冒険3km
銀狐が金策に走るようです。
今回は色々と詰め込みすぎたので少しだけ長いです。
夕飯を終えた俺は、早速FWFを始める。寝る時間までまだまだあるがやりたい事も沢山あるしさっさと作業を進めよう。
ログインするとそこは村の宿屋と行きたいところだったのだが、やむを負えぬ事情(まぁお金と宿屋に空きがなかっただけだが)があったため宿屋の裏手で目が覚めたことになっていた。
一応ログアウト中はプレイヤーの攻撃に対してのみ破壊不能のオブジェクトと同じ状態になるのでPKには安心なのだ。ただし、敵対MOBに関しては通常通りダメージが入るためセーフティーエリアである村の中でログアウトするのが一番いいが。
目が覚めた時点でまだ明るくて少し驚くが、このゲーム内の一日は現実世界の半分であることを思い出し、慣れるまで時間がかかるなと思いつつも納得する。この仕様は夜の間しかプレイできない人や、逆に朝しかプレイできない人が明るいうちに冒険できるようにとできたようである。
思考の速度を上げているのではなく、いわゆるゲーム内時間という奴だ。
「さてと、これからどうしようかな。」
とりあえず目下の目標は初心者装備の脱却なのだが、如何せんお金がかかり過ぎてまだまだ時間が掛かりそうである。次点としては寂しい懐のための金策やスキル、ジョブ、プレイヤー自信のレベリング、まだまだ経験の浅い狩の練習等々やる事が多すぎる。
「とりあえずは金策を行うべきかな。」
現在の所持金は300Gであり、残念なことにポーションを数個か、矢を1〜2本しか買えない金額である。まぁ、矢の方は木工スキルを利用してなるべくお金を掛けないようにと作るし、今のところポーションも使ってないのでまだ買う必要はないのだけれど。
「肉は料理スキルを伸ばすために使うとして、売るのは皮だけにするべきか。」
皮4枚を売るために雑貨屋に急ぐことにする。たかが4枚のウサギの皮なのでそんなに高値では売れないだろう。品質も低いことだし。
「これなら4枚で200Gだ。どうする?全部売るかい?」
毎度おなじみの雑貨屋でウサギの皮を売ってみたのだが、正直かなり抑えめな値段、というかぼったくりを疑うほどの値段しかつかなかった。一応ぼったくりを確かめるために店主に尋も、もとい質問をいくつかしてみる。
「一枚50Gって安くないですか?」
「安くねえよ。兎の皮はな、小さすぎて服を作るにも結構な量がいるし、慣れれば農民でも狩れるから安いんだよ。しかも、この皮は剥ぐのを失敗してるせいでただでさえ使える部位が減ってるんだ。通常価格で買い取る俺に感謝はされても文句を言われる筋合いは無いね。」
おぅ、完全に論破されてしまった。
でも、ウサギを狩るのは金策的にもレベリング的にも良くないことがわかっただけ儲け物か。
「すみません、なにぶん初めて狩りをしたものですから。初めての獲物の報酬が少し安くて驚いてしまったんですよ。」
「なんだ、兄ちゃん初めての狩りだったのか。兄ちゃん見た感じ弓使いみたいだし、今度狩りに行くなら角の小さな鹿か青色の鳥を狙うと良いぜ。あいつらは村の農民程度じゃ狩れねえし、皮鎧とか装飾品の良い素材になるから高値で買い取るぜ。」
よし、狙ったことじゃないけど有力な狩り候補の情報をGETした。意外と良いおっさんなんだなこの店主。
「ありがとうございます。次に狩りに行くときは狙って見ます。」
「おう、初心者にはちょっと難しいかもしれないけど、初めての狩りで逃げ足の速いスプリングラビットを狩れたんだ。兄ちゃんなら何とかなりそうだな。」
わっはっはと豪快に笑いながら店主のおっちゃんは言うが、正直あのウサギを狩るのにもそれなりに苦労していたので、さらに難しい鹿や鳥はもっと苦戦しそうだなと先々の不安で胸が一杯になってしまった。
「それでは、ウサギの皮をすべて買い取ってください。」
「おう、それじゃあ200Gだな。ほら、がんばれよ兄ちゃん。」
店主から200G分の硬貨を受け取ると細かい光の粒子となって消えてしまった。このゲームでの貨幣受け渡しはこのようなエフェクトが出るらしい。NPCに硬貨を渡すときも『払う』と書かれたダイアログのボタンを押すと、手のひらに硬貨がいきなり現れ、それを渡すのだ。なんというかVRMMORPGの仕様に慣れるまでは当分かかりそうである。
雑貨店から出た俺はさっそく手に入れた情報の獲物を求め森へと向かうことにする。
なんというか、冒険者というよりは狩人といったほうが良いプレイングをしているなぁ。これも弓使いの宿命なのかとしみじみ思う。
弓使いの宿命といえば、矢の数が心もとなくなってきたし相変わらず周りのプレイヤーからの視線も気になる。矢の方は材料がそろい次第木工スキルに任せるべきだし、プレイヤーからの奇異の視線は諦めるしかないのかもしれない。
先行きは相変わらず暗いが、今は新しい獲物を探すことにしよう。
「ほう、これが矢の材料の一つか」
今手に取っているのは、低木にあった採取ポイントから取った〈木の枝〉と言うアイテムだ。実は初めて手に入れたまともな採取アイテムだったりする。今までの採取アイテムは〈雑草〉というアイテムだ。説明文には用途なしと書かれていたので入手しだいすべて破棄していたのだ。
〈木の枝〉
重量+0、レア度1、品質D
それなりに太い木の枝。棍棒には向かないが武器の取っ手程度には使える。他にもさまざまな用途あり。
うん、今度からは低木の採取ポイントを重点的に探そう。というか、何で低木からは素材アイテムが採れて、草むらからはスカアイテムしか手に入らないんだろうか。LUKの値が低いせいかな?よくわからん。
そんなことを考えながら鹿と鳥を探しながら森を歩いていく。見つかるのはウサギばっかりで、矢の残数も少々危うくなってきている。相変わらず皮と肉を良く落とすが、こういう通常MOBにはレアドロップとか無いものだろうか。
ふむ、まったく鳥が見つからない。正直見つからなさすぎて〈狩人の眼〉のレベルが上がってしまった。他のスキルのレベルはまったく上がってないのに何でだろうね。
そんなことを考えながらも探索していくと、とうとう目標である獲物を発見した。
距離にして大体60mほど、木の上に優雅に止まっている獲物は確かに情報通り青い鳥だった。ただし見た目が鷹なんですが。もしかして狩るのが難しいって反撃されるから?もしかして初ダメージ来ちゃいますか?
獲物の見た目にビビリつつも、ウサギ相手に練習した隠密行動を取り、なるべく近づく。
案外簡単に射程距離である30m以内に近づけたのだが、その理由が鷹が食事中だったためのようだ。食べているのは見慣れたウサギことスプリングラビット。どうやらウサギはこの森の食物連鎖の下層に位置しているようだ。
今回は外した場合鷹に襲われる未来がありありと見えているため、いつも以上に狙いをしっかりと定める。
ペンッ
いつも通りどこか間の抜けた弓音とともに矢は青い鷹へと吸い込まれるように飛んでいく。
ビャッ!!
矢は獲物を守るように広げていた羽の付け根に突き刺さり、その衝撃で鷹は木から落ちる。
「いまだ!」
矢が当たった瞬間俺はナイフを抜き取り走り出していた。痛みにもだえている今が反撃を受けない絶好のチャンス。
一瞬だけもう一度弓で射たほうが良かったかなと思ったが、矢の消費量を考えればトドメはやはりナイフがいい。
鷹が混乱から醒める前に到着した俺は鷹の首をナイフで切り裂く。
首から夥しい血を流しながら絶命した鷹を見つつ、そういえば何で流血表現があるのか少しだけ気になった。
まぁ、今はそんなことよりも剥ぎ取りである。せっかくの大物なのだし、いいアイテムが手に入ることを祈ろう。
〈青短鷹の石打〉
重量+0、レア度2、品質C
ブルーショートホークの尾羽。丈夫で色も鮮やかなので矢羽によく利用される。二枚セットで取れる。
〈青短鷹の風切羽〉
重量+0、レア度1、品質D+
ブルーショートホークの羽。羽根の外側にあり、美しい色合いとサイズの大きさで装飾品に使用されることもある。十枚セットで取れる。
おお、流石鷹だけあって羽は矢の材料になるみたいだ。鷹の羽とか現実だとかなりの高級品になるんじゃないかな。
しかも、羽は数個がセットになってドロップするみたいだし結構お得かも?
レアドロップっぽい羽も手に入れたし、今度からこの鷹を狙って狩りをするのもいいかもね。
そんなことを考えながらニヤニヤしていると、いくつかのアナウンスが流れる。
スキル〈狩人の眼〉のレベルが上がりました。
スキル〈弓入門〉のレベルが上がりました。
ジョブ〈弓使い〉のレベルが上がりました。
プレイヤーレベルが上がりました。LPの配分ができます。初レベルアップボーナスにスキルスロットが一つ増加しました。
お、おぅ。なんだか大量のアナウンスが流れてきたんですが。
スキルやジョブが上がったこともうれしかったのだが、一番うれしかったのはプレイヤーレベルの初レベルアップだ。今までウサギを10匹ほど狩ったのだが、まったくレベルが上がる気配が無かったのがようやくだ。うれしすぎてテンションがおかしくなっている。
しかも、スキルスロットの増加だ。今までは5つしかスキルが装備できなかったし、さらにスキルの変更もできなかったのでスキルスロットの増加を待ち望んでいたのだが、意外と早く来たものだ。
「さて、いつまでも喜んでいられないし、さっそくステータスとスキルを取得しよう」
幾分か迷ったが、ステータスとスキルはこのように決めた。
ステータス
HP :60 →62
MP :70
SP :32 →34
STR:9 〈1〉 →10
SIZ:7
DEX:18〈2〉 →20
VIT:7
INT:11
AGI:14
MND:12
LUK:6
LP :3 〈-3〉→0
スキル
〈発見〉:採取ポイントを見つけた場合、生産に使えるものが発見できる。
ステータスは弓の飛距離と命中率の上がりそうなものに振ってみてる。スキルはなんと採取ポイントを見つけるだけではだめだということが判明したため衝動的に取ってしまった。後悔などしていない、今だけは。
さて、少しは強くなったので鷹を探しつつもう一つの目標である鹿を探しにいこうか!
次回は掲示板の予定
ネーム〈銀狐〉Lv.2
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.2〉
ステータス
HP :62
MP :70
SP :34
STR:10
SIZ:7
DEX:20
VIT:7
INT:11
AGI:14
MND:12
LUK:6
LP :0
スキル
〈弓入門 Lv.2〉〈狩人の眼 Lv.3〉〈木工見習い〉〈簡易調理〉〈水属性入門〉〈発見〉NEW!
武器
メイン:<初心者の弓><初心者の矢×4>
サブ :<初心者のナイフ>
防具
頭:<無し>
体:<初心者の革鎧>
腕:<初心者のレザーアームガード>
手:<無し>
足:<初心者のレザーグリーブ>
靴:<初心者の革靴>
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈初心者のグリーンポーション〉