35 みんなでパーティ
「フアナはこう言ってるが、ホアキンとしてはどうなんだ? フアナが協同組合のクエストを受けるのは危険じゃないか?」
「多少危ないのはいい。それもいい経験になる」
「そういうもんか……」
フアナを大事にしているホアキンなら反対してくれるかもしれないと思ったのだが、逆に太鼓判を押されてしまった。
「ばるたざーるは嫌?」
「え?」
フアナの方を向けば、フアナが悲しそうな顔でオレを見ていた。
「フアナと一緒、嫌?」
「そそそそんなわけないだろ!」
「じゃあ、いいよね?」
「えっ……?」
さっきまで泣きそうな顔してたのに、もうケロッとしてらっしゃる!?
女の子の機嫌は変わりやすいみたいな話はあるけど、フアナもしっかり女の子だったようです。
そんなこんなでフアナも一緒にパーティに参加することになった。
一応、結果はわかっているがフェリシエンヌに確認したら、やっぱり二つ返事でOKだったよ。
しかし、フアナが参加するとなると、下手なクエストは受けられないな。となると……。ちょっと危険かもしれないが、オレの作業を手伝ってもらうか。
本当は適当にモンスターを間引きして協同組合に報告するだけにしようと思ったのだが、ちょうどいいかもしれない。
ダンジョンに行くか。
そう決心したオレは、次の日の朝にはフェリシエンヌたちを協同組合に集めていた。
協同組合の朝はとても活気がある。朝食も出しているのか、協同組合の中はスパイシーな香りが漂っていた。
「おはようございます、バルタザール、フアナ。あの方々は何をしているのですか?」
フェリシエンヌは不思議そうにクエストボードの前に集まる人々を見ていた。
「クエストは朝に貼り出されるんだ。みんなより良いクエストを求めてクエストボードの前で待機しているのだね。クエストは早い者勝ちだから」
「なるほど……。わたくしたちも並びますか?」
「いや。オレたちは並ばない」
「どういうこと?」
「クエストを受けるのではないのですか?」
フアナとフェリシエンヌが不思議そうな顔でオレを見ている。
フアナは表情の動きが少ないけど、一緒に暮らすようになって表情が読めるようになってきた。
フアナのかわいい表情を永遠に残したけど、残念ながらまだスクショ魔法は開発中だ。開発に難儀しているが、オレは決して諦めることはないだろう。
「今日はお互いの得意不得意の確認を兼ねてモンスターを狩りに行こうと思う。クエストで恒常的に貼り出されてる害獣駆除ってやつだな」
「狩り」
「狩り、ですか?」
狩りと聞いてちょっと得意げになるフアナがかわいい。その横では、フェリシエンヌがまたも不思議そうな顔をしている。
「いいか? オレたちは顔見知りだが、お互いの戦闘スタイルを熟知しているわけじゃない。こんな状態では連携もクソもないだろ? だから、今日はその練習をしようと思ってな」
「そういうことですか」
フェリシエンヌの顔色に理解の色が浮かんだ。
「エステル、お前にも働いてもらうぞ?」
「かしこまりました」
深々とお辞儀するエステル。その背中から視線を外して、オレはフアナとフェリシエンヌを見た。
「一応、お互いにできることを確認しておこうか。オレは剣と魔法を使う。魔法は高域に影響を及ぼす魔法が得意だ」
「フアナは殴る」
「わたくしも剣と魔法を使います。どちらかというと単体を狙う魔法が得意ですわ」
「私は……」
エステルはメイド服の袖から艶消しされた黒いクナイのような暗器を取り出した。
「このような武器を投げたりします。敵の不意を衝く攻撃を得意としています。あと、パーティの斥候も可能です」
うんうん。みんなゲーム通りの戦い方で安心したよ。
フアナはアタッカーだ。継続的にコンスタンスにダメージを与えることに長けており、特に必殺技の十三回もの多段攻撃は圧倒的な瞬間火力を誇っている。鍛え切ったフアナによる9999ダメージの十三連回攻撃はかなり見ごたえがあった。
フェリシエンヌは主人公に相応しい万能性を持っている。すべての魔法も使えるし、回復魔法すら使えるんだ。そして、剣による物理ダメージも出せる。まさに主人公と言ってもいいだろう。
エステルはトリッキーな性能を持っている。彼女の言う通り、敵の不意を衝く攻撃は、そのダメージも魅力的だが、他にも各種状態異常を引き起こすのだ。そして、攻撃の回避率も高い。敢えて防御力の低いエステルだけを前衛において、敵の攻撃を回避で凌ぐ戦法もあるくらいだ。
そしてオレ、ラスボスであるバルタザールの能力はすべてにおいて突出している。ラスボスだからね。たぶん無駄に多いHPも再現されてるんじゃないか。ラスボス専用の魔法ももちろん使えるし、これもしかしたら本気出せば変身もできるんじゃないか?
三人はまだレベルが低いから弱いかもしれない。だが、オレがいたらたぶん大丈夫だろう。たぶん。
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