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「あや、誰だろう」
お客様か、それともまた何かの配達か。
とにもかくにも私は、またも戸口の方へ。再びインターホン越しに尋ねた。
「はい、どちら様でしょうか」
『やあ、若当主。ワシですわ。播磨です。約束の通り、見学の方々をお連れしましたぞ』
返ってきたのは、確かに町会長さんの声だが、はて『見学』とは一体なんのことでしょうか。
「あっ、そういえば…!」
そこで私が、目の前の壁掛けのカレンダーを窺えば、本日の日付のところに、見事なまでの赤丸印が。
そう。是非この屋敷を見学したいという、一部マニアの方々からの要望に応え、それを播磨氏立ち合いの下、本日午後2時〜3時の間に行うという約束を、私はすっかり忘れていたのである。
「は、はいっ。いますぐ…いえ、少々お待ちを」
なぜお待たせしたのかといえば、もちろんヒミコをどこかに隠さねばならないからだ。
仮にも、名門楠家の当主の宅内に、しかもセーラー服姿のラ〇ドールが置かれていたとあっては、あらぬ誤解や憶測を生みかねないのでね。
ただ隠すと言っても、どこにどこに。あたふたあたふた。