冒険21km
銀狐さんの里帰り(?)です。
いつものように朝食を食べてからログインした。
目の前には木の葉、今日も生き残ったらしい。
やっぱり<隠密行動見習い>は便利なスキルだよ。
今回は囲まれていないし、さっさと下りて朝食にしよう。
朝食は昨日と同じ焼き魚にするつもりだ。
ゲーム内でも朝食を食べた俺は、村を目指すことにする。
早速、木の枝の生えている量を見て進むべき方向を決める。
今回は南だから沢山生えてるほうだな。
さあ、村まであともう少しだ。
正直確証はまったくないのだが歩けば分かるだろう。
昼飯の時間が近くなってきた頃、やっと森が開けた。
俺が知る限り、森が広く開けるのは村の近く以外はなかったはずだ。
また道を間違えて、知らない場所に出てしまったかもしれないが村があるならもう少し進めば建物が見えてくるだろう。
俺は今までよりも軽い足取りで村があるだろう方向へと歩いていく。
少し歩いたところで見慣れたあばら家を発見する。
いつもお世話になっている焚き火の近くにある建物だ。
ああ、やっと帰ってきたんだなと少し感傷めいたものを感じる。
大体3日ぐらいか、離れていたのは。
でも余り村にいた記憶はないんだけどね。
さて、村に着いたことだし今後の予定を考えなければ。
とりあえず今回村に来たのは地図を作るための紙とペンを買うためだ。
今は懐が寂しいことになっているので、先にスミスの何とかって店に素材を売りに行かないと。
あの店名、聞き覚えのない単語なので覚えにくいんだよな。
その後は、拠点までの超簡易的な地図を書いてそのままこもる。
これで完璧だ。
そうと決まればスミスの元に急ごう。
うまくいけば地図の材料も手に入るかもしれない。
意気揚々と出店広場に到着した。
いつものように色々見て回りながらスミスの店を探す。
VCを使えばいいと気がついたのはスミスの店を見つけてからだった。
どうしてこう便利なものを忘れているのかね。
「やあ、久しぶりだね。どこに行ってたんだい?ここ3日間は村にいなかったみたいだけど。」
近づく俺に気がついたスミスがそう話しかける。
ん?
俺が村にいない事を知ってたのか?
問いかける前にスミスが話を続ける。
「ゲームとはいえ、今のVRMMOで日付をまたぐほど長期間のフィールドレベリングをやるプレイヤーは少ないんだが、君はやっぱり面白いね」
スミスがまたも気になることを言っている。
こいつと話しているとこういうことが多くて困る。
「とりあえず北の森の奥を探索していたんだよ。実入りが多かったんだが、地図が欲しくて帰ってきたんだ。」
そういうと、スミスはいつもの驚いたようなあきれたような顔をしている。
うん最近いつもしている顔だな。
「正確に言えば迷っていただけで、木の枝を利用して何とか帰ってきたんだけどね。」
そう付け足すと驚いた顔よりも呆れ顔が強くなった。
一体何がどうしたって言うんだ。
「色々と突っ込みどころはあるけど、木の枝で方角が分かるのはガセネタだよ。まぁ、君が無事帰ってこれたんだし運営が方角を見失ったプレイヤー用に用意した救済措置だと思うけどね。」
おう、あれはガセネタだったのか。
まぁ、このゲームで使えるなら問題は無いか。
「それにしても北の森の奥かい?あそこはレベルが二桁無ければかなり危ない土地だったはずだけど?」
もう俺は驚かないぞ。
俺があそこで生き残れたのは地上での交戦をすべて避けられたからだしね。
でも、それだけ危なければレベリングがはかどりそうだ。
「それは、地上での交戦を避けるだけ避けたからですよ。」
スミスの顔はもう変化しない。
「それでも夜はキツイはずなんだけどなー」
「夜は木の上にいましたし、ログアウト時も木の上でしたから。」
「ソウナンダーハハハー」
うわ、何か目のハイライトが消えてる。
ちょっと気持ちが悪い。
「そうだ、素材をそれなりに持ってきましたから買い取ってくださいよ」
とりあえずこういう時は話題を変更するほうがいいらしいので実践してみる。
「ワカッタヨー。カンテイスルカラチョーダイ。」
あいかわらず目のハイライトが消えているが、素材を受け取ったところで目に光が戻った。
やっぱりプロは一瞬で雰囲気が変わるから凄い。
でも、素材を鑑定し始めたらなんかプルプルしだした。
男がやるところを見ると気持ちが悪いのでさっさと目を離して商品を眺めることにする。
お、紙とペンじゃないけど羊皮紙と羽ペン、インクつぼが売ってる。
後で買おっと。
「終わったよ。なんだか君の規格外っぷりを思い知った気がするよ。」
ハハハと乾いた笑い声を出しながら、こちらにお金を渡してくる。
金額を教えてくれないのは初めてで少し戸惑いながら受け取る。
えっと、ひい、ふう、みい、よお、いつ。
全部で4万Gなりと。
やっぱり多くない?
「詳しい説明は省くけど、鷲と狼の素材って今ほとんど出回っていないんだよね。普通なら2桁いるはずの場所だし、いわゆる攻略組って呼ばれている人たちぐらいしか踏み込んでいないんだよ。だから値段が高いんだ。」
つまり、そんなところの素材だから良いお値段がすると。
「ちなみに聞くけど、君のレベルは幾つだい?」
「いま6レベルだけど。」
さらりと聞かれたからついつい答えてしまった。
ステータスってあまりホイホイ言ってはいけない気がするんだけど。
「君が意外と中級者のレベルで止まってる事に少し驚きなんだけど。」
驚かれても本当なのだから仕方が無い。
「そうそう、規格外ついでに君って木登りに関係ありそうなスキルって取ってる?」
いきなり何を言い出すんだこの人は。
まるで他の人が木に登れないみたいじゃ無いか。
「いや、取ってないけど。」
俺がそう答えると、スミスはブツブツ何かを呟き始めた。
「スキルでは無かったか」とか「じゃあ特定のステータスか?」とか訳がわからない。
「君が初めて木に登った時のSTR、VIT、DEX、AGIの大体の値を教えてくれないかい?」
いきなり何を聞いてくるんだこいつは?
流石にだいたいでもステータスを他人に言いたくは無い。
それにそこまでしっかり覚えていない。
そんな俺の心境を察したのかスミスが喋り出す。
「実は、君の狩の仕方を教えた後、木に登れないじゃ無いかと言う返答が多くきてね、このままだとガセネタ行きになってしまいそうなんだよ。そうなると<弓使い>はまた地雷スキルに逆戻りだ。」
そんな感じのことを長々と言ってきた。
流石にコレでも一応<弓使い>の地位向上を夢見ている俺には動くしか無かった。
本当<弓使い>が関わると甘いよな俺って。
「覚えてる限りだぞ。たしかSTRが10代、VITが5だったかな?それからDEXが20ぐらいでAGIが15より下だった気がする。」
殆どうろ覚えだが仕方が無いだろう。
「ああ、これで少しは検証が進みそうだ。」
そしてスミスがまた考え出す。
知的な顔をしてるだけあって頭は良いんだなとか場違いなことをのんびり考える。
「多分だが、木登りに必要なのはSTRが10以上で、DEXが20以上、AGEが10以上ないとダメなのかもしれないな。意外と条件が厳しいんだな。まぁ、当たり前か。」
そんなことをブツブツ言いながらこっちを見る。
それって俺が悪いのか?
「ああ、キツイ。前衛職だとDEXが、後衛職と生産職だとSTRの値がキツイ人が大半だ。前衛職だと、武器の扱いはDEXで上げるよりもスキルであげた方が手っ取り早いからDEXは最低限の値しか振り分けないし、後衛職、特に魔法使いはSTRよりもINTやMNDを重点的に上げる物だし、生産職は例外を除いてSTRは最低限だ。そう考えると初めから目指さなければ結構キツイ道のりになるな。」
話が長くて寝かけていたのだが、取り敢えず木登りは難しいことだけわかった。
そう言えばもう時間的に昼食なのでそろそろ落ちたいんだけど。
「あ〜、そろそろ時間的に落ちたいんだけど。」
俺がそう言うと、スミスは話を切り上げた。
「ログインしたらVCしてくれ。そうしたら話の続きをしよう。」
スミスの方は話し足りなかったのか此方を誘ってきた。
まぁ、断る理由もないし従うことにする。
ちなみにログアウトするのはいつも通りの焚き火の近くだ。
あそこが一番落ち着くんだよな。
木に上る条件は
1.STRが10以上かつSIZよりも高いこと。
2.DEXの値が20以上あること。
3.AGIが10以上あること。
の3つを満たさないといけないです。
ネーム〈銀狐〉Lv.6
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.8〉<労働者 Lv.1>
ステータス
HP :68/72
MP :69/74
SP :39/44
STR:13
SIZ:9
DEX:28
VIT:7
INT:13
AGI:16
MND:13
LUK:8
LP :0
スキル
〈弓入門 Lv.10〉〈狩人の眼 Lv.14〉〈木工見習いLv.5〉〈簡易調理Lv.3〉〈水属性入門Lv.5〉<風属性入門>〈発見 Lv.11〉〈隠密行動見習い Lv.5〉<暗殺見習い Lv.3>
武器
メイン:<樫の弓><石の矢×2><鹿角の矢×5>
サブ :<初心者のナイフ><木の銛>
防具
頭:<無し>
体:<初心者の革鎧>
腕:<初心者のレザーアームガード>
手:<鹿の騎射がけ>
足:<初心者のレザーグリーブ>
靴:<初心者の革靴>
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈初心者のグリーンポーション〉<石のつるはし(簡易)><石の斧>




