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48 チキン南蛮と宴の後で

「たべる!」

「お? 新しい料理だな! 鳥肉のようだが、どれどれ……」

「この白いクリームは何でしょう? 初めて見ますね。チーズでしょうか?」

「いただきます」


 フアナ、ホアキン、フェリシエンヌ、そしてエステルがチキン南蛮をフォークで取っていく。


 そして口に含んだ!


「おいひい! おいひいよお!」


 おお!? フアナの「おいひい」が二連続で聞けるとは! これはフアナにぶっ刺さりみたいだな!


「うううううううううううううううまあああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ホアキンにいたっては吠えた!?


「タルタルソースのまろやかさにタレの甘酸っぱさが合わさって、至高の味へと昇華している! 鳥肉もジューシーでうまい! まるで鳥のジュースを飲んでいるようだ! そして衣! 衣はサクサクを超えてザクザクだ! なんだこれは!? たしかにタレが染み込んでいる。だが、衣がザクザクなのだ! どんな魔法を使ったんだ!? そしてショウユだ! バラバラになりそうなすべての味をショウユが確かに繋ぎ止め、一つの完成された味へと押し上げている! やはりショウユだ! ショウユはすべてを解決する!」


 こいつのショウユ信仰はどこまでいくのだろうな……? その熱量はもはや計り知れないほどだ。


 ガタッ!


 突然、椅子を倒しそうな勢いでフェリシエンヌが立ち上がった!?


「こ、この白いソースはいったい何ですの!? チーズのようにコクがあってまろやかで、くどくないように酸味もあるなんて!? それに、これは野菜? 卵? カリカリとした食感や柔らかい食感まで! いったいどれだけの顔を隠しているの!?」


 フェリシエンヌはタルタルソースに驚きのようだ。わかるわかる、オレもタルタルソース大好きだしね。オレも初めてタルタルソースを食べた時は似たようなことを思ったよ。


「おいしい……」


 その隣では、エステルが涙を流しながら口をもぐもぐさせていた。


 あのー? おたくのお姫様、お隣で荒ぶってるけどいいの? 従者としてフォローした方がいいんじゃない?


 まぁ、あのマルブランシェ王国の影とまで謳われたアギヨンの最高傑作が任務を忘れるほど舌鼓打っていると考えれば悪い気はしないけどさ。


「おかわり!」


 いつになく覇気のある声でフアナが叫ぶ。


 見れば、お皿にあったチキン南蛮は、付け合わせのキャベツの千切りまで綺麗になくなっていた。


「バルタザール、次だ! 早く次を持ってこい!」

「おかわりですわ!」

「その、厚かましいようで恐縮ですが、私も……」

「ああ、待ってろ。すぐに持ってくる」


 オレはみんなが喜んでくれたウキウキ気分で鍋の前へと戻るのだった。


 やっぱり自分の好きな物を他の人も好きなってくれると嬉しいよね。それが自分の作った物となればなおさらだ。


「うみゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「なんだこいつは!? いろんな味がいっぺんに押し寄せて!?」

「この白いのがマジでうまい! 鳥肉との相性がヤベーよ!」

「この不思議なクリーム、とってもおいしいわよ!?」

「合わせて食べるともうすごいわよ!」

「コケ、コケーッ!?」

「クリーミーで、コクがあって、酸っぱくて、ちょっと辛くて、甘くて、もう何味かわらないのにすっごくおいしいわ!」


 虎族のみんなにもチキン南蛮は好評のようだな。手間暇かけて作った甲斐があったってもんだ。おかげであんなにあった鳥肉もタルタルソースもなくなっちまったよ。また暇を見つけてタルタルソース作っておかないと。


「お前は何がよかった? おいらはチキン南蛮ってやつだ!」

「おらはゆーりんちーがよかったなぁ」

「やっぱシンプルに唐揚げよ!」


 なんだか鳥料理の派閥が生まれてしまった気がするが、気にしないでおこう。



 ◇



 宴もたけなわを通り過ぎ、ポツポツと家に帰る人々が増えてきた。みんな満足した顔をしているのは嬉しいものだな。お腹を摩っている人が多いのは、食べ過ぎだろうか?


「ごちそうさま。おいしかった」

「本日はご馳走になりました。とてもおいしかったですわ。比べるものではありませんけど、あなたならマルブランシェ王国の王宮料理人も務まるでしょうね」

「十分に頂きました。ありがとうございました」


 フアナ、フェリシエンヌ、エステルも家に帰っていった。今日は二人ともフアナの部屋に泊まるらしい。フアナもわくわくした顔をしていてとても和んだ。やっぱり本格的にスクショ魔法を作らないとな。


「今日はありがとうございました」

「いいのよ、私たちも楽しかったし」

「そうそう。レシピも教えてもらっちゃったしね」


 片付けは明日となり、手伝ってくれた奥様たちとも別れた。


「楽しかったなぁ」


 忙しかったけど、終わってみれば確かな充足感があった。やっぱり、人々の喜ぶ顔はいいものだな。


 そんな解散された会場に最後まで残っていたのは、意外なことにホアキンだった。


「ホアキン、そろそろ帰るぞ」

「バルタザール、お前に少し話がある」


 ホアキンは腕を組んで真剣な表情を浮かべていた。

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