箱の中身はなんだろな
ある晴れた午後の事だ。
ぴんぽ〜んっ…
ここ楠家の居間に、来訪を告げるチャイムが鳴り響いた。
「…っと、はいはい」
寛ぎの時間。はたと卓を離れるや私は、しゅしゅと畳の音を立てつつ、戸口近くのインターホンの前に。
「はい、どちら様でしょうか?」
『宅配便でーすっ…』
「あ、はい。いま開けますー」
インターホン越しのやり取りの後、いそいそと玄関へ向かう私は、当宅の主である楠裕一郎。訳あって、この広く大きな屋敷の中、たったひとりで暮らす40歳の独身男だ。
さて、まもなく玄関へ。同じくして私が、その格子戸を開いてみれば、
「どうも〜っ…」
という配送員のお兄さんの姿と共に、なにやら大きなダンボール箱が、この目に飛び込んできた。
「な、なんですかね、それは」
しかとラッピング。そのお兄さんの脇に立てられた長方形の箱は、まるで中に、あのツタンカーメンでも入っているかのような大きさである。
「かなり重いんで、そこ置いちゃいますねー」
言ってお兄さんが、それを抱え直して玄関の中へ。私の横から背後の廊下へと、寝かせて置いてくれた。
ちなみに、差出人はといえば…と、その箱に貼られた伝票を見るに、『楠大二郎』とある。
ああ、それは私の叔父だ。
ただ中身については表記がござらん。
でも、相手が叔父なら、ひとまず安心かな。少なくとも、そのダンボールの中身が、なにか危険な物でないことだけは確かだからな。
「んじゃ、どうもー」
「ご苦労さまでした」
私がサインした伝票を手に、お兄さんは去っていった。