冒険12km
実験その2です。
実験の続きのため、南の森へ来ている。
先の北の森の実験では、鷹相手に<木の矢>は確殺できなかったため<木の矢>運用は控えたほうが良いようだが、距離に対する命中率がいいため遠距離の敵のヘイトが集めやすそうではあるが。
今回は鷹ではなく鹿が相手だ。鷹よりもHPや耐久力、危機察知能力にたけているため、遠距離からの狙撃が好ましい相手だ。
今回は、鹿に気付かれにくいように木の上でスタンバイしておく。
場所は南の森の少し奥にある小さな池だ。前かりをしたときに見つけた穴場(?)スポットで、鹿やウサギがよく水を飲みに来るのだ。
俺はそこから少し離れた池全体が見渡せる木の上で息を潜めている。
何とか昼までに終わればいいのだが。
ペンッ!
放たれた<木の矢>がまっすぐ鹿へ向かって飛んでいく。
飛距離が比較的高めな<木の矢>だからこそできる弾道だ。
<木の矢>は無防備にも水を飲んでいた鹿の首筋に命中するが、軽く威力の劣る<木の矢>ではしっかりとダメージを与えられなかったようで鹿はぴんぴんとしている。矢が弾かれてしまったぞ!
だめじゃないか、コレでは使い物にならない。流石に村の周りのモンスターにダメージをほとんど与えられないのはきつ過ぎる。
そんなことよりも、完全にしとめそこなった鹿をどうにかしないと。
ここは実験のためにも<鹿角の矢>を使うか。
鹿自体は何が起こったのかキョロキョロしているところを見るとダメージは0かもしれない。もしかして、<木の矢>って距離減衰が激しいのか?
そんなことを考えている暇はない。鹿がいつ逃げ出すかも分からないんだから。
狙うのは相手の胴体。致命傷は与えられないかもしれないけれど一番当てやすい場所だからだ。ここからだと<鹿角の矢>で頭や首などを狙うには遠すぎる。
目一杯引いた弓がギリギリと音を立てているがまだ撃たない。
どうも、鹿はここから離れる決断をしたようで池の左手側に向かって歩いていた。
こういう場合は標的そのものを狙っても移動しているため当たらない。そこで標的の進行方向とスピードを予想して進行方向の先を狙って撃つ偏差射撃が必要となってくる。
正直弾速の遅い弓矢だと当たる気がしないのだがやるだけやってみる。
たぶんここら辺と適当に当たりをつけて矢を放つ。
ペン!
放たれた矢は、放物線を描きながら鹿の未来予測点に向け飛んでいく。
鹿はまったく気がついた様子はなく予想通りのペース進行方向で歩いている。
矢はそんなことはお構いなしに風を切って飛ぶ。
数瞬後矢と鹿の進行方向は交じり合い、鹿のどてっぱらに矢が突き刺さった。
絶命はしていないようだが、痛みでもがいておりたてないようだ。
とりあえず、木から降りて鹿にトドメをさそう。
魔法のレベルがまだ低いので魔法を使ってトドメをさすことにする。
「ウォーターショット」
放たれた水の玉は暴れている鹿の胴体に着弾しその息の根を止める。
どうやら今ので魔法スキルのレベルが上がったみたいだ。視界の隅にインフォが出ている。
確認してみよう、もしかしたら有効な魔法が手に入っているかもしれない。
スキル<水属性入門>のレベルがアップしました。
うん、アナウンスはコレだけだ。新しい魔法なんてなかった。
とりあえず気を取り直して剥ぎ取りをしよう。皮が手に入れば弓の購入資金の足しになるだろうし純粋にうれしい。
そう思って剥ぎ取りをするが、手に入ったのは肉と角。まるで狙ったかのようにピンポイントで皮だけでない。
いじめかコレは。
こうなったら皮が出るまで狩り続けてやるとさっきの木に登り狩りを続けるのだった。
皮が出なさ過ぎていつの間にか時間はお昼になっていた。
狩った鹿は全部で9頭。最後の一匹以外全員肉と角だけだった。
しかし、悪いことばかりではなくスキルがレベルアップしたので許そう。
スキル<弓入門>がレベルアップしました。
スキル<狩人の眼>がレベルアップしました。
スキル<発見>がレベルアップしました。
スキル<隠密行動見習い>のレベルアップしました。
うんうん、いい感じでスキルが上がってるな。
しかし、皮って意外とレアなドロップなのか?
それとも所謂物欲センサーというものが働いたのか?
まぁ、良いやご飯食べるために落ちよう。
そういうわけでいつも通り村の焚き火のところでログアウトしようとすると、珍しくプレイヤーがいた。
どうも村の外れでしかもひっそりと隠れるようにあるため今までに一度しかプレイヤーがいるのを見たことないのだ。
「こんにちは」
取り敢えず声だけはかけておく。
挨拶はコミュニケーションの基本だと聞いたことがある。
だが相手は挨拶を返してはくれなかった。
というか、完全に無視された。こっちを見ようともしない。
むぅ、少しだけ寂しい気持ちになるがしかたがない。
俺は近くにある納屋の壁にもたれかかりログアウトの手続きをする。
ログアウトするまでの数秒間、プレイヤーがこちらを見たような気がしたが、一瞬のことで分からなかった。
昼食を終えてログインしてみると、ログアウトのときにいたプレイヤーはいなかった。
まぁ、そんなことはおいて置いてゲームの中でも昼食を食べることにする。
いつもはウサギの肉を串に刺していくが、今日はせっかく沢山の鹿肉、つまりもみじ肉があるのでこれを串焼きにしようと思ってる。
ついでに料理スキルが上がればいいなとか思ってる。
とりあえず取り出したもみじをナイフで小さく切っていく。鹿の肉なだけあってウサギよりも大きく串2本分切り取ってもまだ沢山残っている。
残った分は売ってしまうのが一番だろう。
とりあえずいつもと同じく焚き火の近くで焼く。
うん、ウサギよりも肉汁が良く垂れているように見える。
焼けるときの匂いも少し強く本当に美味そうだ。
そしてできたのがこれ。
<鹿肉の串焼き>
重量0、レア度1、品質C
SIZ+1三分
銀狐作の串焼き。短角鹿の肉を使った串焼き。ジューシーに焼けておりおいしそうだ。
おおう、なんかステータス上昇効果が付いたんだけど。
え?まじで?高く売れる理由ってこれ?
さらにスキルまでも上がった。
スキル<簡易料理>のレベルが上がった。
念願のスキルのレベルアップだ。これでもっと品質の高い料理が食べられそうだ。
なかなか満足のいく昼食だったが、残念なことに矢が減ってきているので材料を集めにいく。
特にほしいのは<木の棒>と<空蔦>だ。
さっそく森に向かうことにする。
ネーム〈銀狐〉Lv.4
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.5〉
ステータス
HP :66/66
MP :63/70
SP :38/38
STR:12
SIZ:7
DEX:22
VIT:7
INT:12
AGI:14
MND:12
LUK:7
LP :0
スキル
〈弓入門 Lv.7〉〈狩人の眼 Lv.9〉〈木工見習いLv.4〉〈簡易調理Lv.2〉〈水属性入門Lv.3〉〈発見 Lv.6〉〈隠密行動見習い Lv.1〉
武器
メイン:<初心者の弓><石の矢×5>
サブ :<初心者のナイフ>
防具
頭:<無し>
体:<初心者の革鎧>
腕:<初心者のレザーアームガード>
手:<無し>
足:<初心者のレザーグリーブ>
靴:<初心者の革靴>
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈初心者のグリーンポーション〉




