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その晩…
「…な、なんだか寝苦しいが…」
そう思って目を開けてみれば、なるほど。それぞれ両隣の布団で寝ているはずの空と史都が、いつの間にやら私に密着。この胸や腹の辺りに、腕だの脚だの乗っけたまま眠っておる。
空はパジャマ代わりのラフな服装。また史都は、例の振り袖風パジャマ姿。(史都は瞬き可だが)とりあえず、どっちも目を開けたまま。こわっ。
うむ、どーりで重たいはずだわい。
「これこれ、2体とも…」
と、彼女らの手脚を退けるべく私が、この布団から身を起こそうとした時のことだ。
「…パパー、ママー…みんなー…私、帰ってきたよー…ふふっ…」
その空の寝言を耳に、はたと私は動きを止めた。そして結局、起き上がることなく、わずかに浮かせた頭を再び枕に着ける。
うん、いましばらく、このままにしておこう。いい夢を見ているみたいだし…そう、もし起こしてしまうといけないのでね。
しかし、ポツンと豆球だけが灯る当寝室内、そんな空の寝顔(?)を何気に眺めるうち、なんだか私は切なくなってきてしまった。
なにせ、せっかく帰ってきたにも空は、その姿ゆえに、それを両親にもメンバーにも知らせることが出来ないのだからな。
まあ、驚かれるのを覚悟で、皆と会うことも可能ではあろうが…
でも、それには、まだ時が必要。とは、空本人の弁である。
んっと、待てよ。実は、さっきから気になっていたんだが、なんだか今宵は、やけに枕が高いような高くないような…
「わおっ…!?」
我ながら突然、声を上げてしまった私。
ちょいと視線を上に向けた瞬間も瞬間、カッと見開いた目で、誰かが私を見下ろしている事実を知ったからだ。
で、それが誰かと申しますと、
「な、なんだ、ヒミコか…って、なんでまた動いてるんですか、あなたって人…形は」
はい、そうなんです。私ってば、いつの間にかヒミコに膝枕されてるんです。今宵もまた、いつもの上座に置いたままのはずのヒミコに。
「やれやれ…こりゃ高い訳だ。にしても、この移動…もしかして、また何かの警告かな」
だが、もう余程の事でも起こらぬ限りは驚かんぞ。すでに、空の死と復活という、およそ信じ難い出来事を経験した私としては、な。
ともあれ、結局の結局は起き上がると共に、ヒミコを少し後ろに。で、ちょっと彼女を拝んだりした後、あらためて横になったが私は、ふと先の胸騒ぎが蘇ってくるのを感じつつも、やがて再び眠りに落ちていった。




