冒険8km
銀狐が買い物をするそうです。
夜があけ空が白んで来たので狩りを終えて村へと帰ることにした。
今回の戦果は最初のを含めて鹿が5頭、ウサギが7頭だ。因みに矢を5本消費した為とうとう<初心者の矢>を使い切ってしまった。
収穫は鹿の皮が3つに角が4つ肉が5つで兎の皮が5つに肉が7つだ。肉は絶対にドロップするらしいので今の所は食糧難にはなりそうにもないほど肉を持っている。少しぐらい売ってしまってもいいだろう。
鹿を探して少し奥へ入りすぎたため村に帰るのにはもう少し時間がかかるだろう。
村の中心部まで戻ってきた俺は、昨日との様変わりぶりに少し驚いている。
理由は単純で、昨日はいなかった生産系プレイヤーと思しき露天商が所狭しといたのだ。
「これは中々壮観だな。」
ちょっとだけ露店を眺めることにした俺は、取り敢えず近くの店を覗いてみる。
「いらっしゃい!いいもの揃ってるから見て行ってくれ。」
覗いた店は片手剣を主に扱う鍛冶屋のようだ。
ナイフがあればいいんだが、見た感じでは残念なことに取り扱っていないようだ。
「ナイフは取り扱ってないですか?」
ここに出てないだけかもしれないので一応聞いてみる。
「あ〜スマン、需要があまりないんで俺のところでは作ってないわ。」
じゅ、需要がないだと。
ど、どういうことだってばよ。
「ナイフはな対応するジョブの人気がなくて売れないんだよ。ナイフメインのジョブは盗賊なんだが、活躍できるはずの迷宮がβ版ではなかったせいで、今回も人気がないみたいなんだよな〜。他にも昔は弓使いにも需要があったんだが、そっちも地雷ジョブってことで完全に需要がなくなっちまったんだよな〜。」
ああ、こんなところにも弓不遇の風が吹く。
「ありがとうございます。」
とりあえず別の店も見て回ることにする。もしかしたら、掘り出し物があるかもしれないし。
「ありがとうございました。」
とりあえず半数ぐらい回ってみたが、掘り出し物は見つからなかった。というか、自分のものじゃないアイテムは見た目と名前ぐらいしか分からないからいちいち店主に聞かないといけないのが面倒くさい。鑑定専用のスキルもあるみたいだし、取ってみても便利かもしれん。
愚痴を言っても仕方がないし次の店に行ってみよう。
「いらっしゃい。好きなのを見て行ってね。ついでに買って行ってくれるとうれしいな」
次の店は若い男がやっているこじんまりとした駆け出しって感じだった。
とりあえず品物を見てみる。
ぱっと見たら他の店と余り変わらないが、少しだけ気になるものが売っていた。
ただの糸に見えるが、両端に輪が作られている。ひどく見覚えがあるこれは、
「それに目をつけたってことは君は弓使いだね。」
それまで黙ってこちらを見ていた若い店主がいきなりしゃべる。
少し驚いて顔を見つめていると
「ふふふ、どうしてって顔してるね。簡単だよ、その弦って弓使いぐらいしか使わないから他の職業だと見向きもしないんだよね。」
意外と簡単なことでさらに驚くが、弦が売っているって事はここでもしかしたら弓使いようの装備がそろうかもしれない。
「よく見ているんですね。私のほかにも見ている人がいたんですか。」
まずは急がずあせらず情報を引き出そう。
情報の一つで勝てる戦も負けることあるし、情報は大切にしないと。
「今は君だけさ。」
今はって事はβ版ではよくいたのかな?
「βではそれなりに人数がいたし良くここに来たものだよ。」
やっぱり。
しかも良くここに来たって事はここで弓使いの装備が手に入るかも。
一応木工は取ってるけど本職が作ったものの方が強いはず!
これはなんとしても手に入れなければ。
「ということは、弓などを取り扱っているんですか?」
「βではやってたよ。今はやってないけど。」
おぅ、無情な一言が。
「でも、オーダーメイド方式ならやっても良いよ。その分少しお高くなるけど。」
おお、神は私を見放していなかった。
なんだかテンションがおかしい。弓用の装備なんて作ってないってそこらじゅうに言われたせいか。
「どれぐらいします?」
「う~ん、材料にもよるけど一番弱くても5万Gぐらいはするかもね。」
ご、5万Gだと。
現在の所持金は340G。
まったく足りないじゃないか。
今もってる素材を売っても絶対に足りないね。
「今はお金がないのでまた今度来ます。」
すこししょんぼりとしながら離れる。
仕方がない、弓を目指して狩りを続けよう。
「ちょっと待って!」
素材をMPCに売るため雑貨屋を目指していた俺をさっきの店主が呼び止める。
「どうかしたんですか?」
何のために呼び止めたのか分からないが、一応話は聞いておこう。
いやな話でないことを祈るばかりだ。
実はオーダーメイドなんてやってませんとか、弓なんてつくらねぇぜとか。
考えるだけで少し鬱になってきた。
「お金が足りないんでしょ?もし、素材があればそれなりに色をつけて買い取るけど?」
店主の答えは嫌な話どころか願ってもないような提案だった。
流石にこれは食いつくしかないね。
「はい、いくつか持ってますけど。」
といって、店の前へ戻る。
「よし、じゃあ、あるだけ見せてくれ。」
線の細い見た目とは違って、かなり豪快なことを言ってきた。
使わない素材はそれなりに沢山持っているのだが大丈夫だろうか。
そんなことを思いつつも、かばんという名のインベントリから使わないであろうアイテムをどんどん取り出す。
「意外と沢山倒してたんだね。」
店主が少し驚いているんだが、弓使いだし他の人のほうが多く持ってると思うんだが。
「鑑定までちょっとかかるかもしれないけどどうする?ここで待つ?それとも、他の店をまわる?」
「それじゃあ、鑑定が終わるまでこの店のものを見ていてもいいですか?」
弦にばっかり目が行っていたが他にも面白そうなものはありそうだ。
「ああいいよ。好きなだけ見て行って。君はいいお得意様になりそうだし。」
最後のほうは小さくてよく聞こえなかったが、OKをもらったし気が済むまで見ておこう。
ネーム〈銀狐〉Lv.3
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.3〉
ステータス
HP :60/66
MP :40/70
SP :34/38
STR:12
SIZ:7
DEX:20
VIT:7
INT:12
AGI:14
MND:12
LUK:6
LP :0
スキル
〈弓入門 Lv.4〉〈狩人の眼 Lv.6〉〈木工見習いLv.2〉〈簡易調理Lv.1〉〈水属性入門Lv.2〉〈発見 Lv.3〉
武器
メイン:<初心者の弓><石の矢×4>
サブ :<初心者のナイフ>
防具
頭:<無し>
体:<初心者の革鎧>
腕:<初心者のレザーアームガード>
手:<無し>
足:<初心者のレザーグリーブ>
靴:<初心者の革靴>
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈初心者のグリーンポーション〉




