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44 唐揚げ祭り

「えっ!? 未発見のダンジョンを見つけたんですか!?」


 ウリンソンの協同組合に戻ってきたオレたちは、さっそくダンジョンを見つけたことを報告した。


「どどどどどこで見つけましたか!?」


 いつもの受付嬢のエルフさんがカウンターの向こうで椅子から立ち上がって、今まで見たことないくらい慌てている。


 それにしても、さすが美人の種族であるエルフだな。慌てた顔もかなり美しい。まぁ、オレにとってはフアナが一番だけどね。フアナのキュートさには誰も敵わないよ。


 でも、エルフさんが慌てる理由もわかる。未発見のダンジョンとかスタンピードの可能性があるし、慌てるのも無理はないのかな。実際、ゲームではスタンピードが起きてたし。


「地図でいうと、この辺りだな」

「すぐに調査隊を派遣します!」

「一応、モンスターは相当数倒してきた。ボスも倒したからスタンピードの可能性は下がった。もしくは猶予が生まれたはずだ」

「そうですか……」


 カウンターの向こうのエルフさんが気が抜けたようにポスッと椅子に倒れるように座った。


「バルタザール様を信用しないわけではありませんが、念のため調査隊を派遣いたしますね」

「そうしてくれ。オレたちも確証があるわけじゃない」


 まぁ、後は協同組合に任せておけばいいだろう。これでゲームのようにスタンピードは起きないはずだ。


「バルタザール様にはダンジョンの状態や出現するモンスターについてお聞きしたいのですが、かまいませんか?」

「ああ。ダンジョンは洞窟型だな。出現モンスターはゴブリンとホブゴブリン、スライムを除くとクロウラーやジャイアントセンチピード、ジャイアントスパイダーのような昆虫系のモンスターが多かった。その証拠じゃないが、ドロップアイテムを持ち帰ってきた。買い取ってくれ」

「かしこまりました。ボスを討伐されたそうですが、ボスは何のモンスターでしたか?」

「タイラントセンチピードだ。かなり大きいムカデが一体だけだな」

「ありがとうございます」


 受付嬢のエルフさんにダンジョンの情報を教えてからドロップアイテムを売り払う。


 その後、ウリンソンのお肉屋さんでニワトリの肉やコカトリス、ロックバードなどの鳥系のモンスターの肉を買い占める勢いで買い付け、オレたちは虎族の村へと帰ってきた。


 もう日の傾いてきた夕暮れ時だ。もうすぐ暗くなるだろう。その前に料理を作っちゃわないとな。


「ばるたざーる、おなかすいた……」

「待ってろよ、フアナ。すぐ作っちまうからな!」


 オレは収納魔法でダンジョンで休憩中に漬け込んでおいた鶏肉を取り出す。


 あとはこれを揚げるだけだが、これだけでは量が足りない。そんなわけで、広場の脇にあるオレ専用にのようになってしまった竈に火を着けて、油を温めている間に肉屋で買った鳥肉を捌いて各種味付けをしていく。


 味付けした後は、一度収納魔法の中に入れる。実は収納魔法の中では時間経過を自由に設定できる。これを利用すれば、短時間で鳥肉に味が染み込むのだ。


「衣を付けてっと。油はどうだ?」


 木で作ったさえ箸を油に入れると、シュワシュワと細かな気泡が生まれた。そろそろいいだろう。


「じゃあ、揚げていくぞー」

「おー!」

「もうお腹が背中をくっ付きそうですわ」


 オレの調理風景をジッと見ていたフアナたちが歓声を上げた。エステルも歓声こそ上げないが、目をキラキラさせてパチパチと拍手していた。


「まずはオーソドックスな醤油味だな」

「今、ショウユと聞こえたぞ!」

「お?」


 声に振り向けば、もう手には酒とフォークを持って準備万端のホアキンと目が合った。


「今日はショウユを使った料理なのか!? そうなんだな!? そうだと言え!」


 醤油と聞いて家から飛び出してきたらしい。ホアキンは醬油ジャンキーだからなぁ。この前なんて卓上醤油をつまみに酒を飲んでいたくらいだ。体に悪いから止めさせたが。


「喜べ! 今日は醤油を使った料理だぞ! わかったら大人しく待ってろ」

「おう!」


 そして、行儀よく野外の食卓スペースに座るホアキン。これでも虎族の族長なんだが……それでいいのか?


「じゃあ、揚げていくか」


 油の中に味付けした鳥肉を入れると、ジュワッと油が音を立てた。いいねー。いい音だ。幸せの音だぜ。


 次々に鳥肉を油の中に入れ、どんどん揚げていく。


 揚がった唐揚げを取り出し、くし切りにしたレモンを添えて完成だ。


「ほら、できたぞー。ケンケーもあるからそっちも食べてくれ」


 トウモロコシの蒸しパンであるケンケーも収納魔法から取り出し、テーブルに並べていく。


「からあげ!」

「おぉー! 醤油の香ばしい香りが伝わってくるようだ! どれどれ、レモンをかけてやろう」

「叔父さん、ダメ!」

「え? だが、レモンをかけた方がうまくないか?」

「絶対ダメ!」


 異世界でも唐揚げにレモンをかけるかかけないかの派閥って生まれるんだね。


「どうぞ、姫様」

「ありがとう、エステル。これがからあげ、ですか? フライドチキンに似ていますね」


 エステルはフェリシエンヌの給仕をしているし、フェリシエンヌはお上品にナイフとフォークを使って唐揚げを食べるつもりのようだ。

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