39 ダンジョン
「そう、ですか……。わかりました。今はバルタザールの言葉に従いますわ」
「ん」
「私は姫様に従うだけです」
フェリシエンヌ、フアナ、エステルは、最終的にオレの案に乗ってくれた。あとはダンジョンのモンスターをできるだけ狩って、スタンピードが起きないようにすればいい。
フェリシエンヌは、わざとスタンピードを起こして自分が英雄になろうとは考えもしないだろう。フェリシエンヌは優しい正義の少女だからな。
「話がまとまったところで進むか。ん?」
「敵!」
フアナの鋭い声がダンジョンに反響する。曲がり角から現れたのは、六体のゴブリンと二体のスライムだ。
「本当にモンスターが多いですわね! アイスニードル!」
「シッ!」
まだ入り口から二十歩も入ってないんだが……。本当に次から次へとモンスターが現れるな。
軽くゴブリンとスライムを片付けた後も、何度もモンスターと遭遇した。ゴブリンとスライムはもちろん、まるでコモドドラゴンのようなデカいトカゲや大きな蛾、サーペント、デカい芋虫にムカデ、モンスターの種類は多種多様だ。
ゲームでは、第二階層や第三階層で登場するモンスターも第一階層に登場しており、スタンピードの予兆も感じられた。
オレたちは、ダンジョンの攻略よりもモンスターの討伐に重きを置いてダンジョンを探索する。
時には、自分たちで音を出したり、モンスターを引き付けるお香を焚いたりしてモンスターをおびき寄せ、倒していった。
「本当に、信じられない量ですわ」
「ん……」
剣を抜いたまま肩で息をするフェリシエンヌと、疲れたように元気がない声を出すフアナ。エステルはまだ大丈夫そうだが、このあたりで休憩した方がいいだろう。ちょうど行き止まりだしな。
「フェリシエンヌはそろそろ魔力を温存しておけ」
MPってのは時間経過で回復するが、そのスピードはゆっくりだからな。魔法は強力だし便利だが、魔法に頼り過ぎるとすぐにMPが枯渇してしまう。
「皆様、宝箱を発見したしました」
「おお!」
エステルの報告に一気にテンションが上がる。そう。ダンジョン探索と言えば、やっぱり宝箱だよね!
ゲームのダンジョンでは、ランダムに宝箱が現れる仕組みになっており、中には宝箱からではないと手に入らないアイテムもあった。目的のアイテムを手に入れることができるかどうかは完全に運次第だ。
このダンジョンだと、物理攻撃力が上がる腕輪が当たりのアイテムだな。腕輪で物理攻撃力が上がる装備は珍しく、見つければ中盤までお世話になる装備だ。
「開錠しましたが、どうやら腕輪のようです」
「マジで!?」
オレはもうテンション爆上がりでエステルの元に駆け付けた。
「こちらです」
「あー……。これは、ポイズンガードだな……」
がっかりだ。念のため鑑定の魔法を発動してみるが、ポイズンガードで間違いない。二度がっかりした。
ポイズンガードは、毒を確率で防ぐ腕輪装備だ。毒虫のモンスターが多いこのダンジョンでは使えるが、他ではあまり役立たない装備だな。
「ありがとう、エステル。これはフアナが着けてくれ」
「フアナ?」
「ああ、フアナは接近戦で戦うからな」
「ん。わかった」
フアナは素直に腕輪を右腕に着けた。そして腕を振って感触を確かめている。
まぁ、毒ってそんなに強いステータス異常じゃないし、魔法でもアイテムでも治せるから必要ないといえば必要ないが、せっかく手に入れたんだし使ってみよう。
「じゃあ、これから少し休憩しよう」
「休憩するのは賛成ですけど、その間にモンスターが現れたらどういたしますの?」
「その場合はオレが片付けるよ。明かりの魔法しか使っていなかったから、魔力も余っている。ここはちょうど行き止まりだし、一方向を守るだけでいいからな」
オレは行き止まりとは反対の方向に歩き出す。
オレは今まで防御力を上げる魔法、プロテクションくらいしか使わず、戦闘をフアナたちに任せてきた。フアナたちの実力を上げるためだ。だが、フアナたちの休憩の時くらいオレも戦闘しよう。
すらりと腰の剣を抜くと、さっそくモンスターが現れる。クロウラーが三体、ジャイアントセンチピードが三体だ。
「ばるたざーる?」
「大丈夫だ。オレに任せておけ」
背後のフアナたちに軽く手を振って、オレは走り出す。
まずはクロウラーの吐く糸玉を避ける。三回避けると、もうクロウラーたちが目の前だ。
だが、クロウラーたちを守るように三体のジャイアントセンチピードは道を塞ぐ。しかし――――。
「邪魔だ!」
オレが三度剣を振るうと、ジャイアントセンチピードたちは白い煙となって消えた。普通ならその牙と甲殻の硬さに手こずるところだろうが、オレにとっては無いも同じだ。
その後、三体のクロウラーも始末する。普通なら体液などで剣が汚れるのだが、ダンジョンのモンスターは倒すと白い煙となって消える。それは体液なども同じようで、剣に汚れはない。手入れが楽で助かるよ。
そんな調子で、オレは次々と来るモンスターを一刀の元に切り伏せたのだった。
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