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37 反省会

「なッ!?」


 わたくし、フェリシエンヌは目の前の光景に目を疑ってしまいました。わたくしの放ったファイアボールの残滓が洞窟を赤く照らす中、先ほどまでわたくしの隣にいたはずのバルタザールがいつの間にか移動し、ゴブリンたちの首を刎ねていたのです。


 わたくしでさえ二呼吸はかかりそうな距離。それを一瞬で走破!?


 しかも、わたくしの目に追えたのは、すべてのゴブリンの首を刎ね、残心しているバルタザールの姿だけでした。ゴブリンに走り寄るバルタザールの姿も、ゴブリンに剣を振るうバルタザールの姿も見えなかったのです。


 なんて恐ろしい素早さ……。わたくしの目には何も映りませんでした。ここが戦場で、バルタザールが敵だったらと思うとゾッとします。


「はぁ、一度ダンジョンを出るか」


 そう言って、バルタザールが洞窟の外へと歩き出します。


 ですが、わたくしも、エステルも、フアナまで動けずにいました。それほどのことをバルタザールはやってのけたのです。


「ん? どうした? 出るぞ?」

「はい……」


 バルタザールにもう一度声をかけられて、わたくしの体はようやく動いてくれました。バルタザールを追って洞窟の外に出ます。


 洞窟の中にいたのは少しの間だけとはいえ、洞窟の外は眩しく、空気がおいしい気がしました。


「じゃあ、まずは反省会だな」

「反省会、ですか?」


 わたくしが問うと、バルタザールが大きく頷きます。


「そうだ。先ほどの戦闘は最悪だったからな」


 そう言って苦笑いを浮かべるバルタザールがわたくしを見ました。



 ◇



 まずは一番の戦犯であるフェリシエンヌの話から聞こうかな。


「じゃあ、まずはフェリシエンヌに訊きたい。なぜファイアボールを使ったんだ? お前は他にも魔法が使えるだろう? なぜ、よりにもよってファイアボールなんだ?」


 先ほどの戦闘は最悪だった。お互いがお互いの足を引っ張るような、連携のれのじもない戦闘だった。こいつらにこれ以上戦わせるのは危険だと思って強引に介入するくらいにはひどかった。


「え? 洞窟の中は明かりの魔法があったとはいえ暗かったでしょう? ファイアボールを使うことでより明るくなると思ったのです。たとえ一時であったとしても、明るい方がいいでしょう?」

「なるほど……」


 なにも考えなしにファイアボールを選択したわけじゃなかったのか。だが、結果的にファイアボールは最悪の選択肢だった。


 いや待てよ。もしかしたらオレはフェリシエンヌたちよりも夜目が利くから光源が少なかったという可能性もあるな。明かりは俺の担当だ。もう少し増やそう。


 今はフェリシエンヌだ。


「フェリシエンヌは、ファイアボールを撃った時には既にフアナがゴブリンに向かって走っていたことには気が付いたか?」

「そうなのですか?」

「ん」

「そうなんだ。ファイアボールが着弾した時、フアナはもうゴブリンの近くにいた。だから、ファイアボールの余波を受けて足を止めてしまったんだ」

「そんな……」


 フェリシエンヌは今頃自分のミスに気が付いたようだ。


「ごめんなさい、フアナ。わたくしが邪魔してしまったのね」

「大丈夫」


 フアナはそう言うが、残念ながらそれだけでは終わらない。このままではフェリシエンヌの成長につながらない。


「フェリシエンヌの使った魔法がファイアボールじゃなければ、こんなことにはならなかっただろう。オレの方でも光源を増やすことで対応するが、フェリシエンヌはダンジョン内で基本ファイアボールは使わないでくれ」

「わかりました。その、先ほどから気になっていたのですけど、ダンジョンというのは?」

「気が付いてなかったのか? この洞窟はダンジョンのようだ。ゴブリンの死体が白い煙となって消えただろ? ダンジョンに共通して見られる現象だ」

「そうでしたの……」

「フェリシエンヌはもっと周りを見ろ。お前は魔法が使える。だから、視野をもっと広く持たねばならない。味方がどこにいるのか、何を狙っているのか。味方に合わせるように魔法を使うんだ。今のままでは、いつかフレンドリーファイアしかねんぞ?」

「…………」


 フェリシエンヌがショックを受けたようにうなだれてしまう。


 まぁ、フェリシエンヌの知っている戦闘というのは、おそらく一対一の決闘のようなスタイルと、戦争のような大人数の戦闘だけだろう。パーティを組んで戦う少人数戦というのは初めてのはずだ。これから少しずつ学んでいくしかないだろう。


 そして、同じことがエステルにも言える。


「エステルもだ。お前、フェリシエンヌがファイアボールを撃ってから暗器を投げただろ? ファイアボールの爆発で軌道がズレることなんて少し考えればわかるだろ? なんで暗器投げたんだ?」

「申し訳ございません。ファイアボールに隠れて接近するのが最上だとは思いましたが、姫さまのお傍から離れるのは……」


 エステルにとってフェリシエンヌの命を守るのが最上の使命だからなぁ。

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