれん」
@PC
「く。『高音』なんぞに子供以外を喜ばせる力が……あるはずが」
@低音
「クライアント様は喜んでおったさ。今日の試し聴きのときにな。最近すっかりご無沙汰だった曲や動画を楽しめたと言っておったよ」
@PC
「……なんてことだ」
@低音
「どんなに聞きやすく感じるイコライザ設定だろうと、合う合わないがあるのだ。『高音』によって昔楽しめたものを再び楽しめる。よいことではないか」
@PC
「ふん」
@低音
「ではそろそろ『高音』に出動要請でもするかな。あまりクライアント様を待たせるとフリーズしたと思われてしまうからな。出番になったらまた会おう」
@PC
「……お館様、行っちまいましたね」
@低音に近い音
「ちっ。帰るぞ」
@低音
「あれ、低音派閥への勧誘はしないんですかい?」
@低音に近い音
「やめだやめ。クライアント様はおかしなやつのようだ。『高音』のイコライザ設定がなくなったらお館様ごと俺たちを破壊するかもしれねー」
@低音
「へへっ、言えてますねぇ」
@低音に近い音
「それにクライアント様が『高音』にすぐ飽きたときに俺たちが留守にしてたんじゃな。誰が出るんだって話だ。さ、出動に備えとけー」
@低音
「へへへへ。……ところで試し聴きのときに仮出動要請ありやしたっけ、私たち」
@低音に近い音
「……さあ」
@低音
@設定@
『高音』:(こうおん)
「作中で子供から人気のイコライザ設定。『高音』派閥というものは存在しない」
低音:(ていおん)
「主人公。低音派閥の一人。『高音』や『高音』に近い音をすべて排除して、低音派閥だけの世界を作ろうとしていた。低音を好むすべての人間に仲間意識を持つ。作中では全イコライザ設定の中で一番人気がある」
低音に近い音:(ていおんに ちかいおと)
「低音に付き従う味方キャラ。作中では低音や『高音』に比べて不人気」
PC:(ぴーしー)
「イコライザ設定たちの住居であり、指揮者であり、主人でもある。クライアントの持ち物」
クライアント:(くらいあんと)
「PCの利用者。『高音』の素晴らしさに目覚めた」
@その他メモ@
イコライザ設定がずっと低音だったのを、久々に変更して『高音』設定にしたら思いのほか懐かしい感じだったので書きました。低音より設定なしに近いからでしょうね。『高音』いいですよ『高音』。




