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私、渾身の《むしろ空の方から、私をフッたような形に見せかける作戦》失敗ナリー。
私としては、『さすがに、アイドル活動の方が大切ですから、こんなオッサンではなく、そっちを取ります〜』との言葉を期待していたんだがな。
いやはや、きらきらアイドル街道<40男だとは、よもや思わなかったわい。
ん、なんだい空?
「ただ、いますぐは無理なので、あと2年待ってくれませんか〜」
にわかに姿勢を正すなり、空が私に訴えてきた。いままでに見せたことのないような、熱い眼差しで。
「はて、2年…とは?」
「はい〜、その間にやるべき事をやって…そう、ゼロさんが言ったように、きちんとけじめをつけてから、卒業したいと思いますので〜」
な、なるほど。それに2年を要する、と。
だが、無論ここで『うん』と言ってしまう訳には…っと待てよ、裕一郎。むしろこれは、お主にとってラッキーなのではござらんかえ?
なにせ2年もあれば、人の気持ちなんて変わるだろうしな。
そうさ。その間に、また他に気になる男が、空の前に現れるかも知れんし…
「うむ、ならば分かった。では、2年待とうじゃないか。ただし、その日までは、私と空との間に、特別な関係は一切ナシ。そうして、ファンの方々と誠実に向き合うんだよ」
「は、はい〜、分かりました〜。ありがとうございます〜」
もちろん(空の想いが変わるという)保証はどこにもないが、まあ、この場はこんな感じで、な。
あいや、確かに。その2年の間、逆に私が空を好きにならぬ、という保証もまたないわな。
そうなったら、そうなったまでさ。うん。
「では、これで失礼します〜」
笑顔で一礼。その再び上げた空の顔の、嬉しそうな事と言ったら…なんだか、申し訳なくなってくるな。こんな私が、こんな可愛くて性格も良い娘に好かれるなんざ。
「収録、頑張りましょ〜ね〜」
「うむ、頑張ろう」
かくして、すくと立ち上がったが空は、衣装の裾など靡かせつつ、颯爽と当室を去っていった。
ふ〜っ…なんとか切り抜けられたようだ。
がしかし、後に私は大きく後悔する事になる。
やはり、この日この時、はっきり断わっておけば良かった…と。




