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「…ゼロさん、きょうはよろしくお願いします」
いったい誰が来たのかと思えば、そのジャケット姿のスラリとしたイケメン青年は、いまをときめく男性アイドルグループ《大風》(OH! KAZE)の人気メンバー、日高翔くんである。
共演者リストによれば、本日は単独での出演だそうで…うむ、いずれにせよ、こうして早くも挨拶に来てくれたのだ。
私なんざ、この弁当を食べてから、ぼちぼち先輩出演者の方々のところへ。なんて思っていたのにな。
「こちらこそよろしくお願いします」
年齢は元より、芸歴も自分の方が上なれど、人気アイドルからの挨拶に恐縮。私は彼に歩み寄りつつ返した。
「僕、実はゼロさんのファンなんです」
おっと、いまをときめくアイドルさんまでが、とは。さっきの椚静ちゃんといい、なんか最近モテとるなあ、私。なんちて。
「あ…あれが、相棒のリリィちゃんですね」
「え、あ…はい。そうなんですよ」
うんうん、そのリリィは動かずにいるな。よしよし、そのままそのまま。
「と、そうそう。まだ収録までには時間ありますし、もしよかったら一緒に食べませんか」
卓上のお重を一瞥の後、私は翔くんを誘ってみた。あえて言わずと、ひとりじゃ食べ切れんしな。
「でも、お邪魔では…」
そういう彼の視線は、今度は卓の前の史都に注がれている。
「あ、これはカラクリ…じゃなくって、えーと…」
「裕…《ゼロ》の姪の史都です〜。どうぞお気になさらず、お入りください〜」
これまた、三つ指ついてご挨拶。君が『お入り』とか言うな…って感じだが、な。
「そうですか。それでは、まだ他の方々のところへも挨拶に伺いますので、その後あらためてお邪魔します」
いかに等身大といえど、火を見るより(?)明らかにカラクリ人形なのに、すっかり史都が『姪』で通じてしまっているのはともかく、翔くんが笑顔で頷いた。




