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まあ、人形に霊が憑依などというのは、すでにヒミコで体験済みゆえ、それは私にとって、いまさら驚くほどの事ではなかった。
でも、まさかこのリリィにまで、それが及ぼうとは…
「…未練がゆえに、か」
我が家の居間。卓に着き着き、ひとり頷く私。
「はい〜、そうなんです〜」
ううん、確かに口調は似てるが、これは史都ではない。彼女は今、向こうの台所部屋で、茶をいれているのでね。
ならば、誰か?
実は、その史都似の調子で言うは、そう…あの亡くなったはずの南田空である。
正確には、その空の霊を宿した我がパートナーのリリィ、だがね。
ご覧の通り。卓を間に、いつものミニワンピ姿で、私の向かいに座った姿。それが先のスタジオよろしく、やはり瞼だの口だの動かしながら、勝手に喋っているのだ。
おまけに、ここでは身振り手振り首振り、その他までを披露。とりあえずスタジオでは、皆に知られて驚かれぬよう、そこまではしなかったそうだがね。
あいや、私だけなら驚いてもいいんかい。
さておき、とどのつまり空は、この世に…というか、この私への未練ゆえに、死後成仏できず。こうしてリリィに憑依し、わざわざ私の元へ戻ってきたのである。
ちなみに、その前にちょっとばかりリンリンに憑依し、自分そっくりにダンスを踊らせた。とは、これまた空の弁でござい。
なるほど。どうりで、ね。納得…してしまっていいのかは、よく分からんが。
そうそう、先に述べた私の『後悔』の理由とは、まさにこれだ。
あの日あの時、私がはっきりと交際を断っておけば、空は未練なぞ残さず成仏出来ただろうしな。




