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「キ、キミは一体、自分が何を言っているのか、ご存知なのですか?」


 あちゃ、なんか思わず敬語になっちゃったわい。衝撃すぎて。


「もちろんです〜っ。私は本気です〜っ」


「そ、そんな…」


 いんや、しかし…日頃、おっとりとした空に、こんな激しい面があったとは意外だわい。


 さらに彼女が言うことにゃ、実は日頃から抑えていた募る『私』への想いが、この度のスキャンダル(じゃないけどな)を機に爆発してしまった、とのことだが…

 

 いやはや、確かにタダの私のファンにしては、らしき(・・・)アプローチが《ゴン読む》内でも強かった気はするが、本当に本気だったんだな。空は。

 

 でも、いずれにせよ空は、なにか勘違いしているだけさ。こんなイイ年こいて独身ってな男を好きだなんて、そうそう…きっと一時の気の迷いと言うヤツさ。


 あ、本来ファンだった上に、かつて番組(ゴン読む)の中で彼女が体調を崩した時に、ちょこっと私が介抱した事があったから、それで…かな。たぶん。


 そりゃ、もちろん私とて空を嫌いな訳ではないが、それにしたって若い娘の将来を、こんな中年男が潰す訳にはいかんのでね。


 よってここは、しかと彼女を説得せねばなりますまい。


「で、でもね、空…ちゃん? たとえ本気だったとしても、ほら…君は今、アイドルとして人気も上々で、最も重要な時期だと思うし…そうそう、それが恋愛だなんて、もし周囲に知れたら…」


「でも『ゴンダ』は、恋愛禁止じゃありません〜っ。もし恋愛発覚によって人気が落ちても、それはあくまで自己責任というのは、ファンの方々もゼロさんも知ってるはずです〜っ」


 ひ〜っ…説得失敗っ。


「そ、そりゃ、知ってますが〜」


 あ、空の口調が移っちゃった。


 それにしても空ときたら、ますます乗り出し過ぎ。ほとんど顔が、くっつきそうな程に。


 まあ、めっちゃカワイイ顔だし、シャンプーの香りも漂ってくるし、決して悪い気はしないが…とか言ってる場合じゃないっす。もうぼちぼち収録も始まることだし、なんとか、この場だけでも凌がねば。あせあせ。


「いやま、確かにキミの言う通りだが…しかし、それ以前に空ちゃん、よーく考えてみよう。ね? そもそも君は、まだ20歳…で、私はもう40歳なんよ? そう、つまり20歳も年上の、所謂オッサンなのよ? でね、もし万が一億が一、キミが私と付き合ったとしても、後々きっと『ああ、なんでこんなオッサンを好きになったんだろう』とかって、大後悔して海に出る日が、必ずやってくると思う訳さ、私は。ね?」


 という、あらたな私の説得というか、ほとんど説法にも、


「あ〜、それなら大丈夫です〜」


 ふと微笑みを湛えつつ、元のポジションに。なんだか頷いてみせる空である。


 はて、その心は?


「だって、いまでもこんなオッサン(・・・・・・・)だから〜」


 あ、納得。


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