冒険43km
はい、新章「パリィ防衛線」の始まりです。
まぁ、前章とやることはあまり変わりませんが。
<自動製作 Lv.1>で<精密な石の矢(劣化2)>を作りながら手作業で<石のボルト>を同時作成する。
そして、SPが切れると鏃を2種類作りながらSPの回復を待つ。
そんな感じで矢の生産を続けていると、ちょうど<石のボルト>を20本作り終えた所で木工のレベルが上がった。
スキル<木工>のレベルが上がりました。新しい能力<精密木工>を覚えました。
なんだか似た様な能力を昔手に入れたことがあった気がするが、気のせいだっただろうか?
取り合えず確認してみよう。
<精密木工>:木工時にDEX+5%、更に2倍のズームが可能。<細密木工>と効果が重複する。
どうやら<細密木工>の上位の能力のようだ。
その割りに<細密木工>を上書きせずに効果が重複するなんて珍しい処理の仕方だな。
なんでこんな仕様にしたんだろうか。
まぁ、気にすることは無いか。
そんなこんなで、時間になるまで矢とボルト作りを続けていく。
目標数の<石のボルト>を50本作り終わると<木工>のスキルは1上がっていた。
経験値が高いと思われる<緻密な石の矢>も25本完成している所を見ると、<自動製作 Lv.1>では経験値が入らないもしくは入ってもかなり少なくなっているのではないかと思う。
まぁ、使い分ければいいだけだからあまり気にするところではないな。
<自動製作 Lv.1>なんて他の作業をやっている間に使うものだろうから経験値なんか気にする必要はなさそうだ。
さて、作ったものや道具を片付けたりと忙しく撤退の準備をしていると、スミスからVCが入った。
「こんばんは。私たちの方の準備は出来ていますけど、そちらはどうでしょうか?」
どうやら向こうの準備は万端のようだ。
まぁ当たり前か、でなければVCをするわけないよな。
「こっちの準備も出来てるぞ。どこに行けばいい?」
「それならいつもの中央広場に集合でどうでしょう。あそこなら私の店にも近いですし、道を覚えやすいでしょうから。」
「分かったそれでいい。」
「それでは中央広場で待っていますよ。」
それじゃあ、中央広場に向かいますか。
中央広場を目指して歩いているのだが、パリィの村の発展がかなり進んでいることがわかる。
数日前まで何も無かった広場にいつの間にか木造の家が建っていたり、今まで木造1階建てだった建物が2階建てや石造りになっていたりと変化がめまぐるしい。
主要な道が変化しないのが救いだ。
これで道まで変化してしまったら簡単に迷う自信がある。
まぁ裏路地はかなり変化していってるみたいだが。
これも生産系プレイヤーのがんばりのおかげなのかな?
発展することは良い事のはずですし。
そんな感じで変わりゆく村を観察しながら目的の場所に向かう。
中央広場にもプレイヤーが多く集まっているのが分かる。
これだけ沢山いるとスミスを見つけるのも苦労しそうだ。
取り合えずVCで場所を確認することにしよう。
「スミス、着いたぞ。どの辺りにいるんだ?」
「私は中央の噴水の西側に設置してあるベンチに腰掛けていますよ。」
噴水?そんなものあったっけ?
確か中央広場の中心には円形に石垣が設置してあったことは覚えているんだが、その中には水なんて無かったような。
しかもベンチなんて立派なもの設置されていた覚えは無いんだけどな。
残念なことに人ごみでその辺りはよく見ることが出来ない。
まあいい行ってみれば分かることだ。
「それじゃあ今からそこに向かうよ。」
「おまちしています。」
人を掻き分けながら目的の場所に向かう。
掻き分けながら進むと徐々に中央の様子が見えてくる。
確かに噴水というか池らしきものはあった。
水が噴出しているわけでもなく、石垣の中に水が溜められているだけのものだったが。
そして、ベンチも見つかった。
背もたれの無い簡単な作りのものだったが無いよりマシだろう。
さて、スミスは西側のベンチにいるんだったな。
西側って事は向こうだな。
「あ、銀狐さんこっちですよ」
先に俺の存在に気が付いたスミスがこちらを呼ぶ。
「そんなところにいたのか。見つけるのに苦労したぞ」
「そうですかね?一応この村での待ち合わせ場所といったらここらしいですよ」
確かに村のど真ん中にあるといえばあるが。
「人が多すぎて見つかるものも見つけられん。」
「そういわれるとそうですね。」
スミスは笑いながら答える。
まぁ、俺が使うわけでもないしどうでもいいか。
「そんな事よりも、お前の店に案内してくれるんだろ?」
「そうですね、では行きましょう。こっちです」
スミスはそう言うと、西側の大通りへと歩き出した。
ほぉ、大通りに面した場所を確保したのかと思っていたのだが、スミスは大通りに出てすぐ路地裏へと入る。
予想外の動きだったので、一瞬見失いかけたが何とか付いていくことが出来た。
路地裏は狭くて曲がりくねっているため、見通しが悪く離れすぎるとすぐにスミスを見失ってしまいそうである。
てか、案内するなら曲がる場所とか教えてくれても良いだろうに何で黙ってるんだこいつ。
スミスの対応に少々イラッとしつつも黙って付いていく。
その後も狭い路地裏を進み、何度か十字路や丁字路を曲がると、建物に囲まれた少し広めの広場に出た。
「はい、到着しました。お疲れ様です。」
スミスはこちらを振り返りながらとてもいい顔で言った。
ああ、疲れたさ。
お前が俺から逃げるような動きをするからな。
十字路や丁字路に差し掛かるたびに姿を晦まそうとしやがって。
「何度か引き離そうといろいろやってみたんですがね、流石私が見込んだだけのことはありますね。」
もう、我慢が出来なかった。
気が付いたら、スミスの顔面を全力で殴っていた。
スミスも油断していたのかクリーンヒットし倒れてしまった。
あ、これ不味いかも。
この手のゲームでは戦闘禁止エリアで戦闘した場合、様々なペナルティを受けるのが普通である。
例えば喧嘩両成敗のように強力なNPCにより倒されたり、牢屋に強制送還されたり、極めつけは|垢バン(アカウント削除)されたりするのである。
俺が運営の対応にビクビクしていると、メッセージが1件届いた。
分かっています運営からですね。
中身を見てみると、
「本日、22時13分にパリィ中央西区において軽度の違反を感知しました。ご注意ください。」
どうやら軽度なら一度目は直接的な対処はされないようだ。
俺がほっとしていると、気絶状態だったスミスがムクリと起き上がってきた。
「いきなり殴るなんて少し野蛮なんz、なんでもないです。はい、私が悪かったです。」
俺の顔を見たとたんスミスが意見を変えてきた。
うんそうだね、俺は少し怒ってるよ。
「た、試したのには訳があるんですよ。」
ほう、訳があると。
「こっちに来て下さい。」
スミスは広場に唯一入り口のある小さな1階建ての建物に向かっている。
まさかそれが店なのか?
前、仲間の工房も作るって言ってなかったか?
それにしては小さな建物だが。
「ふふふ、まぁ見ていてください。」
スミスのドヤ顔にまたイラッとするけど我慢我慢。
もう一度殴ってしまうと今度こそ警告ではすまない気がする。
スミスはそのまま建物の中に入る。
俺も続けて建物の中に入る。
うん、中も外見と同じで結構狭い。
あるのは武具の見本と小さなカウンターだけだった。
扉も無いのでこの建物にはこの部屋しかないのだろう。
「ここが私の城です。」
うれしそうにそう言う。
「そして、こっちが私たちの拠点です。」
そういうとカウンターの引き戸を開けた。
引き戸の中には穴が開いており、梯子が掛かっている。
なるほど、地下に工房があるのか。
「これを見せる人物に値するか確かめるためにテストをしたのですよ。」
なんか上から目線だが、まぁいいか。
では早速地下に入ってみることにする。
俺は躊躇無く飛び降りるのだった。
ネーム〈銀狐〉Lv.10
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.12〉〈労働者 Lv.6〉
ステータス
HP :78/78
MP :74/74
SP :20/46
STR:15
SIZ:10
DEX:30
VIT:7
INT:13
AGI:21
MND:13
LUK:10
LP :0
スキル
〈弓入門 Lv.17〉〈鷹の目 Lv.6〉〈木工 Lv.2〉〈簡易調理Lv.5〉〈視野探索 Lv.5〉〈隠密行動見習い Lv.14〉〈暗殺見習い Lv.13〉〈簡易マッピング Lv.5〉〈跳躍 Lv.6〉<嵐属性初級 Lv.1><回避 Lv.2><調薬見習い>
武器
メイン:〈ツインクロスボウ Mk-Ⅱ〉〈鉄のボルト×28〉<石のボルト×50>〈石の矢×50〉〈黒熊の矢×1〉〈緻密な石の矢 ×12〉<緻密な石の矢(劣化2) ×26>
サブ :〈初心者のナイフ〉〈木の銛〉
防具
頭:〈皮の帽子〉
体:〈初心者の革鎧〉
腕:〈初心者のレザーアームガード〉
手:〈鹿の騎射がけ〉
足:〈初心者のレザーグリーブ〉
靴:〈初心者の革靴〉
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈石の斧〉 〈鉄の鋸〉 〈鉄のつるはし〉 〈鉄の鑿〉 〈鉄の斧〉 〈粗悪な松明 ×3〉




