第拾四話 猫と正義の試練(後編)
僕にはやらなきゃならないことが、ある。
きっかけは彼が気紛れに言った、どうってことのない一言だった。
それは、きっと甘ったるい、現実を見ていない言葉だった。
しかし、彼は言ったのだ。確信に満ちた瞳と口調で。
夢も希望もある世界は、きっと作り出せるはずだから。と。
それだけのことだった。
その言葉は、正義と愛と希望に満ちていただけだった。
だからこそ、文雄は彼女の前に立っていた。真正面から向かい合い、いつものような微笑は浮かべずに、真剣な眼差しで、少女を見つめていた。
文雄は口を開く。
「……世界っていうのは、それほど絶望に値するものじゃない。だから……君のやっていることは無駄だと思う」
夜風を感じながら、文雄は眼前の人物に語りかける。
世界の否定を統べる彼女に語りかける。
日は落ちている。月が昇っている。
舞台は屋上。フェンスに寄りかかって夜の風景と夜風、そして闇そのものをを楽しんでいる少女は、紫炎の瞳を文雄に向けた。
「うん、きっと無駄だと思う。でも……やってみたいの」
月に照らされた彼女は、黒い衣を纏っている。
見る者が見れば気づいただろう。それは鬼装と呼ばれる装束だった。
終わりを告げるために編まれた舞踏装束。始まりがあれば終わりもある。始まりの白に対して終わりの黒。どちらが欠けても、その服は成り立たない。
舞を舞い、戦うために造られた服。
……だが、どのような戦いに使われるかは、着る者の心次第。
破壊を望む少女に、文雄は問いかける。
「……なんで、無駄だと分かっててやろうとするの?」
文雄には彼女の気持ちがよく分かる。それは昔自分が秘めていたものだから。『みんな死んでしまえ』とすら思っていたから。
苦しいと……思っていたから。
しかし、それは文雄の理由であって、少女の理由は違うのだろう。
少女は、背を向けたまま苦笑したらしい。
くす、という笑い声が文雄の耳に届いた。
「うん、私にも分からない。この破壊衝動がどこからくるものなのか、私にも分からない。絶対に理解できない。山口君と私は性別以外は全く同一なのに、ここまで違ってしまったその理由を……私は理解したくない」
「…………星野」
星野海。ほしのうみ。それが少女の名前。
銀色の髪と紫色の瞳を持つ少女。
いつものように、彼女は疑問を投げかける。
「ねぇ、山口君。幸せってなんなのかなぁ?」
「………………」
文雄はなにも言わない。
少女は苦笑していた。
世界を嘲笑っていた。
星野海は苦笑しながら語る。
「映画とか、漫画とか、小説とか、そういうフィクションとかだとさ、色々なキャラクターが出きて、大抵はハッピーエンドじゃない? でも、現実には、大抵の場合不幸な人は不幸なまんま。ハッピーエンドなんてありえない。背景のように人が死んじゃうよね。文雄君なら、分かるでしょ?」
「まぁ……生きて死ぬってことは綺麗事じゃない。生まれ持った才能や、周囲の環境。人間っていうのはそういうものに簡単に左右されてしまうからね。最初から最後まで不幸な人だって……きっといる。それを否定するのは違うと思うし」
「あはは、そういう考えは嫌いじゃないよ。でもさぁ……なんて言ったらいいのかなぁ。そういう人じゃないと、幸せになっちゃいけないのかなぁ?」
そういう人。
常識の枠内に納まっている人間。
そこそこ幸福で、地獄の蓋を開けたこともない人間。
ちゃんとした生が約束されてて、足掻くことが許された人間。
残酷であることを、残酷だと認識できない人間。
ごくごく……普通の人間。
言葉の意味を反芻し、少年は答える。
「そんなことはないよ。死んだらそこで終わりなんだ。来世なんてない。あったとしても今頑張れなきゃ意味がない。頑張ればいつかきっと、なんとかなる。幸せになれる。京介さんはそう言ってたし、僕もそう思う」
「……甘い、ね」
「うん、甘いよ。でもね、現実だけで人間が生きていけると思ったら大間違いだ」
現実は甘くない。それは事実だ。
夢には届かない。それも事実だ。
それでも……現実だけでも、夢だけでも、人は生きていけない。
文雄の言葉に、少女は笑う。
「そうだね。うん、そうだよね」
星野海は、口許を緩めていた。苦笑ではなく、心底嬉しそうな微笑。
しかしその笑顔は一瞬で消え、少女は最後の疑問を口にする。
「ねぇ、文雄君。今、幸せ?」
「うん」
文雄は即答した。まるで迷わなかった。
泣きもせず、怒りもせず、少女は苦笑していた。
「……困ったなぁ」
「僕が幸せだと、君はなんか困るの?」
「うん、とても困る。だって、私はなにもかもを壊したいのに、たった一つだけ壊したくない存在があるんだもの。……困るよね、本当に」
くす、と小さく笑って、少女は少年に語りかけた。
「文雄君、賭けをしましょう」
「賭け?」
「そう。正義と愛と希望が、本当に存在するかどうかを賭けるの」
綺麗な笑顔を浮かべる少女とは逆に、
文雄は露骨に顔をしかめた。
「……いや、賭け事弱いからパス」
「相変わらずマイペースね。でも残念、もう発動しちゃいました」
「発動?」
「まず、正義の実在のために、『世界の危機』を呼び出しちゃいました」
突拍子もない言葉。しかし、文雄はそれが事実であることを知っている。
唐突に立ちくらみが起こるのを感じた。
「………………をい」
「とりあえず『世界の絶望』程度、退いてもらわなきゃ正義が実在するなんて信じられないよね? 愛と希望に関しては後々考えるから。期待しててね☆」
「ちょっと待て。なにか? もしかしてその『三つの試練』とやらに打ち勝たないと世界を滅ぼすとか……そういうことなのか?」
「そーだよ。大丈夫、ヘラクレスの四分の一だし」
「……オッズが高すぎる。明らかに僕が不利じゃないか」
「そりゃ、正義と愛と希望の実現だもの。それくらいやってもらわなきゃ」
「……はぁ」
あからさまなため息をついて、文雄は海を見つめる。
「それで、僕が勝ったらどうなるの?」
「んー、そうだね。裸エプロンでもしてあげよっか?」
「……いや、別に」
「文雄くんはどういうのが好きなの? ボンテージとか?」
「そういうマニアックな嗜好はちょっと……」
「制服? OL? 和服? メイド? ……はっ、もしや看護師? さりげなく裸にYシャツの必殺コンボっ!? しかも猫耳と尻尾までっ!?」
「………海。もしかして、獅子馬麻衣って子と仲いい?」
「誰、それ?」
「じゃあ、かがりびたろすけってペンネームの同人作家は?」
「大ファンだけど。なに? 文雄君もそっち方に興味があるの?」
「……ねぇよ」
世間は狭い。世界も思ったよりは狭いらしい。
文雄はがっくりと肩を落として、とりあえず溜息をついた。
「別に、なにもいらないよ」
「賞品が私でも?」
「……ちょっと心惹かれるけど、そういう形で女の子をもらっても嬉しくない」
「じゃあ、妹さんなら嬉しいのかしら?」
「……意味が分からないけど?」
「文雄君ってものの愛し方が人とは違うからね。大切なものには指一本触れようとはしないのよね。本当は、可愛くて可愛くて仕方がないくせに」
「………………」
文雄は否定しない。
ただ、ほんの少しだけ目を細めた。
「冬孤のことは、普通に好きだよ」
「あら、素直ね?」
「うん。単純な話になるんだけどね、妹は近年稀に見ないほどすごく頑張ってる。兄貴として成長が楽しみになるくらいにね」
その言葉に、海は少しがっかりしたようだった。
「……なんだ、他意はないんだ」
「当たり前だろが。……っていうか、実の妹だよ。妹を意識したら人間として終わりだよ」
「血が繋がってないとか、そういう燃える設定はないの?」
「ねぇよ。あったら僕が困るっつうの」
ツッコミを入れて、文雄は深々と溜息をついた。
彼女と話しているといつもこんな感じだ。
「ったく……相変わらずだね、星野。なんでもかんでも首突っ込んで壊したがる所は全然変わってない。いい加減にしないと、正義の味方に倒されちゃうぞ?」
「それを心配して、こうやって駆けつけてくれた文雄君の心配性も変わってないよ」
くすくすと笑いながら、星野海は文雄を見つめる。
「ねぇ、文雄君。最後にひとつだけいい?」
「なんだよ?」
「君が本当に好きなのは、だれ?」
初めて、沈黙が落ちた。
文雄は少しだけ考えて、噛み締めるように考えて、
偽りない本心を、きっぱりと言い切った。
「さあね」
世界の危機襲来、一時間前。
「ふーん? ってことはなに? ククロは今、このフェロモン垂れ流しの変な女と一緒に住んでるってコト? っていうか、人間に飼育されてるってことなのね? 紐とか、首輪とかはまぁ犬としては恥かしくはないんだろうけど、それでもなんていうかこの女だけはやめといたほうがいいと思うよ? なんでかっていうと、年増っていうかとりあえず若くないから。あたしから見ればおばさんって感じよね」
「いや……えっと、ファリ」
「見れば分かるでしょ? 肌の艶、毛並み、骨格に体格に容姿、ありとあらゆる面であたしが勝ってると思うの。ククロはなんていうかまだ若いから分からないだろうけど、性格やら趣味なんて二次的なものなの。顔。顔よ。顔が全てなのよ。なんでかっていうと美人は三日見れば飽きるっていうけど、全然そんなことはないのよ? むしろ、醜女(しこめ。現代語訳:美しくない女の人のこと)は三見で飽きるわ。つまり、あたしを選ばない道理がないっていうか、ぶっちゃけ結婚しよう?」
「だから……その」
おーおー、困ってる困ってる。
時々いるのだ、機関銃の一斉掃射のようなたたみかける口調で相手に有無を言わせない女。
とりあえず、こういう手合いは相手の話を聞いてない。むしろ聞く気がない。
話し上手は、決して聞き上手にはなれないという典型のような女だ。
いや、女というより、雌狐か。
その女は赤毛の狐である。狐神族第十ニ柱、コリス=アセンスト。その狐に狙われた獲物は決して逃げられず、確実に仕留められるという某神話の、ある魔槍のような逸話を持つ狐。
……生まれながらのすとーかーというわけだ。
と、百メートルほど離れたところから観察していると、ククロがこちらに向かって叫んできた。
「ファ、ファリエル、ちょっ、そんなところで見てないで助けろっ!」
聞こえない聞こえない。私は関わらないぞー。
後々面倒なことになりそうだしな。多少の暴言は我慢しよう。
「ちょっとククロ。まだあたしが話してるんだからね? それにファリエルって、あの人神族第八柱、猫舞踏神ファリエルのこと? 無節操の八方美人、暴虐無人の八面六臂で世界を半壊させて救ったような、とんでもない潰し屋じゃない。駄目よ、そんな危険物と関わっちゃ」
……いや、そんなことをやった記憶はないが。
ちなみに、暴虐無人ではなく傍若無人である。
「騙した男は数知れず、とりあえず若い男を見たらくっちゃうことしか考えてないような色情狂でもあるんだから。噂によると、昔、最強を極めてたっていう猫神族第三柱の英雄もあの女に騙されて『ナレハテ』たって……」
その言葉を、私が認識するより早く、
ドゴッ!
狐は吹き飛び、地面を転がった。
もちろん、蹴りつけたのは私だ。
ククロは言うまでもないが、蹴りつけた私自身が驚いていた。
さてさて、どうして私はいらぬ面倒ごとに首を突っ込んでしまったんだろうか。
回答は、あまりにも簡単すぎた。
私は……怒っていたのだ。
起き上がりつつある狐に、私は目を細めて告げた。
「おい、狐。私への暴言は我慢するが、『あいつ』への暴言は許さん」
「ふーん? 泥棒猫がそういうことを言うんだ?」
コリスはにやりと口許を緩めている。おそらく、『あいつ』に関しての情報が私の弱点だと知っているのだろう。それは否定しない。否定する気もない。
だが侮ってもらっては困る。こちらも弱点は握っているのだ。
私も、狐と同じくにやりと口許を緩めた。
「ああ、前妻どころか相手にもされなかったすとーかー風情に、現在の本妻と認識されるのも仕方ない。それは私の美貌が悪いのだから甘んじて受けよう」
「……なんですって?」
「ふふ、まぁお前程度の知能の足りない狐をククロが相手をするわけはないな。……ククロ。ほら、行くぞ。この女の目の届かないところでいつも通りに卑猥なことをしよう。じゃれ合いとか、子作りとか」
『なっ!?』
驚いた声は二つ。コリスとククロ。
うーむ……この程度で驚くとは、若いな。
二人とも、強さは合格ラインだが経験値が足りん。
にやにや笑いながら、私はククロの首に腕を回す。
「ふふふ、それとも見せつけてやりたいか? ククロはどうしたい?」
「いや、えーと……あの、その」
ククロはものすごく困ったような顔をする。
なにかを必死で堪えているような、そんな顔だ。
分かりやすく言うと『おあずけ』と言われて、長時間放置された犬の顔。
なんとなく愛くるしいあの表情だ。
そんなククロを見かねたか、コリスが口を挟む。
「ちょ、ちょっとあんたっ! いい加減に……」
「くっくっく。どうした雌狐。 嫉妬か? みっともない、実にみっともないぞ。ククロの前妻と聞いていたからどんな奴かと思えば、結局はその程度の女だったというわけか。ククロが前妻であるお前から私に乗り換えたのも頷ける。いや、相手にもされなかったのだからこの場合は『前菜』と言うべきかな?」
「っ!!」
コリスの表情が屈辱に歪み、その両の瞳は私を睨みつける。
「どうやら……貴女とあたしは相容れない存在らしいわね?」
「やれやれ、今さらなにを言っている?」
そう、本当に今さらだ。
ククロのことがなかったとしても、この狐と私が相容れることなど在り得ない。
こいつは、私の夫を侮辱したのだ。
「一つだけ、言っておく。私はお前のことなど心底どうでもいい。ククロとよろしくやりたければ勝手にやってろ。しかし……これだけは断言しておく」
目を細めて、私は、告げた。
「あいつは最後まで戦った。そして今も戦っている。それを侮辱することだけは絶対に……私の命を賭して、絶対に許さない」
空気が、凍る。
その時私がどんな表情をしていたのか、私には分からない。
ただそこに在ったのは純然たる殺意。
あいつを『ナレハテ』呼ばわりすることだけは、絶対に許さない。
それは、私が決めたルール。今まで破ったことだけはない掟。
だから私は目を細める。目の前の敵を……容易く殺すために。
が、それは寸前で食い止められた。
「相変わらずだな、ナムサ=オーレリア。しかし、それは少々大人気ない」
圧倒的な声と威圧感。背中越しにも感じられる存在感。
私はそいつを知っている。その、青い鳥のことを知っている。
振り向いて、私は口許を綻ばせた。
「久方ぶりだな、マスター。息災だったか?」
「なに、いつも通りさ」
そこにいたのは、青の体と翼を持つ一羽のペンギンだった。瞳の色は蒼穹であり、身長は一メートル三十センチ。眼元走る大きな傷。ずんぐりむっくりとした体は、鍛え上げられ、誰よりも強靭だ。
鳥神族第一柱、マスター=ブルースカイ。
海を飛ぶように泳ぐ、青の魔法使いにして、世界最強の男。
その短い足と空を飛べぬ翼で、あらゆる害悪を打ち払う鳥。
ペンギンを目の当たりにして、私は懐かしさに、思わず笑っていた。
「確かに、大人気なかったか。しかし……まぁ、夫を侮辱されて怒るのは、妻としては正当な怒りだと私は思う」
「先達として忠告しておくが、若い連中の戯言に耳を貸すな。噂は所詮、噂でしかない。後輩の無責任さを許容するのも先達としての役割だぞ?」
「ああ、そうだな。それはそうと日向に彼氏ができたぞ」
「………………どこのどいつだ?」
いきなり前言を忘れているペンギンだった。
やれやれ、相変わらず……自分の娘にはとことん甘い。
男の業というやつだろうか?
まぁ、それはどうでもいい。今重要なのは、
このペンギンが、わざわざ私の前に姿を現したということ。
「それで……また世界の危機か? 魔法使い」
「ああ。今回はちとまずいことになってな。お前と、そこの若いのにも協力してもらう。人手はあればあっただけいい。とにかく、敵の数が多くてな」
「やれやれ……面倒なことだな」
「仕方ないさ、同志よ。我ら正義の味方は、」
ペンギンは、にやりと不敵に笑った。
「『悪』を倒すために存在しているのだからな」
ほんの少し、神話の話をしよう。
昔々、一人の男がいた。男は根っからのお人よしで、自分以外の全てを救うために、世界を汚染するありとあらゆる『負』を自分に流し込んだ。自分が犠牲になって、世界を救おうとした。しかし……男にとって計算外だったのは『負』が自分を苗床にして『具現化』してしまったことだ。
なんのことはない。濃度が薄ければ無害な毒でも、濃度を濃くすれば有害になる。それと同じ程度の簡単な問題だ。男がやったことは、全世界で受け持っていた『負』を、人一人の体に『凝縮』したということだ。そして……『負』は男を『絶望』そのものに変質させてしまった。たかが『概念』という形のないものにに留まるはずだったそれは、肉という鎧を持ち、『絶望』という概念が持つ性質のままに活動を開始した。
絶望そのものに成った男は、自分自身の世界を滅ぼして、他の世界を滅ぼすために自分の分身を飛ばした。それは『ODIO』と呼ばれる絶望の種子。『憎しみ』の名を有する、世界最悪の種。生物の体に寄生し『負』を吸収して生きる寄生植物だ。だが、大半の種子は発芽することなく寄生した存在と共に朽ちていく。しかし……稀に、その生物が世界を憎み、怨み、嫉み、ありとあらゆる絶望を感じた時……『ODIO』は花を咲かせ、世界を滅ぼす。
私たちの敵は……そういう存在なのだ。
デブリ(宇宙に廃棄された人工衛星などのゴミ)の影に隠れるように、地球の周回軌道にそれはあった。
銀色のシルエットに流線的なフォルム。武装は一切なし、エンジンは高速仕様の最新型精霊軌道回路。乗組員は六人。必要ないのに取り付けられたメインマストには、なぜか可愛らしい少女の絵が描かれている。それは『断界号』の副船長でありながら、全世界で最も優しい少女の顔。我らが正義の味方ならば、彼女は希望の導き手。なにも知らぬが故に、何者にも優しい少女の微笑み。
それを守ることが、翼を持った飛べない鳥が願ったことだった。
鳥神族高速機動艦『天戒号』。鳥神族が有する船の中で最速を誇る宇宙船である。武装はついていないので戦艦ではない。基本的な役割は巡回偵察なのでそれほど大きくもない。一般的なクルーザーくらいの大きさだろう。
目的地は太陽系第四惑星、火星。
船に乗っているのは、私、ククロ、コリス、マスター、そして白い髪と赤い瞳を持つ、奇妙な青年だった。その青年は今時の若者のようなふぁっしょなぶるな服装に身を包んで、穏やかな微笑を浮かべている。
しかし……どこかで会ったことがあるような気がするのだが。
その青年は、私たちが入ってきたのを見ると、ひらひらと手を振った。
「よ、ククロとその相方。久しぶりだな」
「ああ、久方ぶりだな……」
ククロと知り合いらしいが、なぜかククロの歯切れは悪い。
男は少しだけ顔をしかめた。
「なんだよ、つれないな。いつもなら酒を酌み交わして一晩中付き合うくらいは平気でやるだろ? それともアレか、両手に花っていう状況がそんなに……」
中途半端な所で青年は言葉を切り、じっと私のことを凝視する。
はて……そこまで熱烈な視線を向けられる覚えはどこにもないのだが。
「……私がなにかしたのか?」
問いかけると、青年は顔を真っ赤に染めた。
「あぁ、いや、そうじゃなくてだな……アンタ、もしかしてファリエル?」
「確かにファリエル=ナムサ=オーレリアだが……そう言うお前は何者だ?」
「あ、これは失礼。お互い、人間の姿で会うのは初めてだったな。俺はシロウ、シロウ=エクスキュロット。以前会ったことがあったと思うんだが」
ああ、なるほど。確かに以前、挨拶に行ったことがある。
畏怖堂々とした兎。シロウ=エクスキュロット。
その兎は、にっこりと嬉しそうに微笑んだ。
「いやぁ、人間になってもやはり美人は美人だな。素直に感心するよ」
「……まぁ、世辞でも素直に受けておこう」
「いやいや、世辞じゃないって。どうだい、この後お茶でも」
「魅力的だが遠慮しておこう。シロウと一緒にいると、理性を失ってとんでもないことになりそうだからな」
「ははは、そりゃ光栄だ」
朗らかに笑うシロウだったが、それはきっと勘違いだ。
私は笑いながら、むくむくと湧いてくる衝動を抑えるのに必死だった。
その衝動をあえて言うなら、そう……嗜虐心というやつだ。基本的に兎と肉食動物はとことん相性が悪い。狐は言うに及ばず、猫もその例にもれることはない。
例を上げると、猫の玩具に鼠の形を模したものがあるが、あれには兎の毛が使われていたりする。猫を飼っている人間なら分かるだろうが、その玩具を前にした時の猫の目の輝きは尋常ではない。
そして、空気の読めない男は親友の肩に手を置いた。
「ククロの周りにはいい女がいて幸せだなァ。実に羨ましいぞ」
「………そうだな」
ククロは視線を微妙に外しながら答える。
そう……シロウ以外の全員がとっくに気づいている。
その美女たちは、舌なめずりをしながらシロウのことを見つめていることを。
やれやれ、全く、本能というやつは本当に面倒だ。
と、その時。
「そろそろ説明を始める。全員口を閉じろ」
鶴のならぬ、ペンギンの一声で全員が口を閉じた。
それを確認した後、マスターは口を開いた。
「この船の機動力なら三十分で火星に到着する。しかし、その前に状況の説明だけはやっておこう」
マスターは歯切れ悪く切り出す。
「二時間ほど前、火星軌道に得体のしれない物質が多数出現した。おそらく……完全体ではないが『ODIO』だろう。これは今までのデータが立証している。しかし、火星には生物は住んでいない。どこから『ODIO』が出現したのかは、現段階では不明と言わざるを得ない」
「敵の数は?」
「星が一つ飲み込めるほどだ」
マスターがさらりと言った言葉に、コリスとククロの頬がもろに引きつる。
おそるおそるといった感じで……コリスが手を上げた。
「あの〜、もしかしてあたし達はそんなのと戦わなきゃならないんですか?」
「悪いが、そうなる。この星には現在『龍』の守護はついていない。教師候補は選出されているが……その教師候補、山口文雄も未熟だからな。あと十五年は我らがこの世界を守らなくてはならない」
マスターの言葉に、コリスは顔をしかめる。
そして、青白い顔のままククロに話を振った。
「山口って……ククロの飼い主さんのことでしょ?」
「まぁ……そうだが」
「……おかしいと思ったのよ。ククロの家の近くに、いわくつきの神族がなんの争いもなく平和に暮らしてるんだもの。ククロにシロウにタマエストに、猫神族の厄介者、ファリエル。ここまで揃ってて厄介ごとが起こらない方がどうかしてるのよ。しかもマスターやらトーコやら、魔法使いの連中も絡んでるみたいだし」
……ふむ。コリスの奴どうやら阿呆狐かとも思ったが、慧眼はあるようだ。
まぁ、他の連中はともかくククロと私は元々あそこにいたのだが。
と、不意にシロウが口を開いた。
「とりあえず、マスター以外の魔法使いや神族の介入はねェってこったな?」
「ああ、今回参戦できる神族はこれで全員だ。他の神族は自由に行動が取れないし、他の魔法使いにはそもそも連絡がつかんし、唯一居所が分かっている黄の魔法使いたるトーコは出張、『断界号』がオーバーホール中のため日向は参戦できず、タマエストは湯治だかなんだかで連絡がつかん」
マスターの視線が微妙に私に突き刺さる。
タマの馬鹿……こんな重要な時までのんびりしやがって。
後で絶対に殴ろうと心に誓った。
気を取り直して、私は口を開く。
「まぁ、気にすることはない。たかが星一つ覆い尽くす程度の『絶望』だ。我々が本気になればさしたる障害でもないさ」
「アンタやマスターにゃそうだろうけど、俺達には結構キツイもんがあるぜ?」
シロウの不満そうな声を、私は嘲笑ってやる。
「その程度、凌いでみせずになにが神族だ?」
「……ハ、上等」
私の軽い挑発に、シロウは不敵ににやりと笑う。
「これでも、戦闘回数は兎神族の中で随一なんでね。他の能力はともかく『罠』と『結界』に関しちゃ右に出るものはないと自負しているさ。もっとも、優れた能力を統率する奴がへたれてりゃどうしようもないがな」
「ふむ……私がそれだと?」
「冗談。アンタがヘタレなら、俺はボンクラだよ。精々死なない程度に俺をこき使ってやってくれ。一応使い勝手はまぁまぁなつもりだからよ」
ヒラヒラと手を振って、シロウは肩をすくめた。
やれやれ。どうにも……神族には食えない奴が多いな。
「それで、マスター。この危機をどうやって切り抜けるつもりだ?」
ペンギンに聞くと、奴はにやりと笑うだけだった。
「ファリエル、お前ならどうする?」
あまりにも自明なことだったので、私は即答した。
「数が多いが、一体たりとて地球に向かわせるわけにはいかぬ。よって、火星に巣食った親玉を私が、雑魚の殲滅には制圧力のあるマスターが適任。同時に討ちもらした雑魚の掃討には、機動力と多面的な敵の捕捉が必要となる。つまり、ククロの鼻とシロウの罠がここで生きる。そして、私を無傷で火星に向かわせるためには突破力のある力が必要となる。狐であるコリスは私と一緒に火星行きだな」
「正解だ。さすが猫舞踏神」
ペンギンは嬉しそうに笑い、面倒な説明の手間が省けたことに感謝する。
……やれやれ、面倒なことはいつも私の役目だ。
そう……あいつが死んでからは、いつも私の。
「作戦の決行は1800時だ。それまで、各自自由行動とする」
マスターの宣言を聞きながら、窓の外に映る私は黒と星の空を見つめていた。
うたかたの夢を見た。
兄が失踪してからも、私の生活は変わることはなかった。
多くの迫害と、少ない救い。私を認めてくれる猫は決して多くはなかったけれど、それでも私はそこそこ平和に日々の暮らしを送っていた。
そんな、ある日。
「ねぇねぇ、ファリエルちゃん。今ものすごい有名人が来てるよっ! なんと、猫神族第三柱のブライオン=ライム=オーレリアだってさっ!」
「いや、興味ないし」
「……うわ、女の子らしくなーい」
「女らしくって言われても困るんだけど……」
「もう、分かったよ。私一人で行ってきますよーだ」
「はいはい」
その頃の私はそれなりに若かったと思う。まぁ、先達に敬意を払うことを忘れた若さではあるのだが。
タマが出かけてから三十分ほど後、足音に私は目を開けた。
そこには、見知らぬ黒猫がいた。
「こんにちはお嬢さん。もしかして、お一人ですか?」
「一人だけど……なにか御用ですか?」
「いえいえ。もしかして、僕の顔に見覚えとかありません?」
なんというか……猫にしては妙に馴れ馴れしい猫だった。
当然、私は目を細めて黒猫を睨みつける。昔から馴れ馴れしい生き物は信用しないことにしていたからだ。
「………貴方、馬鹿?」
「ははは、そうかもしれないね」
その黒猫は、目を細めて私の隣に座った。
「君、ファリエルさんだよね?」
「そうですけど、なにか?」
黒猫が私の名を知っていたことは珍しいことではなかった。
犬と猫が人間に成り、その二人から子供が生まれた。
それが私と兄だった。猫族の間では有名な話で、私たちは当然のように迫害された。兄はそれに耐え切れずに人間になってどこかに行ってしまった。兄は、私の尾が二つに分かれる頃に迎えに来ると言っていて……私は愚直にそれを信じていた。
……この時の私は、そんな風に呑気に考えていた。
と、その黒猫はいきなり奇妙な事を聞いてきた。
「ファリエルさん、貴女は『正義』ってなんだと思う?」
「は?」
「だから、『正義』ってなんなんだろうねぇ?」
黒猫は、どうやら本気らしかった。真っ直ぐに私を見つめてくる。
私は顔をしかめて黒猫を見つめ返す。
「その質問に、意味はあるんですか?」
「ただの興味本位。答えたくなければ答えなくてもいいよ」
それはある意味、挑発的な言葉だったのかもしれない。
本来なら答えずにそのまま無視すればよかったのだが、若かった私は、思わずその黒猫を睨みつけて、きっぱりと断言した。
「『正義』というものは、自分にとってしか意味のないものです」
「ふぅん?」
「なぜなら『正義』とは、自分の心に秘めるものだから」
私は、真っ直ぐに……痛いほどに、黒猫を見つめる。
「貫かなければならない、自分の誓約。心に秘めた一番の約束が『正義』です」
少なくとも、私はそう思っている。そう思いたい。
私だって……『正義』を持っているのだから。
黒猫は少しだけ目を細めて、私に問いかける。
「君は、正義の実在を信じるかい?」
「正義は在ります。誰の心にも」
「自分の正義が、相手と違ったとしても?」
「正義とは己の心に秘めるもの。なら、他人と違って当然です」
「もしも……自分の正義が間違っていた時は?」
「死んでから考えます。自分が正しいと思った事を曲げる気はありません」
「君が信じる正しいことっていうのは、なに?」
「私を心から信じてくれる存在を守り抜くことです」
目を逸らさず、甘えず、屈さず、脅えずに、私は黒猫を見つめる。
黒猫は、私を見返しながら、なぜか満足そうに微笑んでいた。
「ファリエルさん」
「なんでしょう?」
「僕と結婚してください」
その言葉は、唐突だった。
しばしの沈黙。私はその言葉の真意を理解しようと試みて、
「………………………………………………は?」
混乱して、間抜けな返答しかできなかった。
夢から覚めて、私はゆっくりと目を開ける。
仮眠は二十分きっかり。五分で体調を整えて、深く息を吸う。
「……よし」
なんだか、昔の夢を見た。
きっと私がたくさん幸せだった頃の夢。
私が兄を裏切り、正義になる前に幸せをくれた猫の夢だった。
兄は、人間として生きることが幸せであることを教えてくれた。
でも、あいつは猫として生きることも幸せであることを教えてくれた。
幸せだったから……私は正義になろうと決めた。
私が戦う理由なんて、たったそれだけ。
それだけで、十分だ。
「古の精霊に願う。我は必勝を約束する存在にして舞踏神」
着替えは一瞬で終わる。
白い『舞装』。五つの『武鈴』。そして『天輪剣』。
いつもの武装を肌で感じながら、私は戦いの場に向かう。
と、部屋を出たところで、背後から声がかかった。
「ファリエル」
振り向くと、そこにはククロがいた。
なにやら不満そうな顔をしているが、はて……なにか不満でもあるのだろうか?
「どうした、ククロ。そろそろ作戦開始の時間だぞ。腹が減ったなら後に……」
「……お前、俺を一番安全な場所に配置しただろ?」
安全な場所というわけではない。討ちもらした敵を始末する掃討戦も、決して安全とは言えない死地には違いないのだが……。
「俺では、お前の隣で戦えないのか?」
ククロは、真顔でそんなことを聞いてきた。
苦笑しながら私は答える。
「役割の問題……と言ってもお前は納得しないだろうからはっきり言っておく。確かに今のお前では、私の隣に立つのは不可能だ。少なくとも、あと十年は要る」
それは単純な、実力の問題。
ククロは弱い。並の神族と比べれば強いが私よりは確実に弱い。
自分よりも実力の劣る男に、背中は預けられない。
そのことを、ククロが最も痛感していたのか。
「……そうか」
黒い犬はそう言って、顔を伏せた。
どうやら……落ち込んでいるらしい。
「なに、落ち込むな。お前ならあと十年もあれば、私の隣で戦うに遜色ない実力を持つことができるさ。そう急ぐことはない。ゆっくり成長していけば……」
「ゆっくりでは駄目なんだ」
ククロは、真っ直ぐに私を見つめていた。
「俺には、守りたいものがたくさんあるんだ。あの家のみんなに、同じ群れの連中、そして……お前もそうだ」
「………………」
そこにあったのは、厳然たる決意だった。
世界の危機を前にして、強くなりたいと願う男の顔があった。
「努力はしてきたつもりだった。しかし、それでも足りない。届かない。今日お前と全力で走って分かった。お前は……俺とは違う領域にいる。強さの次元が全く違う。そこまで極めないと、みんなは守れない。そう痛感した」
「ククロ……」
「俺は死なない。ファリエルより強くなるまで、絶対に」
ククロはそう言って、背中を向けた。
「だから、お前も絶対に死ぬな。俺がお前を追い越すまで、絶対に」
その言葉は……いつかどこかで、私が言った言葉だった。
立ち去る犬の背中を見つめる。まだまだ甘い青少年だと思っていたが、最近はそうでもないらしい。少しだけ……頼れる男の背中になりつつあった。
顔を伏せて、目を閉じて、私は口を開いた。
「ククロ」
「なんだ?」
「お前の『正義』とは、なんだ?」
「みんなが幸せに暮らせる日常を守ること。それが、俺の『正義』だ」
犬らしく、ククロは甘ったるい正義を断言した。
「………そうか」
納得しながら、私はゆっくりと口許を緩める。
今……ようやく理解できた。
その甘ったるい正義が、あの英雄の耳にどれほど心地良く響いたことか。
ああ、そうか。そうだったんだ。
あの人が私を幸せにしてくれたように、
私も、あの人を幸せにできていたのかもしれない。
一緒にいる間はまるで猫の夫婦らしくなくて、始終べったりでとてもうざったくて、『僕はファリエルのことが一番好きだから』なんて甘ったるいセリフを恥かしげもなく言って、それをわずらわしく思っていた反面……震えるくらいに嬉しかった。
だから願った。
私も、この人のようになりたいと。
みんなが幸せでいられるようにと。
そんな、誰もが描く正義を……心に抱いた。
その正義で願うことはただ一つ。小さくてとても大きなこと。
みんなが、幸せになれますように。
知らず、私は微笑んでいる。
いつかのように、あの人に向けていた微笑を浮かべていた。
「ククロ、死に物狂いで生き残れ。生き残れたら私が直々に鍛えてやる」
「………ああ。分かった。お前も死ぬなよ?」
「ふ、誰にものを言っている」
そして、いつものように、私は微笑を消し、不敵に笑う。
「私の名前はファリエル=ナムサ=オーレリア。猫にして人の舞踏神にして、誰かを守るために戦うことを誓った、世界最強の守り手だ」
いつものように、私は名乗る。
さぁ……それじゃあ行こう。
絶望と悲しみと誇りに満ちた戦場に。
我らの、故郷に。
猫と正義の試練(後編)……END
次回、猫と正義の証明者に続く。
おまけ。
山口冬孤の日記、一ページ目。
今日から日記をつけようと思い立つ。なんとなく、新しい事を始めてみようと思った次第なのだけれど、日々をつづっただけの普通の日記になるだろう。別に恥かしくもなんともない日記になると思う。
最近は料理に挑戦。今日も自作のサンドイッチを昼食の時に慶子に味見してもらったところ、「冬孤、貴女ってちょっとアレですよね。なんつーか、えーと……料理の時に味見をしない女でしょう?」と言われた。とても腹が立ったけど、それは事実だった。やっぱり卵を思い切り『ぐしゃり』と殻ごと叩き割ってしまったのが敗因か。塩、コショウを入れ忘れたのも多少はあるだろうし、隠し味に砂糖(大さじ五杯程度)を入れてしまったのも悪かったらしい。次からは気をつけようと思う。ちなみに、慶子はなんだかんだと文句を言いながらも完食した。
慶子はこんなにいい子なのにどうして男子にもてないんだろう? 謎だ。
本人に問い質してみたところ、「男子ってのは、ちょっと馬鹿っぽい女の方が好きなんですよ。保護欲っていうか……守ってやりたくなる『弱い』女が好まれますね。冬孤はまだしも、私はちょっとばかり世渡りが上手いから、男は基本的に寄ってきませんよ」ということらしい。なんだかものすごく含蓄がある言葉だったし、感心もした。
「まぁ、馬鹿はまともに付き合うよりコントロールした方が楽しいですしね」というセリフは聞かないことにした。
家に帰ると、兄さんがなんだか気だるそうにしていたので「風邪ですか?」と聞くと、「うーん……そうかもしれない。昨日はちょっと昔の知り合いと待ち合わせてデートらしきものをしてたからなぁ」と言ったので速攻でつねりあげた。デートとは感心しない。兄さんのくせに生意気だ。まぁ、兄さんの女癖の悪さはここ最近で急速に明らかになりつつあるので、それはそれで仕方ない。私も最近はちょっと大人気なかった。ここはほんの少しだけ成長した所を見せよう。……そう、兄さんに近寄ってくる女性にむやみやたらに嫉妬するのではなくて、
一人づつ、順番に、叩き潰してやろう。
次のページに続く。
と、いうわけで思ったよりも長丁場になってしまいましたので正義の試練はまだちょっと続きます。その次は完全なギャグの予定です。お楽しみに。
青い猫には、たとえ血反吐をぶちまけて、体が裂け、魂すらも朽ち果てようとも、守らなければならないものがあった。
それを失ったとき、猫は世界の誰よりも強くなり、正義になることを決意した。
次回、猫と正義の証明者。お楽しみに。