プロローグ
あらすじ通り特になにも考えずに書いた小説です。
出てくる動物については諸説あると思うので私が見た資料での内容になってます。
とある晴れた日の昼下がり。
両手いっぱいに買い物袋をぶら下げた一人の青年が歩いている。
「肉屋のおじさんおまけしてくれたし、ラッキーだったな」
思わずひとりごとを呟く。
町の外れ、というか街から出てしばらく行ったところにあるそこは、人気がなく、整備もされていない獣道のような所で
それでも青年は軽い足取りで我が家へと歩みを進めていく。
やがて彼は慣れ親しんだ建物を見つける、裏手には森、その隣には湖があり、その向こうには山が広がる、残りの景色は全て草原。
色々な景観が一度に楽しめる、という意味では最高の立地かもしれないが、お世辞にも人が住むのに適しているとは言えない。
建物はその中心にぽつんと建っており、小さいながらも頑丈そうな作りをした表札には「ルース」と書かれていた。
家に入り買い物袋をどさっとテーブルの上に置くと、ぐぐーっと伸びをする。
「しかしそろそろ金がなくなってきたな…」
また仕事しないとなーと自身の財布の中身と相談をする。
でもとりあえずはと買ってきたものを整理しはじめる青年。
生活用品は極僅かなもので、あっという間に片付けを終えてしまう。
残ったものは肉、野菜、魚、果物… 食べ物ばかりであった。
それらを部屋の片隅にあった大きめのバケツに放り込むとドアを開ける。
「おーいお前ら、メシだぞー」
外に出て声をかけると、景色の遠い所にいた黒い影たちが一斉にこちらにやってくる。
その間を使って青年は備え付けてある餌台へとバケツの中身を投入する。
やがて集まってくる影たち、動物… と呼ぶには何かがおかしいモノが食事をはじめた。
例えばシカ。
立派な角があり体毛も栗色なのだが、その顔は上唇が非常に大きく、更に異様な点として後ろ脚には関節が全くない、まるで一本の棒のようになっている。
後ろ脚が曲げられずかがみにくそうなそのシカ? に青年は口元へ食べ物をもっていってやり、食べやすいよう手伝っている。
例えばトリ。
正面から見ればニワトリそのものなのだが、尻尾の部分には蛇がついており、どちらが食事をするかでもめている。
それを見た青年は別々に違う食べ物をやることでなだめる、今ではどちらもご機嫌だ。
例えばウシ。
曲がった角を持ったウシ、だが体は馬の体をしていてなんともアンバランスである。
はむはむと野菜を噛んでいたウシ? だが、気が緩んでしまい糞をしてしまったらしい、すると糞が発火し草原に引火する。
青年は慌てて火を消すと、落ち着いて食べろと注意する。
少し落ち込んだ様子だったが、それでもはむはむと食べ続けていた。
素直に動物と呼べない生き物たちが食事をするのを見て青年は頬を綻ばせる。
なぜならこれが自分にとって一番の時間。
「家族」の喜ぶ顔が何よりも大切な時間だからだ。
そんな光景を眺めながら、青年は自分の昼食をとりはじめるのだった。
あらかた食事も終わり、青年は片付けをはじめる。
お腹がいっぱいになった動物たちといえば様々で、昼寝をしているものもいれば片付けの手伝いをしているものもいる。
バケツを自分の家に持って行こうとする青年が、ふと自分の影を見るとつぶやく。
「そういえばそろそろ交代の時期か…」
そんな彼の言葉を聞いた一匹が、青年の服の端を噛む。
シカの顔と体に翼を生やし、人型の影を持つその生き物は、青年へと寂しそうな顔を向けている。
どこで聞いていたのかその他の動物たちもいつの間にか彼の周りに集まってきており、同様に寂しそうな表情をしていた。
青年はそんな彼らの様子に苦笑すると、服を掴んでいるシカの頭を優しく撫でた。
「ごめんな、でも他のみんなのことも考えてやらなきゃ」
すると、納得はいっていないようだが口を離してくれた。
それに「いいこだ」と微笑みながら再び頭を撫でる青年。
「よし! じゃあ今日は思いっきり遊ぶか!」
青年はそう言うとバケツを家の前にほうり投げ、草原へと向かって走りだした。
動物たちも彼を追いかけるようにそれぞれの声を上げながら走り、飛び出す。
こうして今日も穏やかな日々が過ぎていく。
次回からは一人称です。