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33 フェリシエンヌと協同組合

「よお、バルタザール! この間は世話になったな!」

「バルタザールじゃない! この前はありがとね。族長も感謝していたわ」

「お! バルタザールじゃん!」


 協同組合に入ると、オレを見つけた獣人たちが挨拶してくれた。虎族をはじめ、兎族や狼族、人馬族などなど、いずれも困っていたのを助けた種族の者たちだ。


 まぁ、オレはゲームでのフェリシエンヌの行動をなぞって、彼女のものになるはずだった功績を先に奪ってしまったに過ぎない。


 獣人たちがフェリシエンヌに同調してランゲンバッハ帝国との戦争を望まないようにするためとはいえ、どんなに感謝されてもどこか後ろ暗いものがあった。


「バルタザール、オラたちとパーティを組む決心はついたか?」

「バカ野郎! バルタザールは俺たちとパーティを組むんだよ!」

「男ばっかりのパーティなんてむさくるしくて嫌よね? 私たちのパーティに入りましょう?」

「すまん! オレはしばらくはソロで行動するつもりだ。誘ってくれるのは嬉しいが、また今度な」

「そんなぁ……」


 オレがどんどん高難易度のクエストをクリアしたからか、オレをパーティに誘う動きも多い。


 今じゃ、どこのパーティがオレを獲得するかが賭けの対象になっているらしい。だからか、何度も誘ってくるパーティもいて断るのも大変だぜ。


「バルタザール!」

「ちょっと話を聞かせてほしいのだけど?」

「すまんすまん。また後でな」


 オレは集まってきた獣人たちの間を滑り抜けるようにしてカウンターに向かった。カウンターにはいつものエルフさんがいて、ニッコリ笑ってくれる。


 さすが、美しい者が多いといわれる美人種族。このエルフさんも日本ではなかなかいないレベルのかなり綺麗な人だ。


「おはようございます、バルタザール様。本日はいかがないさいましたか?」

「いつものを頼む。今日はグレイターサーペントだ」


 オレは、協同組合に顔を出した時はいつも仕留めたモンスターの解体の依頼をしている。オレを襲うようなモンスターは皆大きく、一気に解体するのは難しいため、一日一体ずつの解体となったのだ。


「こちらへどうぞ」

「ああ」

「本日もお肉をお持ち帰りになりますか?」

「うーん……」


 今まで解体したモンスターがウリンソンボアやロックバードだったから、豚肉や鶏肉だと思ってお肉を持ち帰っていたが、そもそもグレイターサーペントって食べられるんだろうか?


「訊きたいんだが、グレイターサーペントって食べられるのか?」

「はい、食べられますよ。むしろ族長会議の席にも饗されるほどのご馳走です」

「そうなんだ」


 ゲームでもボア系のモンスターを倒すと豚肉を、鳥系のモンスターを倒すと鶏肉をドロップしたからなんとなくそういうものだと思っていたけど、さすがにゲームでもヘビ肉は登場しなかった。


 おいしいらしいけど、いったいどんな味なんだろう?


 ヘビ肉料理の作り方を虎族の奥様たちに訊いてみようかな。


「一応、お肉はお持ち帰りで」

「かしこまりました」


 協同組合の地上部分にある解体部屋でグレイターサーペントを出すと、解体屋のドワーフたちが歓声を上げて、作業に取り掛かっていた。


「お主はいつも大物を持ってきてくれるから腕が鳴るわい」

「そう言ってもらえると助かるよ」

「いつも通り、素材は買取でいいのか?」

「ああ、よろしくたのむ」

「あいよ」


 そんなやり取りをして、オレとエルフさんは協同組合のエントランスへと戻ってきた。


 そのまま面白そうなクエストでもあれば受けようかなとクエストボードの前に行くと、ここ最近で見慣れた金髪縦ロールが見えた。フェリシエンヌだ。その傍には、肩口に黒髪を切り揃えたメイド服のエステルの姿も見える。


「フェリシエンヌ? エステルもこんな所でどうしたんだ?」

「バルタザールですか」


 こちらに振り向いたフェリシエンヌ。その顔には困ったような表情が浮かんでいた。その後ろでは、無表情のエステルがペコリとお辞儀している。


「バルタザールは覚えていますか? ホアキン族長の言葉なのですが、わたくしたちに協力する理由がない。わたくしが身の証を立てていないという話ですが……」

「覚えている。たしか、恩がないという理由だったな」

「はい。言われてみれば当然でした。ウリンソン連邦を動かそうと思ったら、ウリンソン連邦の者たちにわたくしたちを助けてやってもいいと思えるくらいのものを、まずはわたくしから示さなければ。誰も見ず知らずの人間を命を懸けて助けてやろうとは思えません。迂闊でしたわ。今までわたくしはそんなことにも気付かなかったのですから」

「それで協同組合に来たのか」

「はい。ここでは困っている方たちがクエストを出すと聞きました。冒険者ギルドのようなものだと思ったのですが、思った以上にその……日常に即したクエストが多くて驚いていたのです」


 たしかに、ゲームではモンスターの討伐などのクエストが多かった。だが、実際の協同組合のクエストはわりと日常的なお手伝いが多い。

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