冒険51km
なぜ登るか?
そこに山があるから。
って有名な台詞があるけど、あれって間違いで。
なぜ、あなたはエベレストに登りたいのか?
そこにエベレストがあるから
ってのが正解らしい。
私は知りませんでした。
というわけで登山回です。
岩山の周辺を見て周ってみだが楽に登れそうな山道の様な物は見当たらなかった。
ならば仕方がない。
本当は<クライミング>のスキルを手に入れてから挑みたかったのだが俺の好奇心がそれを許してくれそうにない。
スキルスロットが次に手に入ったら絶対に<クライミング>を手に入れようと考る。
そんな事は置いておいて今は此れからのクライミングの事の方が重要である。
それでは今から岩山の崖を登っていくのだが岩山の形状がなんというか階段ピラミッドの様な形状になっており、崖の数は12個、一つ一つの高さが10m〜20m程もある。
なんというか近くで見ると物凄い人工物に見え、まるで登って下さいと言っているようにも見え何かの罠ではないかとも思えてきてしまう。
だが、そんなものは関係ない!
そこに山があり、謎がある。
男なら登るしかないでしょ!
と言うわけで高さ約10mの崖に向かうのだが、ちょっとSPが持つか不安なところがある。
なのでちょっとだけ魔法の力を借りようと思う。
使う魔法は<アップドラフト>だ。
上昇気流を発生させる魔法なので、クライム時に使って下から持ち上げてもらう寸法だ。
上手く行けばSPの節約が出来るだろう。
後はやってみるだけだ。
俺は崖から少し離れた場所から助走を付け飛び上がる。
此れで大体2m近く稼げたと思う。
更に<アップドラフト>を使用。
跳躍し、最高到達点を少し過ぎた後<アップドラフト>が発動し上昇気流が俺を持ち上げる。
流石に吹き飛ばす程の風力は無かったが魔法によって生み出された上昇気流は確かに俺を持ち上げて更にもう2m高い地点に到着させた。
殆どSPを消費せずに4m登ることに成功した。
残りは6mでSPはまだまだ満タン近くある。
これならSPが0になる前に登り切れるだろう。
レストを利用してもジワジワとSPが減っていくのが怖いのだが普通なら自身のスタミナなど視覚的に見る事は出来ないのでその分通常よりも楽だと自身に言い聞かせる。
その後は特にモンスターに襲われることもグラウンドフォールも無く無事に1段目の崖を踏破する事に成功した。
何と無く前に崖を登った時よりもSPの減りが早かった気がするが気のせいだろう。
取り敢えず今は次の崖を登るためにSPを回復させるのが先だ。
取り敢えず暇つぶしに周りの探索でもする事にする。
登ってきた崖と次の崖の間には幅5m程の空間があった。
しかも平らではなく緩やかな坂になっており、気付かないうちに進む方向を登ってきた崖側に向けようとしている。
気付いたら崖から踏み外して10mの崖を真っ逆さまとならないように注意しなくては。
採取ポイントは疎らに生えたいる低木や何もない地面にポツポツとあるだけで、他には下から続いていると見られる山頂へと続く巨大な足跡だけだ。
他の手がかりが無いので巨大な何か以外にこの山には何もいないのかと思ってしまいそうだ。
採取ポイントで採れる物の大半は森で採れる物と同じような物ばっかりだったが、一部他とは異なる物も手に入った。
<ヤロー>
重量1、品質D+、レア度1
キク科の多年草。古くからハーブとして使われ、若葉には軽やかな風味が、大きくなると胡椒のような風味が特徴。別名「兵士の傷薬」
<ダンデライオン>
重量1、品質D+、レア度1
キク科の多年草。古くから食用に供されているが、薬や染料としても使われる。
<コモンバターバー>
重量1、品質D+、レア度1
キク科の多年草。古くから薬として使われてきた。気温の高い夏場等はこの植物の葉でバターを包んでいた。
説明ではすごく難しく書かれているが言ってしまえば<ヤロー>は「セイヨウノコギリソウ」と呼ばれる雑草で、<ダンデライオン>は知ってのとおり「セイヨウタンポポ」と呼ばれる雑草で、<コモンバターバー>も「セイヨウフキ」と呼ばれる雑草だ。
それにしても<ヤロー>は「兵士の傷薬」という名前からして確実に回復薬の材料になりそうだし、<ダンデライオン>は珈琲の代用品になるし、蕗の薹はてんぷらにすると美味い。
つまり沢山欲しいのだ。
特に<ヤロー>は<調薬>の実験に、<ダンデライオン>は俺の好きな珈琲の代用品なのでかなりの数が欲しい。
取り合えずSPが全回復するまでは草取りを続けることにしよう。
ああ、珈琲が飲みたくなってきた。
SPが全回復するまでそこら中の採取ポイントを漁っていたおかげで、<ヤロー>も<ダンデライオン>も十分な数をそろえることが出来た。
まぁ、なくなってもまたここに取りに来ればいいしね。
さて、SPが全回復したので次の崖に挑みますかね。
そんな感じで、崖を登ったら休憩がてら探索をし、SPが全回復するまで草取りという行為を3回ほど繰り返した時だった。
「ピャーッ!!」
その鳴き声が聞こえてきたのは高さ15mはある5段目の崖の中ほどまで来たときだった。
良く響く甲高い鳴き声は鷲や鷹が発していた鳴き声に近いものだと気がついた俺は、すぐさま周りを見渡し敵を探した。
向こうは空を自由に飛び、こちらは崖に何とかつかまっている状態であり、どちらが有利など火を見るよりも明らかである。
それならばこちらが先に敵を発見して、見つからないように戦いやすいがけの上まで登ってしまえばいいのである。
そうしたらこんな手も足も出ないような場所よりも確実に勝つ確率が上がるだろう。
そんなわけで、がんばって索敵を続けていると左上方に黒い点が動いているのが見えた。
黒い点をズームして正体を確かめる。
褐色の体に白っぽい頭、体長は60cm程で翼開長は150cm以上。
大きさからいって鷲ではなく鷹だと思われる。
鷹と思われる敵は岩山の山頂の上空を旋回しているだけなのでまだ此方に気が付いていないと見える。
ならば今のうちにさっさと崖を登ってしまおう。
索敵の為に止まっていたから今までのリズムが崩れ余計なSPを消費してしまっているのだ。
どんなスポーツでもそうだが自分のリズムを外してしまった時が一番大変なのだ。
また、自分のリズムを取り戻すように登り始めた俺の耳に甲高い鳴き声が突き刺さる。
「ピーヒョロヒョロヒョロー」
なんともまぁ間延びした鳴き声だ。
よく聞くこの特徴的な鳴き声の主は鳶で間違い無いだろう。
成る程、あの上空で旋回している行動などは確かに鳶の物だ。
そしてあの行動は獲物を探している時であるし、そんな鳶はかなり眼が良い猛禽類だ。
あれ?これって不味くない?
一応<隠密行動見習い>のお陰で目立ちにくいとはいえ周りは隠れる場所のない崖のど真ん中で、動きにくいからと<迷彩ネット>も付けていない、そして相手は眼が良い狩人である。
あ、これ確実に見つかったわ。
これはもう一目散に崖を登って体勢を立て直さないとマズイかもわからんね。
「ピーヒョロヒョロヒョロ!」
ああもう、鳶の鳴き声が気になって集中できん。
ちらりと上を見ると黒い点は俺の真上あたりを旋廻しているように見える。
本当に時間が無いのかもしれない。
だが、あせりは禁物だ。
あせってつかみ損ねたり踏み外せば約10m下にまっさかさまだ。
慎重にしかし大胆に動かないと今度は鳶に落とされることになるだろう。
なんでこんなに力が抜けるような鳴き声に恐怖しなければいけないのだろうか。
「ピーヒョロヒョロヒョロ」
鳴き声が気持ち大きくなった気がした。
嫌な予感がする。
心なしか風切音も聞こえてきた気がする。
もう一度だけチラリと上を見ると、黒い点が急激に大きくなっているのが見えた。
しまった!気付かれてた!
崖に掴まっている今は満足に動けない為避けることはできない。
勿論両手を離す弓も使えない。
唯一の攻撃と防御の手段は魔法だけ。
「<アップドラフト>!!」
咄嗟に使った魔法は上昇気流を発生させる<アップドラフト>。
咄嗟の事で何故この魔法を選んだのか俺でも分からないが詠唱に入ってしまった為キャンセルは効かない。
詠唱中は動けない為SPをかなり消費してしまうがこの際仕方がないと割り切ろう。
それよりも、もうズームしなくても羽が何か分かるほどに近づかれてしまった。
おい、これって間に合うのか!?
眼前には羽を畳み此方に突っ込んでくる鳶が映る。
もう目と鼻の先と言っていいほどの距離だ。
いきなり羽を広げると体勢を整え鋭い爪の付いた脚を此方に伸ばしてくるのがスローモーションで見える。
ヤバい、このままでは絶対に避けられない。
そう思った瞬間、詠唱が完了し動けるようになった俺は力一杯崖を蹴り身体を空中に投げ出す。
上空から迫る鋭い爪をギリギリで回避すると魔法が発動し俺を上へと持ち上げる。
MPを全てつぎ込んだ<アップドラフト>は俺と鳶を軽々と吹き飛ばした。
予想外の威力でバランスを崩しかけるも何とか持ち堪え崖の上へと投げ出される俺とは対照的に、強烈な上昇気流を不意打ち気味に喰らった鳶は体勢を崩し崖へと激突する。
<アップドラフト>によって投げ出された俺は地面を転がりHPを減らしながらも何とか無事に辿り着く事に成功した。
すぐに鳶を探すと上昇気流で飛ばされた鳶は力なく遥か頭上にいるのを発見した。
風に吹かれた鳶は魔法の効果が切れるとふらふらと落下してきて何とかギリギリ俺のいる崖の上へ落ちてきた。
未知の獲物だ、その素材が剥ぎ取れないのはかなり勿体無い。
なのでこの幸運はかなり有難いことだ。
さて、そんな御託はいいのだ。
早速剥ぎ取りましょうか。
<西方鳶の羽根>
重量1、レア度3、品質D
西方鳶の羽根。大きく固めな羽根は装飾品に向く。5枚一纏めで取れる。
<西方鳶の爪>
重量1、レア度3、品質D
西方鳶の爪。小さく鋭い爪は武器の突起に最適。
<西方鳶の嘴>
重量1、レア度3、品質D
西方鳶の嘴。特に用途の無い物だが、貴族には御守りや装飾品として高く売れる。
羽根や爪は良いとして嘴は使い道がないって何なんだよ。
いや、高く売れるから使い道がないわけではないのか。
でもあんまりだよ。
スミスの所には売れそうにないし雑貨屋あたりで売っぱらってしまうか。
さて、次は何時ものようにレベルアップしたものの確認だな。
さっきの戦いって別にこちらから攻撃したわけじゃないけど経験値は入ってるのね。
スキル<跳躍>のレベルが上がりました。
スキル<隠密行動見習い>のレベルが上がりました。新たな能力<微臭>を覚えました。スキルレベルが20になったので上位スキルに変化します。
スキル<跳躍>のレベルが上がりました。
スキル<嵐属性初級>のレベルが上がりました。
スキル<回避>のレベルが上がりました。
とうとう<隠密行動見習い>が上位スキルに変化するときがやってきたようだ。
これは喜ばしいことだ。
なにせ見つかりにくくなればそれだけ安全に崖を登れるしね。
それじゃあ先に新しい能力から確認しましょうか。
上位スキルは後からのお楽しみということで。
<微臭>:体臭を抑えることが出来る。体臭小量軽減。
なるほど、鼻の良い獲物用の能力か。
狼とかに有効なのかな?
それでは上位スキルの確認をしましょうか。
<隠密行動初級>:<隠密行動見習い>の上位スキル。身体捌き等の技術によって見つからないよう行動する。
能力<防音>:行動時や攻撃時に出る音や聞こえる距離を中量低下する。(自身には効果無効)
<穏形初級>:<隠密行動見習い>の発展系上位スキル。呪術や魔法等の技術を利用して姿をくらます。
魔法<擬態変化>:自身の色を周りの色に合わせる。消費MP10、詠唱時間1.5秒、クールタイム5秒、効果時間10分。
どうやら上位スキルは体術か忍術かの違いのようだ。
隠密を選べば特に何も消費せずに隠れることが出来、穏形ならば忍術によってMPを消費し限られた時間だけだが効果の高い擬態が出来ると。
ふむ、どちらも有用だが、俺的には<隠密行動初級>の方が合ってるな。
特に何も消費しないのがいい。
よ~し、SPとMPが回復するまで周りの探索でもやっておこうかな。
新しい素材が見つかるといいな。
今回手に入れた<西方鳶の嘴>ですがレアアイテムです。
このゲームでは特に利用法の無いアイテムがレアに属することが多いです。
ただし素材アイテムだけ。
ネーム〈銀狐〉Lv.12
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.15〉〈労働者 Lv.7〉
ステータス
HP :80/80
MP :74/74
SP :60/60
STR:18
SIZ:12
DEX:40
VIT:5
INT:13
AGI:25
MND:13
LUK:10
LP :0
スキル
〈弓術初級 Lv.1〉〈鷹の目 Lv.9〉〈木工 Lv.4〉〈簡易調理Lv.6〉〈視野探索 Lv.8〉〈隠密行動初級〉〈暗殺見習い Lv.18〉〈簡易マッピング Lv.7〉〈跳躍 Lv.9〉<嵐属性初級 Lv.2><回避 Lv.3><調薬見習い Lv.1>
武器
メイン:〈ノーマーディッシュ・ボウゲン>
├クリバー:〈イェイガー・カルヒャー〉
└アロー:〈石の矢×20〉〈黒熊の矢×1〉〈緻密な石の矢 ×12〉
〈緻密な石の矢(劣化2) ×26〉
サブ1:〈ツインクロスボウ Mk-Ⅱ〉
├クリバー:〈ボルトストッカー〉
└ボルト:〈鉄のボルト×28〉<石のボルト×50>
サブ2:〈クリス・オブ・ホーク〉
サブ3:〈鉄のダガー〉
その他:〈初心者のナイフ〉〈木の銛〉
防具
頭:〈皮の帽子〉
体:〈イェイガー・レーダーブルストン〉
腕:〈イェイガー・レーダーアルムシュッツ〉
手:〈鹿の騎射がけ〉
足:〈イェイガー・レーダーホーゼ〉
靴:〈イェイガー・レーダーシュティーフェル〉
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈石の斧〉 〈鉄の鋸〉 〈鉄のつるはし〉 〈鉄の鑿〉 〈鉄の斧〉 〈粗悪な松明 ×3〉〈初心者の調薬セット〉〈初級グリーンポーション ×2〉〈初級ブルーポーション〉<ニガヨモギの傷薬(1/10)>




