3.
〈登場人物〉
守島 朝陽(17)
元気で明るく優しい男子高校生。
黒澤友紀(21)
美大生の女の子。絵を描くことが好き。
出島雄大(26)
大卒フリーター。遊ぶことと旅が好きで世界中を旅するのが趣味。
堀田真由(32)
東京で働く会社員。疲れて休職し西表島にやって来た。
目が覚めると、4人は同じ場所で倒れていた。
一番最初に目が覚めたのは、朝陽だ。
そこは、高いビルに囲まれた街の中だった。
田舎に暮らしている朝陽にとって、恐怖すら感じるほどの高く無機質な鉄の塊の塔は朝陽たち4人の体を180度取り囲んでいた。
陽の光は入らず、薄暗いビルの隙間からかろうじて狭い空が見えた。
『どこだ‥ここ』
一番近くにいた友紀に声をかける。
女性であるため、身体に触れるのは少し怖い。
『友紀さん、友紀さん。』
すると眉間に皺を寄せながらゆっくりと起き上がった。
眠そうに目を擦っている。
『んー‥ここどこ?あれ、朝陽くん。』
『分からないんです。僕たち、西表島の森の中にいたはずなのに、いつの間にか街の中にいるんです。しかも、結構都会っぽい感じで‥。』
友紀は、周りを見渡しながらどんどん眉間に皺がよっていく。
『え‥と、ちょっとよく分かんないだけど、夢?』
状況を理解できていないみたいだ。
その話し声で、雄大と女性が目を覚ました。
『どこやここ‥』
『私、眠ってたのかしら‥』
皆、自分の置かれている状況が理解できてないのは同じようだった。
『とりあえず、交番でも行きますか‥?』
『それがアンパイやな。』
4人は、歩いてびるの間を抜けて一通りのある道へ出ると‥、そこには目を疑う光景が広がっていた。
モノレールが高速道路のバイパスのように交差し、空を覆い尽くし、街中には無人バスや無人列車が走っている。歩いている人たちは、スマートウォッチとワイヤレスイヤホンのようなものを身につけており、さらに近未来的なカラーサングラスをつけて誰かと話している人ばかりだ。
服装は、シックでモダンな服からシンプルなスポーツウェアのような機能性を重視した服装が多く見られる。一言でいうと近未来的だ。
『ここは‥どこや?東京?』
『東京にこんなところあったかしら‥』
『なんか様子変じゃない?』
皆が各々に周りをキョロキョロと見渡している。
そして、不思議に思っているのは僕たちだけじゃなかったようで‥。
ヒソヒソと話しながら僕たちの方をチラチラ見ながら話してる人が何人かいることに気がついた。
少し鋭い視線がチクチクと刺さる。
『ねえ、ひとまず。ここから離れない?人気がいない場所に行きたいわ。』
『私も‥』
お姉さんが視線に気がついたのか気まずそうな表情で声をかけて来た。それに続いて友紀も気まずそうだ。
僕もそう思うので、一旦その場を離れようとすると、急に後ろから声をかけられた。
『君たち見ない顔だね?どこから来たの?』
後ろを振り返ると、背中にPOLICEと書かれた制服を着ており、薄手のベスト、カラーサングラスと帽子を被った大柄な男性2人が立っていた。身長は2人とも180cm以上はありそうだ。とても迫力がある。
明らかに警察官だ。けど、見たことない制服。
『いやーそれが道に迷ってしまったんですよーここってどこですかねー?』
ヘラヘラ笑いながら警察官2人に声をかけて、僕たち3人の前に立ったのはデジだ。
すると警察官は顔を見合わせながら、もう一度デジを見つめた。
『ここは、東京都新宿区だよ。』
『‥へ?』
その場にいる全員が固まっている。なぜなら僕たちが知る東京都新宿区はこんな場所ではないからだ。
モノレールは新宿に乗り入れていない。
自動車でごった返して交通量が多い新宿の姿ではない。なぜなら道路には無人バスと無人の電車のみで自動車が1台も走っていないのだ。
『えっと‥』
『え、モノレールは羽田空港近辺にしかないはずですよね?』
『いつの話をしてるんだ君たちは?』
『え‥』
警察官の表情がどんどん険しくなってくる。明らかに不審者を見つめる顔だ。
『悪いけど、君たち名前は?悪いけど身分確認させてもらうよ。』
『え!免許証財布に入ってたかな‥』
『動くんじゃない!』
デジがリュックの中身を出そうとすると、鋭い声で牽制した。警察は右手の人差し指につけている指輪をデジの左肩にかざした。
しかし、何も起こらない。
すると、指輪が喋った。
『体内認証システムガ起動シマセン。不法滞在者ノ可能性ガアリマス。速ヤカニ身柄ヲ拘束シテクダサイ。』
『『『『えっ‥』』』』
その場に静寂と同時に不穏な緊張感が走った。
そして、その場にいる全員の頬に冷たい汗が流れた。