冒険30km
探検ですよ。
翌日、朝食を食べた後すぐにログインした俺は早速矢を作る準備を始める。
なるべく早く探索に出かけたいので、矢は20本だけ作ることにした。
合計で30本もあれば道中で補充しなくても十分持つだろう。
そう考えながら作業を始めるのだった。
矢を作るスピードは作るたびに上がっている様で、今回は30分程度で全部完成してしまった。
更に、<木工見習い>のスキルも途中でレベルアップしたのも関係がありそうだ。
まぁ、確かめる術が無いのでこの話は置いておくことにする。
さて、矢もできた事だし次は朝食を作らないとね。
調理に必要な火は昨日洞窟を整備した時に焚き火を作っておいたからそれを使うことにする。
本当は竃みたいな物が欲しいのだが、作るのに大量の資材や労力がかかりそうなので作ることは無いだろう。
しかも、現状では竃を利用する様な料理を作った事が無いので竃を作っても宝の持ち腐れになる。
そんな事を考えながら慣れた手つきで魚に串を刺す。
最近は焼き魚ばかりだったのでこれぐらいはサクサク出来るようになっていた。
後は焚き火の近くに串を石で固定して焼くだけだ。
焼き時間や焼き加減などもスキルの感覚に頼らずに出来るようになってきた。
まぁ、まだ串焼き以外の料理はやったこと無いんだけどね。
さてと、美味しい朝食も食べたし探索に向かうとしますか。
必要となる物をあらかじめインベントリから出して拠点を出る。
探索するのは拠点よりも北側の森なのだが、拠点のある洞窟は崖にある為、この崖を登るか避けるかしないといけない。
しかしこの崖はかなり横に大きい様なので終わりが見えない。
崖の高さ自体は4、5mなので登るのに苦労はしないだろう。
此処は崖を登ることにしよう。
そうと決まればまずは準備だ。
まずは邪魔な装備を全てインベントリに入れてしまおう。
例えばネットやかけなんかはクライミングには邪魔になる。
他にも弓矢や地図なんかもしまってしまう。
そして、身軽になった所で崖を見て考える。
一応フリークライミングのVRはリハビリで体験済みなのだがこのゲームで其の経験が生きるかがわからない。
今後もっと大きな崖に挑戦するかもしれないし、比較的簡単そうな此処で確認をいましてしまおうというわけだ。
此処で特に確かめるのは崖の当たり判定だ。
もしかしたら運営が、プレイヤー達が崖を登ることなんて無いだろうと当たり判定を適当に作っているかもしれないのだ。
其の場合、どんなに経験があろうとも崖を登ることは不可能に近くなるだろう。
まぁ、このゲームの運営は変なところに力を入れる傾向にあるみたいだしこの崖も作り込んでいる気がするけど。
まぁ、此処でごちゃごちゃ考えていても始まらないので意を決して登ってしまおうと手頃な突起に右足をかける。
うん、取り敢えず突起に当たり判定がしっかりとあるみたいだ。
次は、斜め右上に小さく出ている突起に右手の人差し指と中指をかける。
と、案外リハビリでやったVRと同じ感覚で登ることが出来そうだ。
違う所と言えば、チョークと呼ばれる滑り止めが無くても指が滑らないこととスタミナがかなりの速度で減ってることだ。
そして、スタミナが2割をきると腕がパンパンになってしまうパンプという症状になる。
一応腕の力を抜いて腕を細かく振るレストという休憩方法でスタミナが少しづつ回復する。
それでも完全に回復するわけでは無いから気を付けないと。
これってかなりリアルじゃ無いか?
でもスタミナが見えている分現実のフリークライミングよりもスタミナ管理が簡単そうだ。
崖を危なげなく登れた俺は一息つくことにした。
意外とスタミナを消耗したのだ。
まぁ、実験とはいえスタミナが2割をきるまで待っていたり、わざと遠目の突起を取りに行ったりしたから仕方が無いか。
でも、登るのにスタミナが必要なのは分かったし今度スミスにスタミナを上げる方法でも聞きに行こう。
ふう、スタミナも回復したし探索を再開しましょうか。
登る前にしまっておいた装備をまた出して、地図とペンを持って進む。
今回も下手な戦闘を避けるため地図への記入は完全に<簡易マッピング>に任せて、俺は<狩人の眼>を使い周りの警戒と目印になりそうな物を探す。
目印になりそうな物があれば警戒しながらそちらの方向へ歩き、敵がいるならなるべく気が付かれない様にその場から離れるのだ。
戦闘は食料になりそうな獲物を見つけた時か、鷲や鷹を見つけた時、襲われた時以外は控える。
じゃないと2日以上探索するから矢や魔法が足りなくなってしまう。
そうやって<隠密行動見習い>の効果を発揮させながら進んで行くと<狩人の眼>が敵を捉えた。
敵の種族はグレーウルフで5匹ほどの群れで行動している様だ。
まだ距離が離れていてこちらに気が付いていないのが幸いだな。
グレーウルフといえば、矢なら2本、最弱魔法なら5発撃ち込まないと倒せない結構タフな敵だ。
そんな奴らと戦うと探索を始めたばかりなのに大量の出費を強いられてしまう。
流石にそれは避けたいので、俺は木の上に隠れてやり過ごすことにする。
さっと木に登った後はグレーウルフ達の行動を偵察する。
向こうがこちら側に来なければそのまま探索を進めれば良し、こちら側に来るならこのまま息を潜めて置く、探索したい方向へ行くなら仕方が無いので反対側に行けば良い。
さて、狼たちはどちらに行く?
グレーウルフ達は少しの間休憩した後、俺とは反対側に歩いて行った。
取り敢えず今回は戦わずに済んだみたいだ。
今後もこんな感じでやり過ごせたら良いなと思いつつ探索に戻るのだった。
さっき願ったのはフラグだったらしい。
だって俺は今熊と対峙しているからだ。
まさか目印になりそうな岩に近付いたら後ろから熊が出て来るなんて予想すらしてなかったよ。
しかもバッチリと目があってるから完全に気が付かれてるし、熊とは大体10mぐらいしか離れてない。
しかもこっちは地図とペンを持ってるせいですぐには攻撃出来ないときたもんだ。
こういう時にどう行動するかって?
現実の熊なら絶対に目を離したり後ろを向いて逃げたりせず、ゆっくり後ろに下がる事が良いらしい。
まぁ、熊も野生動物だからこれが絶対に安全とは言えないだろうけど、後ろを向いて逃げることが危ないのは事実だ。
たが、此処はゲームでこの熊はどう見てもアクティブモンスター。
そして近接攻撃が全く出来ない俺が取る行動は一つ。
「逃げるんだよ!ス◯ーキー!」
尻尾を巻いて逃げることだ。
そして、周りを見てなるべく下り坂の方へと逃げる。
以前何処かで見た記事に、熊は下り坂が苦手と書いてあった気がする。
とにかく全力で熊との距離を離して木に登らないと俺は死ぬ!
後ろをチラチラと確認しつつ、地図とペンをインベントリに入れていつでも木に登れる準備をしておく。
てか、距離がジリジリと縮まってるから適当な木にすぐ登らないとヤバイ!
丁度目の前に生えてた木で良いや、登ろう。
俺は走っている勢いのまま一歩二歩と登って行くが、三歩目のタイミングで熊が追いついてしまう。
あ、これ間に合わないと思った俺は三歩目を強く蹴り木から離れる。
其の瞬間、熊が今まで登ろうとしていた木に頭から激突する。
その間になんとか上手く着地出来た俺は近くの木に登って身を隠す。
熊が激突した木は衝撃に耐えきれず根元から折れてしまう。
そして熊は木と激突した時の衝撃で目を回しているようだ。
こいつ一体何がしたかったんだ?
そう思いつつも木々を飛び移って熊の正面まで来た俺は、熊が目を覚ます前にその眼孔に矢を突き立てたのだった。
なんか、勝ってもあまり嬉しくない展開だな。
ネーム〈銀狐〉Lv.8
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.10〉〈労働者 Lv.2〉
ステータス
HP :76/76
MP :74/74
SP :44/44
STR:13
SIZ:10
DEX:30
VIT:7
INT:13
AGI:20
MND:13
LUK:8
LP :0
スキル
〈弓入門 Lv.13〉〈狩人の眼 Lv.18〉〈木工見習いLv.7〉〈簡易調理Lv.3〉〈水属性入門Lv.6〉〈風属性入門 Lv.3〉〈発見 Lv.15〉〈隠密行動見習い Lv.9〉〈暗殺見習い Lv.7〉〈簡易マッピング〉
武器
メイン:〈樫の弓〉〈石の矢×29〉〈黒熊の矢×1〉
サブ :〈初心者のナイフ〉〈木の銛〉
防具
頭:〈皮の帽子〉
体:〈初心者の革鎧〉
腕:〈初心者のレザーアームガード〉
手:〈鹿の騎射がけ〉
足:〈初心者のレザーグリーブ〉
靴:〈初心者の革靴〉
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈初心者のグリーンポーション〉〈石のつるはし(簡易)〉〈石の斧〉 〈鉄の鋸〉 〈鉄のつるはし〉 〈鉄の鑿〉 〈鉄の斧〉




