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Free World Frontier  作者: シバケン
閑話その1
29/79

スミスの1日

今回から2話ほど閑話が続きます。

ストーリーに関わりが無いですので飛ばしても大丈夫です。


 露店「マスチェスカー」の店主であるスミスは色々と疲れていた。

 理由は最近知り合った<弓使い>の規格外なプレイングのせいだと分かってる。

 あれは、今まで誰も登れないと思われてきたフィールドの樹木に軽々と登っていた。

 あれはことの重要性を理解していないようだが、β版では空を飛ぶ種族や魔法が存在していなかったのに、擬似的とはいえ敵の頭上から攻撃できるのはかなりのアドバンテージがもてるだろう。

 この情報を下手に隠しておけば、ばれたとき周りのプレイヤーからの評価が急落することは避けられないだろう。

 今のVRMMORPGは昔とは違い横のつながりが強い傾向にある。

 これは、プレイにプレイヤー自信の肉体的なスキルが必要になりソロプレイがやりにくくなったせいだと言われている。

 そんな中、周りのプレイヤーの印象が悪く、あまつさえ<弓使い>という彼にはPKプレイヤーキルや生産系プレイヤーからの売買拒否が起こる可能性が少なからずある。

 そうなれば普通はこのゲームから去っていくだろう。

 それだけは阻止しないといけない、せっかくのかねづ、ゲフンゲフン。お得意様候補なんだから、このゲームから去っていく可能性を摘み取らなければ。

 だから木登りのことを掲示板に書いたのに。


「どうして誰も登れないんだよ!!」


 私は周りに誰もいない事をいいことに思いっきり叫んだ。

 仕方ないよね。

 はぁ、考えても仕方が無い、とりあえず採取の続きをやろう。


「必要な素材は木の棒に木材、それに各種皮か。木の棒は途中で拾うとして、まずは木材からかな。」


 木はたくさんあるが、なるべく使いやすい楢を探す。

 楢は意外と少ないので探すのが面倒だ。

 たぶん村の近くだからだろう。

<識別入門>のスキルがなかったらもっと時間がかかったのだろうな。






 コンッ!コンッ!コンッ!

 メキメキ!!

 オークの群生を発見したので早速樵っておく。

<樵入門>と<鉄の斧>によって軽々楢を樵ることが出来る。

 あまりSTRに振っていないのだが斧の性能がいいから楽でいい。



<鉄の斧>


 重量3、レア度3、品質B-


 アイアンファントム作の斧。鉄で出来ているため重たいがその分木を樵り易くなっている。



 後二本ぐらい樵っておこう、ある程度量が欲しいからね。






 3本の木を持ち運べる大きさまでのこぎりでカットする。

 木をそのまま運びたいのだが、それにはリアカーが必要だ。

 今の<木工入門>のレベルだと作ることは出来ないし、作れたとしても運べるほどのSTRがないから意味が無い。

 まぁ、切った丸太もスタックできないからインベントリを圧迫されるがな。

 さてと<木の枝>を集めながら跳兎と短角鹿を探すかな。






 私は今回の獲物である短角鹿と対峙していた。

 私の得物は片手剣、所謂ショートソードと呼ばれるもので、彼の武器の弓のように気付かれないような遠距離での攻撃は出来ない代わり少し練習すれば誰でも使える気軽さがある武器だ。

 今回の短角鹿相手では弓のほうが圧倒的に狩り易いのだが、私のような片手剣でも狩れないわけではない。

 作戦は先回りだ。

 ランダムに動いていると思われている短角鹿の動きだが、実はある規則性に沿って動いている事が分かっている。

 彼らは水辺の近くから森の奥へ一筆書きの八芒星のような動きをしていることがわかっている。

 そこの何処かにいれば短角鹿はやってくるのだ。

 さらに、一番水辺から離れた地点で絶対に草を食べるのでそこを狙えば簡単だ。


 こうして楽々短角鹿との接近に成功した私はついでに先制攻撃を行う。


「はああああ!!」


 ジョブを持っていないため、単純に走り寄って斬りかかるだけだが、いきなり大声を出すことで短角鹿を竦ませることに成功した。

 剣の重みを一番生かすことの出来る唐竹で斬りかかる。

 立ち竦んだ短角鹿は逃げることが出来ずに、剣を真正面から受け絶命する。

 さっさと剥ぎ取って、次の獲物を狙わなければ。

 素材確保を速くやればそれだけ製作と販売の時間が取れる。







 必要数の素材が集まったので早速村に帰ることにする。

 狩りが終わったのが昼前だったので昼過ぎには出店出来るようにしよう。

 そして、夕方過ぎまで販売した後、夜の間に素材の確保と製作すれば完璧じゃないか?

 そう考えると自然に村に向かう歩みが速くなる。






 村の外れ(彼がいつもいるのとは反対側にある)に着いた私は、早速製作に取り掛かる。

 まずは運んできた丸太を角材にするのだが、指矩(さしがね)が無いので一番効率の良い切り方が分からない。

 仕方が無いのでそこはフィーリングで何とかする。

 なるべく正方形になるよう気を付けながら鋸で切り出す。

 切り出した角材を縦に4分割して板材を作る。

 残った丸太を同じように加工して板材を大量生産する。

 さらに一部の板材をさらに細く分割して棒材も作っておく。

 今回作るのは折りたたみ式の椅子と机なのだ。

 作り方はとても簡単。

 長く切り出した棒材とその半分ぐらいの長さの棒材をクロスさせ、二つがある程度動くように固定する。

 固定にはナットを使いたいのだが、そんな物はないので木を加工して似たような物を作る。

 ナットと違うのはネジで締めるのではなく、接着するということだ。

 後は二つをちょうど良い長さで固定して上げるだけだ。

 取り敢えず棒を30cm程に切って固定して行く。

 座る部分と背もたれには鞣した皮を少し緩めに張る。

 椅子の方は完成だ。

 机の方は、天板となる板材の一方の端に棒材を接着する。

 そこに天板の半分の長さに調節したコ型の足を取り付ける。

 取り付ける時は椅子に使ったのと同じ木を加工したナットのような物を使う。

 両足を固定したら完成。

「マスチェスカー」特製の折りたたみ式椅子と机のセットだ。

 後はこれをジョブ<木工職人>のオートクラフトで量産すればOKだ。

 このオートクラフトは今まで作ったことのある木工製品を最高品質から3段階落ちた品質で再現する能力だ。

 これがあるからこそ、生産系のプレイヤーは簡単に量産が出来るのだ。

 多分彼は喉から手が出るほど欲しいんだろうな。

 クックック。







 昼食休憩が終わった後も少しだけオートクラフトをして机と椅子を作った後、いつもの広場に行き露店を出す。

 実は広場で露店を出す場所は決まっているのだ。

 破った場合、広場にいる全生産系プレイヤーに睨まれる事になるだろう。

 そうしたらまともな場所に露店を出す事だって難しいはずだ。

 さすがにそれは嫌なので、しっかりと場所を守って出店する。

 私は空気の読める男なのだ。







 露店を出してそれなりの時間がたった。

 家の店は、β時代からそこそこ有名な店なので客足はそこまで悪くない。

 でも、大手と比べればすずめの涙だろう。

 所謂知る人ぞ知る名店的な立場なのだ、たぶん。

 そんな馬鹿なことを考えているうちに、最近足しげく家に来る少年が見えた。

 彼と同じ弓使いながら苦労している少年だ。

 しかも、彼とは少ないながらも接点を持っている珍しい人物でもある。

 彼が他人と係わり合いが少ないのは、彼が自身でも気付かないうちに人から離れるような行動を取っているから仕方が無いのかもしれない。

 さて、少年は何のようで家に来たのかな?

 あるとしたら、足りなくなった矢を買いに来たのかもしれない。

 彼のように矢は自作すればいいのにとは口が裂けてもいえない。

 少年にはウチの売り上げに貢献するという指名があるのだ。

 無論冗談だ。


「やあ、リュイ君。今日は何の用かな?」

 ネーム〈スミス〉Lv.7

 種族 〈ヒューマン〉

 ジョブ〈木工職人(ウッドクラフター) Lv.?〉〈皮職人(レザーワーカー) Lv.?〉


 スキル

〈片手剣入門 Lv.?〉〈木工入門 Lv.?〉〈皮細工入門 Lv.?〉〈皮防具製作入門い Lv.?〉〈露天商入門 Lv.?〉〈識別入門 Lv.?〉〈鑑定入門 Lv.?〉〈樵入門 Lv.?〉

武器

 メイン:〈鉄の片手剣〉

 サブ :〈初心者のナイフ〉

 防具

 頭:〈無し〉

 体:〈ライトレザーメイル〉

 腕:〈ライトレザーアームガード〉

 手:〈ライトレザーグローブ〉

 足:〈ライトレザーグリーブ〉

 靴:〈ライトレザーブーツ〉

 装飾品

 〈木鳥の首飾り〉


スキルの簡易説明

〈露天商入門〉:これが無いと露店が開けない

〈鑑定入門〉:装備の耐久値等が分かるようになる。

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