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Free World Frontier  作者: シバケン
北の森・簡易拠点
44/79

冒険34km

「やあ久しぶりですね。元気にしていましたか?」


 時間が迫っていたので俺は予定通りスミスの露天に来ていた。


「とは言っても3日ぶりになりますか?それにしては君の雰囲気が変わっていますね。何かあったのですか?」


 はぁ、こいつと話してると全てを見透かされてる気がしてならない。

 まぁ、察しが良いと考えればいいのか?


「ああ、初めて死に戻ったからな」


 俺がそう言うとスミスは意外そうな顔をした。


「へ〜そうだったんですね。まぁ、私が言ったのは物理的な変化ですよ。まるで26世紀からきた星系内生態系破壊用兵器にでも侵食された様な目の色になってますよ。」


 何を言っているんだこいつ?

 外見設定は課金アイテムを使わない限りプレイヤーの任意で変更することは出来ないって言うのに。

 更に俺は見た目を変えようなんて考えたこともなかったぞ。


「いや、そんなに何言ってるんだこいつ?みたいな顔しなくても良いじゃ無いですか。私が言いたかったのは君の目が琥珀色になってるってことですよ。」


 は?目の色が琥珀色?

 変えた覚えなんて全く無いんですが。


「はい鏡」


 スミスに渡された鏡は金属の表面を磨いただけのものだったが瞳の色を見ることに困ることはなかった。


「マジか、いつの間に」


 鏡の中に映った俺の瞳は確かに琥珀色に染まっていた。

 一体いつの間に。

 まぁ、何が起こるでも無いし気にすることは無いか。


「それで?今日はどんな用事かな?」


 爽やかな笑顔を浮かべながら訪ねてくる。


「さっき言った死に戻りの件についてだ」


 スミスは笑みを深める。


「詳しく話してもらえませんか?」







 俺はスミスに事のあらましを説明した。


「成る程、そのダンジョンらしい洞窟でスレイブゴブリンにやられて弓を落としたと。」


 うんうんと頷きながら俺の話を簡単に要約するスミス。

 なんだか内容の薄い話に感じるな。

 実際薄いんだろうけど。


「そう言うことだ。それで既存の武器の回収とそれまでの間で使える仮の武器がほしい。対価は洞窟までの地図と金でどうだ?」


 俺の提案にう〜んと考えるスミス。

 小声であーだこうだ言っているのを聞いてると提案に乗った時に生じるありとあらゆるメリットデメリットを想定しているのだろう。


「良いでしょう。その提案に乗らせていただきます。ただし、落とした弓に関しては諦めた方が良いと思います。」


 スミスの言葉に俺は顔を顰めた。

 何故ならこのゲームには原則としてアイテムの消滅と言う概念が無い。

 フィールドに置かれたアイテムは時間や気温の変化、風雨に晒されることにより劣化し破損したり腐敗したりする。

 しかし、そうなるのは一週間ぐらい掛かるらしいし、今回弓を落としたのは洞窟の中だ。

 野外とは違い風雨や気温の変化の少ない洞窟内なら一週間を超えてアイテムが残るはずなのだ。

 それだけの時間があれば弓の回収ぐらい出来そうなのだが。

 勿論俺は行かない。

 行ってもまた死に戻のが目に見えてるからだ。


「そんな顔なさらなくてもちゃんと理由は説明しますよ。」


 スミスがえらく芝居掛かった様子でもったいぶる。

 そんなのは良いから早く理由を言えよ。


「理由は簡単です。回収をするよりも新しい弓を買った方が早く安く簡単だからです。」


 良いですか?とスミスは人差し指をピンと立て片目を瞑って話を続ける。

 イケメンとはいえ男がやってもな〜。


「良いですか?死に戻りのでのドロップは通常のドロップと違い所有権がフリーの状態になります。この状態のアイテムを他のプレイヤーが拾うと所有権はその拾ったプレイヤーになるわけです。つまり、拾ったプレイヤーがそのアイテムを使おうが売ろうが壊そうが拾ったプレイヤーの自由となります。ここまでは良いですね?」


 俺は頷く。

 一応基本的で重要そうな事は頭に入れておいたから十分だ。


「それでは続けますね。さて、アイテムを拾ったプレイヤーに対して落としたプレイヤーがそのアイテムを返してほしいと要望を出したとします。この時アイテムを拾ったプレイヤーに返還の義務はありません。何故なら所有権が拾ったプレイヤー側にあるためです。ここで心の優しい人ならば無償で返してもらえるのでしょうが、残念ながらそう言ったプレイヤーは少数になってしまうでしょう。大半のプレイヤーは対価を求めてくるはずです。何せ戦利品なのですから。対価に求められるのはNPC売価よりも高い金額になるのは想像に難く無いでしょう。」


 スミスの言いたい事は分かる。

 確かに危険な思いをして入手したであろうアイテムを自分の物だから無償で返せと言われたら返す気も起こらないだろう。


「今回の弓とNPC売価は大体45000G〜50000Gくらい。そうなると交渉でいい顔をしてもらえるのは55000Gよりも上になるでしょう。この値段なら家であれば同等以上の弓を売って差し上げられます。どうですか?」


 確かにもっともな説明だが、一つだけ解せないこと後ある。


「NPC売価と買った時の値段がほぼ同じなんだが。」


 そう、スミスから買った時の弓の値段は5万G、NPC売価とほぼ同じだった。


「前も言いましたよね?先行投資だと。貴方とはいい関係を保ちたいですし。」


 スミスはふふふと微笑みながらこの程度なんとも無いと言った感じで言う。

 まぁ、彼の商売のスタイルでは売れれば利益が上がるので問題ない。


「話は戻りますが、アイテムを拾うのは何もプレイヤーだけでは無く実はそのアイテムを扱うことの出来るモンスターにも拾われてしまうことがあるのです。今回の場合だとスレイブゴブリンアーチャー辺りが当てはまりそうですね。そうなってしまうと交渉金額がまた上がってしまいます。ここは素直に新しい弓を買った方が良いと思いませんか?」


 むぅ、ここはスミスの言葉に従った方が良さそうだな。

 少しばかり無理にでも弓を買わせようとしている様にも思えなくも無いが。

 まぁ、ここはぽんと買ってしまおうか。

 お金ならまだあったはずだし。

 ついでに防具も買ってしまおうか。


「わかった。新しい弓と防具を見繕ってくれ。」


 俺の言葉にスミスの笑みが深くなる。

 やっぱりやめておいた方が良かったかな?


「はいわかりました。代金の方ですが弓の方は洞窟までの地図と交換と言うことで、鎧の方はお金でお支払いでよろしかったですか?」


 スミスの口から意外な言葉が飛び出た。

 弓と地図を交換だって?


「ええ、地図と交換です。実はこのゲームでは一部アイテムやオブジェクトに対してスクリーンショットを使えなくなっているのです。なんでも地図等は戦略価値が高い物であり、そんな物を写真で取れるわけが無いだろうとの事です。其の為スクリーンショットで撮って掲示板にアップと言う広め方が出来ないのです。しかし、模写等で増やすことは出来るのでそれを売る利益で弓の代金を相殺する感じですね。」


 でも、戦略的価値が高いのに模写出来るなんておかしいですよねとスミスが言う。

 でも広がらないと困ることもあるだろうし仕方が無いのではなかろうか。

 あまりにも素早く情報が拡散しない様に運営が知恵を絞ったのかもしれない。

 どちらかと言うとそんな真面目な要素よりもフレイバーに近いかもしれないが。


「そう言うわけで、弓は地図との交換、鎧は現金でのお支払いですね。引き渡しは明後日でどうでしょうか?よろしければそれまでの武器として此方をお使いください。」


 スミスはそう言ってクロスボウを取り出した。

 いや?クロスボウだよな?

 弓が二つに分かれてるし、しかも弓の反りが普通の弓の逆になっている。

 弦もなんだか複雑に絡み合っていてよくわからなくなっている。

 ストックは軽量化の為なのか肉抜きがされており、何処と無く現代臭のする見た目になっている。

 俺の頭の中にあるクロスボウとは似てもにつかない外見だ。


「これはクロスボウを使った特殊な武器の研究の為に作られたクロスボウで、スイスのツインボウと言うクロスボウがモチーフとなってます。」


 スミスはおもむろにストックの端を股に当てると、肉抜きされたストックの下を掴み前に押し出した。

 押し出されたストックはそのまま160度程開くとクロスボウの弓の部分がスライドし、弦がセットされる。

 そして、押し出したストックをまた元の位置まで戻すと弓が引き絞られた。


「見てもらった様に実物と同じコブラ式のコッキング方式になってます。今回はこのツインボウとボルトを50本付けますがどうされますか?」


「販売はしてないんですか!」


 うん、あれだ。

 これは買わなきゃ損だろ!見た目的な意味で。

 なんと言うかあれだな、予想外にダイナミックな動きをするし、かっこいい。

 それにクロスボウは弓よりも命中精度が良い。

 リロードが遅いのも、俺の不意打ちからの一撃必殺と言うプレイングスタイルでは問題なし。

 それならばこんなかっこいい物買わなければ損だ!


「そうですね〜。実験機と言うことで割引して、4万Gでどうでしょう?」


 なんか安くね?

 前の弓よりも安いってあり得ない気がするんだけど。

 まぁ、安く買えるなら良いか。


「OK、それでいい。」



<クロスボウ Mk-Ⅱ>


 重量2、レア度3、品質C


 ダメージボーナス20%、耐久度[緑]


 スミス製のクロスボウ。テコを利用したコッキングの為リロードが早いのが特徴。比較的モダンな外見をしている。



<鉄のボルト>


 重量1、レア度2、品質C


 飛距離-20%、ダメージボーナス30%、出血付与率上昇50%


 アイアンファントム製のボルト。鏃がブレードヘッドの為殺傷能力が上がっている。



 うん、やっぱりいい物を買ったな!

2014/09/26 <クロスボウ Mk-Ⅱ>の耐久値の表現を変更しました。


ネーム〈銀狐〉Lv.9

 種族 〈エルフ〉

 ジョブ〈弓使い Lv.11〉〈労働者 Lv.5〉

 ステータス

 HP :38(78)/38(78)

 MP :37(74)/37(74)

 SP :23(46)/23(46)

 STR:7(15)

 SIZ:5(10)

 DEX:15(30)

 VIT:3(7)

 INT:6(13)

 AGI:10(20)

 MND:6(13)

 LUK:4(8)

 LP :0

 スキル

〈弓入門 Lv.15〉〈鷹の目 Lv.1〉〈木工見習いLv.19〉〈簡易調理Lv.3〉〈水属性入門Lv.8〉〈風属性入門 Lv.3〉〈発見 Lv.18〉〈隠密行動見習い Lv.10〉〈暗殺見習い Lv.9〉〈簡易マッピング Lv.2〉〈跳躍〉

武器

 メイン:〈クロスボウ Mk-Ⅱ〉〈鉄のボルト×50〉〈石の矢×28〉〈黒熊の矢×1〉〈緻密な石の矢 ×12〉

 サブ :〈初心者のナイフ〉〈木の銛〉

 防具

 頭:〈皮の帽子〉

 体:〈初心者の革鎧〉

 腕:〈初心者のレザーアームガード〉

 手:〈鹿の騎射がけ〉

 足:〈初心者のレザーグリーブ〉

 靴:〈初心者の革靴〉

 装飾品

 無し

 その他

 〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈石の斧〉 〈鉄の鋸〉 〈鉄のつるはし〉 〈鉄の鑿〉 〈鉄の斧〉 〈粗悪な松明 ×3〉

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