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ウォシュ○ットの霊能力者~濡れた力は最強、すべてをシリぞける~  作者: 雪野湯


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第3話 前振りはしたので登場

――そして、下校時間。午後7時半


 作業の後片付けを終えて、端に追いやっていた机を戻し、いつもの教室の姿へと戻す。

 窓の外を見る。

 日の光が小さく残る薄明(はくめい)の空。

 空に明かりは残るが、町は街灯がなければ闇に閉ざされる。


 その闇は心の片隅に宿る恐怖を刺激し、マネキンの話を熱心に聞いていた女子生徒がそれを思い出してしまったようだ。


「なんか、でそう……」


 短い一言。だが、皆の恐怖を呼び起こすには十分すぎる一言だった。

 男子生徒の一人が声に強がりを乗せつつ言葉を返す。


「んなわけあるかよっ。ほら、早く帰ろうぜ!」


 そうして、皆は教室から出たのだが、廊下の電灯はすでに消灯しており、とても薄暗い。

 廊下の先は闇に閉ざされ、人の目では形を捉えることはできない。


 男子生徒たち、女子生徒たちは腕に鳥肌を立てるが、それを否定するかのように肌をこすり、まとまり、出入り口となる昇降口を目指そうとした。

 

 そこに――――足音が響く。


 カツン、カツンと無機質な音が、廊下の先を包む闇から響いてくる。

 誰もが息を呑んだ。

 闇から現れたのはスーツ姿。その姿は、こちらへ無機質な声を向けてくる。



「キミタチ、ハヤク帰リナサイ」


 その声を聞いて、男子生徒の一人が安堵の様子を見せるが……。

「先生? なんだ、びっくりしたぜ」

「い、いえ、ち、ちがう。手を見て!」


 多くの瞳たちが、教師と思しき存在の手に注目した。

 そこにあったのは……裁ちばさみ。


 カッシャ、カッシャと音を立てながら裁ちばさみの開け閉めを行い、スーツ姿のナニカは近づいてくる。

 恐怖で皆の足は凍りついた。

 しかし、スーツ姿のナニカの顔を見た瞬間、女子生徒の一人が感情の枷を外し、悲鳴を上げた。


「きゃぁぁあぁぁあ!!」


 スーツ姿のナニカの顔……それは人の顔をかたどったくぼみを持つ人形――マネキン!!

 悲鳴に触発され、皆はマネキンとは真逆の方向へ足を絡ませながらも逃げ出した。 

 その姿を見たマネキンが足取りを速め、追いかけてくる。


 そのとき、転入生が別の生徒とぶつかってしまい、倒れてしまった。

 マネキンは裁ちばさみを転入生へ振りかざし、意味不明な言葉をぶつける。


「ヒメイ、ウレシイ、ミンナ、ボクヲ、ミテイル」


「チッ――!!」

 私はとっさにマネキンへ蹴りを入れた。

 しかし、マネキンはわずかにたじろいだけで、ほとんど効いちゃいない。


「クッ、とてもじゃないが敵いそうにないな。おい、早く立て! 逃げるぞ」

「それが……転んだ時に足を痛めたようで……」

「なに!?」

「だから、私のことはいい。君は逃げろ」

「馬鹿なことを言うな!! 肩を貸してやるから一緒に逃げるぞ!」

「……すまない」



 私は彼を抱え上げるように肩を貸し、小走りでここから逃げ出す。

 後ろからはマネキンの奇妙な喋り声が響く。


「トモダチ、ユウジョウ? ユウジョウ? ナイ……ナイナイナイナイナイナイ!」

 マネキンは気でも違えたかのように激しく首を振って、否定の言葉を繰り返している。

「いったい何だというのだ? だが、逃げるなら奴が足を止めている今の内だな」


 廊下を歩み、曲がり角のすぐ先にあった理科準備室の扉を開き、そこへ転入生を隠すことにした。

「ここで声を潜め、隠れていろ。私があいつの気を引く。その間に隙を見て逃げ出せ」

「だが――」

「問答は無しだ。そんな余裕はない」


 準備室内にあった掃除箱から箒を取り出し、それを武器とする。

 そして、準備室の扉を閉めて、後ろを振り返る。

 するとちょうど、曲がり角からマネキンが姿を現しているところだった。

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