冒険54km
泥人形との戦闘の中、何となくだが敵の行動パターンや特徴が読めるようになってきた。
どうやら此奴、顔以外には明確な前後という概念が存在しないようだ。
現に俺が泥人形の後ろ側に回っても問題なく腕を振り回し攻撃してくる。
巨大で鈍足の相手をする時に有用な背中取りが有効でないのが少々面倒である。
しかし側面に対する攻撃は得意でないようなので比較的安全に攻撃できる。
但しこれも攻撃を避けるのには有効だが核を攻撃するとなると単純に核までの距離(場所はまだ分かっていない)が遠くなるためどうしても泥人形の前面に出ないといけない。
肝心の行動パターンは割と単純で、敵が正面にいるときは両腕による叩きつけや、振り回し、ワンツーパンチなどを行ってくる。
しかも身体が泥で出来ているせいか腕を伸ばしてリーチを稼いでくる。
側面にいる場合はこちらを向こうと身体を回してくるが、追いつかないと判断すると腕を大きく後ろに投げ出した後大きく円を描くように振り回してくる。
範囲はだいたい泥人形が山頂の中心にいた時9割近くをカバーできるほどだ。
すべての攻撃は出が遅いのでモーションを見たら全力で山頂の端まで走って逃げるか向かってくる腕をよく見て下を潜ったり飛び越えたりしなければならない。
俺としては飛び越えたり潜ったりした方が反撃のチャンスが多くていいと思う。
長々と語ったが、これだけの事が分かるほど長く戦っているのだ。
泥人形のありとあらゆる場所に矢を突き立てたのだが一向に弱点に当たることはなく、HPも減らない。
いや、当たった瞬間はダメージをあたえているようなのだが回復でもしているのかあるいはHPが無茶苦茶多いのか倒れる気配は全くない。
そろそろ矢も切れそうなのだがさっさと沈んでくれませんかね?
ゴゥ!
頭部を正確に狙ってきた左腕のなぎ払い攻撃をしゃがんでやり過ごす。
腕を鞭のようにしならせた大振りの攻撃は確かに強力だが、攻撃後の隙が大きい為一旦避けてしまえば反撃は容易い。
まぁ、ダメージがあるかは別としてな。
「ダ!ラ!ダ!ラ!」
矢が少なくなってきたので魔法で一部代用する。
俺の作ったマシンガン系は詠唱時間が非常に短いおかげで咄嗟の事態に対応しやすいため威力が低くてもつい使ってしまう。
ダメージは全く期待していないのだが万が一にも魔法が無効化されるようなら最悪逃走も考えておかないといけない。
俺の放った魔法は特に無効化されることもなく泥人形の左肩あたりに命中し効果を発揮する。
命中した左肩には小さいながらも穴が2箇所空いている。
ダメージは殆ど受けたように見えないが一応「ウィンドマシンガン」で泥人形の身体に効果があったことがわかった。
更に穴の開いた付近の泥が溶けだしている。
しかも穴の治りが今までものよりも確実に遅くなっている。
成る程、こいつはある程度以上水分を含むと自身を構成している泥を制御できなくなるのか。
その証拠に魔法の発現時間が終わると穴は一瞬で塞がってしまう。
ならば使う魔法は一つだけだろう。
比較的出の早いワンツーパンチを紙一重で避けつつ魔法名を叫ぶ。
「雨よ降れ!」
翡翠色の魔力が空へと伸びていくと晴れていた空が見る間に厚い雲に覆われ、ポツリポツリと雨が降り出す。
すぐに本降りとなった雨は容赦なく泥人形に降り注ぐ。
多量の水を含んだ泥は次第に地面へと流れ落ちて行く。
作戦は成功のようだ。
後は露出するであろう核を射抜いて終わりと言いたいところなのだが、溶けきる前に俺を倒すつもりなのか泥人形の攻撃が激しさを増す。
攻撃パターン自体は変わっていないので少々素早くなった攻撃を捌いていく。
足元が泥人形から流れ出てくる泥のせいでぬかるんできた。
これは注意しないと足を滑らせそうだ。
おっと、左腕のなぎ払い攻撃か。
地面を擦るかのような低さで放たれるなぎ払い攻撃をジャンプで避けようとした時だった。
いきなり足を何者かに掴まれた。
慌てて足元を見るとそこには泥で出来た手が足首の辺りを掴んでいた。
「マッドハンドかよ!」
慌ててクリスでマッドハンドらしき敵に攻撃しようとするが、迫ってきた左腕に掴まれてしまう。
「おい!こら!離せ!ッ!!」
抗議の声は握力が上がったせいで文字通り握りつぶされる。
あまりの握力にHPが徐々に削れていく。
こいつ、このまま握りつぶすつもりか?
最悪なことに両腕も一緒に握られているため攻撃したくても攻撃できない。
しかし泥人形はそのまま俺を握り潰すことはせず腕を大きく縦方向に一回転させると登ってきた方とは逆方向に投げ飛ばしやがった。
「どあああぁぁぁああぁぁあぁ」
まさかの投げに対応出来なかった俺は回転しながら飛距離を伸ばしていく。
取り敢えず叫んでいるだけではいずれ地面に落下して肉片となることは確実なのでそろそろ対策をしようと思う。
まずは手脚を動かして重心を動かし回転を止めることだな。
どっかの宇宙世紀に流行ってるAMBACみたいなものだな。
とは言ったもののやり方なんぞ知らないので適当に手脚を動かして回転が止まるのを祈るだけだが。
まぁ、〈跳躍〉の効果もあるし多分大丈夫だろう。
場合によっては回転していても問題は無いはずだし。
手脚を大きく振ったり小さく動かしながら空中で体勢を整えていく。
その間にも徐々にスピードが落ちて行きそれに伴い上昇率も落ちていく。
もうそろそろ落下が始まるので回転を止めたいところだ。
最終的に落下が始まってから何とか体勢を整えることができた。
さて、ここからが問題だ。
一つタイミングを間違えると地面のシミとなりまたアイテムをばら撒く羽目になるのだ。
今するべき事はスピードを落とす事と落下をどうにかすることだ。
残念な事にスピードを落とす方法に関しては良いアイディアを思い浮かばないので、死に戻らないように祈るしかない。
落下速度に関しては最近よく使ってる<アップドラフト>を利用する。
何度も使ってきた実績のある魔法だから何とかなるだろう。
さて、地面も近くなってきて悠長に考える時間が無くなってしまった。
まぁ、ぶっつけ本番はいつものことなので気にしない方向で行くか。
取り敢えず<アップドラフト>の上昇気流を上手く捉えるために身体を水平に調整する。
側から見ればまるでスカイダイビングをしているかのような風になった。
そんな楽しいものではないのだがな。
「<アップドラフト>」
上昇気流が身体に当たり落下速度を徐々に落としていく。
地面に落下する前に体勢を地面に対し垂直に戻す。
さぁ、ランディングの時間だ。
理想としてはパラシュート降下の着地の様な形だが、空力ブレーキが無いから無理だろうけど。
後数m、3、2、1、ランディング!
1歩、2歩、3歩。
よしこれは成功か?
<アップドラフト>のおかげで着地時の衝撃は殆ど無かったが、いかんせんスピードがまったく落ちてなかったのがダメだったようだ。
4歩目辺りからバランスが崩れ始めた。
5歩目、このまま転ぶのも顔面から倒れる可能性があるので自分から体を投げ出す。
6歩目?投げ出した体は勢い良く地面を転がる。
最終的に結構な距離を転がって止まったが、取り合えず無事に着地できたようだ。
まぁ、HPの9割がたを吹き飛ばしてしまったがな。
ああ、全身が痛い。
ちょうど良いやこの前作った傷薬でも使うかな。
そのすぐ後、森の中に絶叫が響き渡ったが、それを聞いたのは一部のMOBだけだった。
今回<跳躍>スキルで落下中の姿勢制御にボーナスが入ると記載していますが、それに関しては銀狐さんがそう解釈しているだけで実際には効果はありません。
ネーム〈銀狐〉Lv.13
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.16〉〈労働者 Lv.7〉
ステータス
HP :5/80
MP :10/74
SP :60/60
STR:18
SIZ:12
DEX:42
VIT:5
INT:13
AGI:26
MND:13
LUK:10
LP :0
スキル
〈弓術初級 Lv.3〉〈鷹の目 Lv.11〉〈木工 Lv.4〉〈簡易調理Lv.6〉〈視野探索 Lv.10〉〈隠密行動初級 Lv.1〉〈暗殺見習い Lv.19〉〈簡易マッピング Lv.7〉〈跳躍 Lv.9〉〈嵐属性初級 Lv.3〉〈回避 Lv.5〉〈調薬見習い Lv.1〉
武器
メイン:〈ノーマーディッシュ・ボウゲン>
├クリバー:〈イェイガー・カルヒャー〉
└アロー:〈石の矢×0〉〈黒熊の矢×1〉〈緻密な石の矢 ×5〉
〈緻密な石の矢(劣化2) ×0〉
サブ1:〈ツインクロスボウ Mk-Ⅱ〉
├クリバー:〈ボルトストッカー〉
└ボルト:〈鉄のボルト×28〉<石のボルト×50>
サブ2:〈クリス・オブ・ホーク〉
サブ3:〈鉄のダガー〉
その他:〈初心者のナイフ〉〈木の銛〉
防具
頭:〈皮の帽子〉
体:〈イェイガー・レーダーブルストン〉
腕:〈イェイガー・レーダーアルムシュッツ〉
手:〈鹿の騎射がけ〉
足:〈イェイガー・レーダーホーゼ〉
靴:〈イェイガー・レーダーシュティーフェル〉
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈石の斧〉 〈鉄の鋸〉 〈鉄のつるはし〉 〈鉄の鑿〉 〈鉄の斧〉 〈粗悪な松明 ×3〉〈初心者の調薬セット〉〈初級グリーンポーション ×2〉〈初級ブルーポーション〉




