冒険14km
予定よりも話が進まないんだが、どうしようかな?
村に帰ってきた俺は、早速戦利品を売りに出かける。
売りにく場所は勿論弓を買う予定の店だ。
そういえば名前を聞くのを忘れていたが、まぁ問題ないだろう。
取り敢えず前店のあった場所に来たが、違うプレイヤーが出店を開いている。
どうやら場所は決まっていないようだ。これじゃあ探すのに時間がかかりそうだ。
露店だから仕方が無いと周りを見て回ることにする。
今は弓以上に必要なものもなさそうだから冷やかしが中心になると思うけど。
広場を半周したところで目的の露天についた。
見て回ったところにはめぼしい物は無かった。てか、弓使いの必要な物なんてまず売ってないことは予想済みだが、少し寂しいとも思う。
「お、いらっしゃい。昨日の今日で来るとは思わなかったよ。何かいい物でも手に入ったのかな?」
「まぁ、それなりに。」
二人でお世辞を言い合った後、商談に入ることにする。
「今日はこれをお願いしますね。」
今回の成果である皮や肉の一部、爪などを店主に渡す。
「こ、これまたすごい量だね。ソロだと1日2日じゃ集まらない気がするんだけど。」
店主が若干引いているのを感じる。
そこまで量があるとも思えないんだが。
「まぁ、一日中ログインしていますからね。これぐらいの量にもなりますよ。」
事実約10時間もログインすればこうもなるだろう。
店主の方は、それでもおかしいという顔をしているが本当のことなので仕方が無い。
「まぁ良いでしょう。それなりに時間がかかりますので、どうぞお好きにお過ごしください。」
店主にそう言われるが、どうせ見て回っても必要な物なんて売っていないのでここの商品を見ることにする。
そう言おうとしたところで、店主が何か言ってきた。
「そう言えば、こちらの連絡先を教えていませんでしたね。VC用のIDを渡しておきます。」
店主が紙のような物を手渡して来た。
どうやらIDの受け渡しはこのようなやり取りをしないといけないようだ。
取り敢えず受け取ると紙は手に吸い込まれるようにして消えた。
ID「マスチェスカー」を入手しました。VCアドレス帳に保管します。
俺がこれは一体なんだ?と考えていたら店主が説明してくれた。
「これはVC用のIDアドレスです。このアドレスがあれば何時でも相手にVCを送れるようになるんですよ。使い方は簡単で、右手か左手の親指を耳に当て、同じ手の小指を口元に持って行けば専用のウィンドウが開きます。」
店主に言われた通りにやると、画面上に携帯のアドレス帳のようなUIが開かれた。
成る程、これは便利だ。
「アドレスの渡し方も簡単で、ステータス画面の下側に受け渡し用のボタンがあると思うんですが、そこからIDを渡すを選択して、名前を付ければ相手に送れます。」
言われた通りに作ってみる。名前は「銀狐」にしておけば良いだろう。
作成ボタンを押すと、手が勝手に前に出され、紙が手のひらから生成される。
その紙を店主が受け取ると、こちらを見て微笑む。
「銀狐さんですね。登録させていただきました。少々遅いかもしれませんが、私は『マスチェスカー』の店長をしております『スミス』です、よろしくお願いします。」
取り敢えず遅すぎる自己紹介を終えた俺は「マスチェスカー」の商品を眺めることにした。
「一応終わったけど、君に色々と聞かなければいけない事が出来たんだけど良いかな?」
商品を見ていた俺にスミスが告げる。
何と無く予想は付く。どうせあの爪のことだろう。
「爪の事ですか?」
先制攻撃というわけではないが、どうせ爪の事だから待ってる意味はあまりないだろう。
「そう、その爪のことだ。これを持ってるってことはショートホワイトイーグルを狩ったって事だよね。正直に言うと、ショートブルーホークですら弓使いのソロでは不可能と言われてるんだ。君は一体どうやって狩ったんだい?」
むぅ、そんなに強かったっけ?
ああ、強かったね1度完全に死にかけてたし。
とは言っても一撃で沈むからな〜、あまり強いとは思わなかったな。
「鷹ってそんなに強かったんですか?」
一応聞いておくことにする。
一瞬目をパチクリさせた後はあ〜と大きなため息をつかれた。
ほんとうとのことだから仕方が無いと思うんだが。
「君は本当に規格外だね。普通鷹とか鷲は反射神経や警戒能力が高すぎて近づけないし、矢や魔法を撃っても避けられてダメージを与えることも困難なんだがね。まぁ、その後は君も知ってると思うけど、鷹なら魔法を放ちながら接近して最後には鋭い爪で切り裂かれるし、鷲なら魔法を撃たないが鷹よりも速い速度で接近し鋭い爪や嘴で攻撃してくるんだ。普通の後衛職ならこれで終わりだね。しかし君はそれなりの数を倒しているみたいだ。そこにある矢の束にも興味を示していないのがその証拠さ。一体どんな魔法を使ったんだい。」
「いや、そんな特別なことなんてしてないよ、ただ罠を張っただけだ。」
またも目を見開くスミス。
おいおい、驚きすぎじゃないのか?
「なるほど、君は罠師系のスキルかジョブを持ってるのか?」
完全に見当はずれのことを言い出した。
てか、そんなスキルがあったのか。ちょっとほしいな。
「違いますよ、枝に抜けにくくした肉を刺すだけの簡単な罠を木の上に仕掛けただけですよ。というか、この程度では罠とはいわないですよね」
はははと笑ってみたが、スミスの表情は硬い。
誰も気が付かなかったのか?
「そんな事ができたのか?」
「まぁ、できてしまったんだから仕方がないでしょう。まぁ、いったん罠にかけてしまえば鷹なら一撃で沈められますからね。鷲は気づかれたせいで死に掛けましたけど。」
なんだか納得していないようなので、こちらから一つ提案する。
「それじゃあ、新しい弓の実地試験ということで一緒に狩りに行きますか?」
この提案にああ、なるほどというような顔をしている。
まぁ、こなくてもこっちは関係ないんだけどね。
「それがいいね。弓も今回でお金がたまっただろうし、すぐ行こうか。」
ん?何か重要なことを言わなかったっけ?
「まだお金はたまっていないですよ。」
「それなら今回の分で大丈夫だよ。この爪、上位の武器には欠かせない材料だし2万Gで買い取るよ。どう?」
まさか、あの爪がそんなにするなんて。
かなり強いからかれないけど、狙ってみるのもありだな。
「それじゃあ、これが依頼の弓だよ。ついでにこれもあげる。」
そういって、後ろから大き目の弓と手袋のようなものを取り出した。
「あの、これは何ですか?」
そういって手袋を指差す。
「ああこれ?君から買い取った鹿の皮を使った騎射がけっていうやつだよ。全体的に柔らかいから他の作業もやりやすいようになってるから冒険にはもってこいさ。」
「いいんですか?高そうですけど。」
よしあしは分からないけど、よくできているのだけは分かる。
「気にしないで。前言ったやつの一つだよ。君は予想以上のプレイヤーだし、すごく期待してるんだよ。」
そういって弓とかけを押し付けてきた。
まぁ、もらえるものはもらっておこう。
<樫の弓>
重量2、レア度3、品質C+
ダメージボーナス+30%、DEX+2
スミス作の弓。樫の木を利用しいるためかなり重い弓となっている。そのため威力と飛距離に優れる。
<鹿皮の騎射がけ>
重量1、レア度3、品質C+
ダメージカット+10%、SIZ+2、DEX+1
スミス作のかけ。鹿の皮のみを使っており全体的に柔らかく弓を打つ以外の事もやりやすくなっている。
今までの防具とは比べ物にならない程いい弓と防具だ。
本当にもらってもいいのだろうか。
「さあ、早く君の狩りを見せてくれ。こんなプレイング見たことないし、楽しみだ。」
まぁいいか。
というわけで、初めてパーティーでの狩へ向かったのだった。
ネーム〈銀狐〉Lv.5
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.6〉
ステータス
HP :66/72
MP :33/74
SP :38/44
STR:13
SIZ:9
DEX:25
VIT:7
INT:13
AGI:15
MND:13
LUK:8
LP :0
スキル
〈弓入門 Lv.7〉〈狩人の眼 Lv.11〉〈木工見習いLv.4〉〈簡易調理Lv.2〉〈水属性入門Lv.5〉<風属性入門>〈発見 Lv.8〉〈隠密行動見習い Lv.2〉<暗殺見習い>
武器
メイン:<樫の弓><石の矢×15><鹿角の矢×5>
サブ :<初心者のナイフ>
防具
頭:<無し>
体:<初心者の革鎧>
腕:<初心者のレザーアームガード>
手:<鹿の騎射がけ>
足:<初心者のレザーグリーブ>
靴:<初心者の革靴>
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈初心者のグリーンポーション〉




