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45 唐揚げ祭り②

「おいひい……!」


 フアナの「おいひい」いただきました!


 いつもは表情の乏しいフアナが、満面の幸せな表情を浮かべて食べてくれるんだぜ? こりゃ料理人冥利に尽きるってもんだろ!


「うまい! さすがショウユだな! この香ばしい香りと味が、鳥肉を一段上の存在にしている! そして、これはショウガとニンニクか? ショウユから顔を出すこれらの香味野菜もいい仕事をしているな! しかし、なんといっても鳥の脂とショウユの相性が抜群にいい! そこにレモン汁をかけると……! 適度な酸味が加わり、味が引き締まるだけではなく、余分な脂っぽさが浄化されるのだ! なんという完成度! これは鳥肉の革命だ!」


 相変わらず、ホアキンは大袈裟な評論家みたいなことを言ってるし。まぁ、楽しんでくれてるならいいんだけどさ。


「まあ! なんて豊かな風味なんでしょう! フライドチキンとはまったくの別物ですね。レモンをかけると肉の脂がさっぱりして、揚げ物だというのにいくらでも食べられそうですわ!」

「はい! 姫様!」


 フェリシエンヌとエステルもおいしそうに食べているし、よかったよかった。


 フェリシエンヌたちは知る由もないだろうが、これはオレなりの罪滅ぼしなんだ。こんなことで許されるとは思っていないが、少しでも楽しんでくれるならよかったよ。


「よお、バルタザール! 相変わらずうまそうだな!」

「あら! それって唐揚げじゃない!」

「おらたちにも少し分けてくれよ」


 良い匂いをぷんぷんさせているからか、広場の周りに家を持つ若者たちがやって来た。


「いいぞ。そう言うと思って、追加で肉を買ってきたからな!」

「さすがバルタザールだ!」

「話が早くて助かるわ!」

「んじゃ、さっそく……。おほっ! あつあつ! うめええええええええ!」


 虎族の村は広場の周りにある家には主に独立した独身の者が住んでいて、樹上部分には子どものいる家族やお年寄りが住んでいる場合が多い。独身だと食事が適当になったり用意するのが面倒になったりするからか、料理しているとよく若者たちが顔を出すのだ。肉屋で追加で買ったお肉は、主に彼らのための物だね。


「次は塩唐揚げ行くぞー!」

「「「「「うぇーい!!!」」」」」


 虎族の若者たちも次々と合流して、なんだか宴のようになってきたな。


「バルタザール、母ちゃんが唐揚げ食いたいってうるさいんだ。悪いが少し貰えるか?」

「うちのボウズも唐揚げが大好きでよお。少し分けてくれよ」

「タダでとは言わないぜ? こいつと交換だ!」

「おう! 持ってけ、持ってけ!」


 ついには樹上部分に住んでる虎族たちも参加して、どこからともなくお酒の樽も出てきてるし、これはもう完全に宴だな。揚げても揚げても次の瞬間には唐揚げがなくなっちまう。これは大量に仕込んでおいてよかったな。


 そして、虎族の物々交換の文化がそうさせるのか、オレの元には大量の食材が集まっていくのだった。


「バルタザール、一人じゃ大変だろ? 私たちが手伝うよ」

「バルタザールのおかげで、今日は夕飯の準備楽させてもらったからね」

「始める前に一声かけてくれればいいのに」

「まったく、水臭いよお」

「おお! めっちゃ助かります!」


 一人で唐揚げ作りに忙殺されているオレを見かねたのか、虎族の奥様たちが手伝ってくれることになった。これでかなり楽になるぞ。


「ありがとうみんな!」

「いいのよ。うちの亭主が大好きだから、私も唐揚げの作り方覚えたくてね」

「そうそう。うちの子どもたちなんて奪い合うようにして食べてるのよ」

「おいしいですものね」

「そうねー。それで、どうやって作るんだい?」

「まずは塩唐揚げを作ってみよう。まず、鳥肉を一口大に切って、このボウルの中で塩、酒、砂糖と混ぜる! この時、好みで胡椒も入れてくれ。それが終わったら、半日置くんだ」

「半日も置くのかい!?」

「それじゃあ明日になっちまうよ」

「ここでオレの魔法の出番だ」


 奥様たちに唐揚げの作り方を教えながら、どんどん唐揚げを揚げていく。


「おかわりだ!」

「まだまだ食えるぞー!」

「やっと腹三分目ってとこだな」

「おかわりはまだか!?」

「ちょっと待ってろって!」


 奥様たちの活躍によって唐揚げの増産に成功したが、それでもまだまだ足りないみたいだ。


「お前ら! 今日は唐揚げだけじゃ終わらねえぞ! 今日は油淋鶏もチキン南蛮もあるからな!」

「ゆーりんちー? なんだそれは!?」

「ちきんなんばんってのは初めてじゃないか? いったいどんな料理なんだ!?」

「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! うめええ!」

「バルタザールが作るんだ、うまいのは確定だろ?」

「こりゃ食べられるように腹八分目でセーブしとくか」


 少しだけ唐揚げを食べるペースが落ちたか?


「おかわりだ!」

「こっちもおかわりくれ!」

「ばるたざーる、おかわり!」


 そんなことはなかったわ! 急いで作りながら、油淋鶏とチキン南蛮の用意もしないと!

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