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第一話 邪悪の胎動

OPテーマソング 「鋼のルチャドール」 作詞 ふじわらしのぶ


アディオス・アミーゴ! 君の心は燃えているか?

アディオス・アミーゴ! 君の魂は凍りついていやしないか?


さあ 見せてやれ 君の心の奥底に眠る獣の本性を アバネロのような!

さあ 君の出番がやってきた! マスクをかぶれ S空に飛び立て 目指すその先はルチャの星!


カイザー!カイザー!大空からこの星を守る正義の勇者 その名はスカイザーP!


朝の筋トレは絶対欠かさない グレート信玄が恐いから 竹刀で叩かれる 絶対に

朝のロードワークは命がけ 走れ 走れ さもないとプリンス勝頼が 社長にしばかれる

これは虐待じゃない なぜならば愛があるから 夢の為に 傷だらけになって耐えてやれ

それが誇り高きプロレスラーってもんさ


いつかは出たい メーンイベント 憧れのあの人と戦うんだ ずっと昔に約束したんだ あの人と

マスク・ド・本能寺 


「ハーハッハッハ‼世界は私がもらったぞ‼スカイザーP」


こんな感じで 空気を読まないヤツがいるから世の中楽じゃない 夢で飯が食えるか‼

だけど親父に誓ったんだ みんなの夢を守る為 輝く未来を守る為 悪と戦う事が俺の使命だ


「スカイザーP、発進だ‼」


大空を飛ぶ 無敵のウィング 大地を駆ける強力な足 あらゆる武器を弾き飛ばす無敵のボディ

超科学と@うろレス技で 悪の科学者の作ったロボをぶっ壊せ ぶっ壊してやるんだ‼


「っっしゃあ‼‼‼んなろー‼‼‼やんのか、こらあああ‼‼‼」


今日も悪をやっつけた 僕らの僕らの 超科学の結晶 天空戦機スカイザーP スカイザーP


「とうっ‼トペ・コンヒーロ‼」


スカイザーPは鷲のマークでお馴染みのショッカーの提供でお送りします…。   



 都内、防衛相所属戦略自衛病院。ここでは前回の戦い即ち我らがスカイザーPの初戦において戦鬼獣の猛攻を食らって惜しくも退場した馬場一馬三尉が治療中だった。


 白いベッドに身を横たえ、馬場三尉は拳を握り締める。


 「野郎。俺の愛機をお釈迦にしやがって…」


 馬場は長年命を預けてきた航空自衛隊のガードロボット”青山”の勇姿を思い出しながら歯ぎしりをする。

 青山は新型機”六甲山”とは違ってフローティングライトを動力源としない旧式のロボットだった。化石燃料が使われる事が無くなった現在では常に厄介者として冷遇されている。


 「青山。お前の仇は俺が問ってやる…」

 

 所属不明のスカイザーPと戦鬼獣に闘志を燃やす馬場の前に一人の男が現れた。


 「お困りのようだな、馬場君。この長州百万馬力が手助けしてやろうか?くっくっく…」


 黒いサングラスをかけたオールバックの男が嫌味な笑い方をする。馬場はすぐさま敵意を露わにした。


 「テメエは公安の…長州ッッ‼‼」


 馬場はベッドから起き上がり長州に掴みかかろうとする。長州はかつての上司であり、自衛隊のの秘密情報を手土産に総務省に渡り歩いた根っからの奸物だった。

 彼の他者を顧みない指令で、馬場は過去に部下を何人も失っている。


 「おっと。立場というものをわきまえたまえ。これでも来季には出馬を控えていてねえ」ニヤケ顔の長州の背後から黒服の男たちが殺到する。長州の懐刀にして日本国内最強のエリートコマンドー集団”維新軍”だ。


 「馬場よ。私はお前との腐れ縁に決着をつけに来たわけではない。今日の用事はこれだ」長州はスーツのポケットからスマートフォンを投げて寄越した。


 「痛っ」


 全身骨折による痛みを覚えながら馬場はそれを受け取る。液晶画面に映し出されていたのは内閣総理大臣猪木寛治に卍固めをかけられている長州の姿だった。これには聴衆も絶句するしかない。


 「おい。これは立派なパワハラだぞ?」


 「いや違う!今のは無し!こっちだ!」


 長州は急いで画面をスワイプして別の画像に移る。馬場は社会の闇を見たような気がした。


 「これだ。これを見ろ」長州が指定した画像には黒いがードロボットが映し出されていた。

 世事には疎い馬場と手これには見覚えがある。ネオ・トヨタ重工が今春の開発コンペで発表して見事に覇権を勝ち得た新型機だった。


 「これは全システムを浮遊性蛍光粒子フローティングライト制御に置き換えた新型機”箱根”か⁉」


 ”箱根”の名はパイロットたちにとっては忌まわしい響きがあった。

 箱根の実用化にこぎつける前に数回の起動試験を実施した結果、数名のパイロットたちが再起不能に追いやられている。その情報処理速度の負担が脳に与えるダメージは多大な物であり、パイロットさえも使い捨ての消耗品と揶揄されていている。馬場の同期、教え子の何人かは病院送りにされていた。


 「怖気づいたかね?馬場よ」


 「ハッ‼この程度、どうって事はねえよ。さっさとキーを渡しな。明日にだって手足同様に使いこなしてやんよ‼」


 馬場は息を荒らげながらがら手を差し出した。もとより禁忌タブーを恐れるような性格ではない。


 「フッ。それでこそだ。まかせたぞ、馬場君。箱根は基地で君を待っている。任せたぞ」


 長州は箱根のキーを投げて渡した。

 馬場は受け取ったそれを見て心底ぞっとする。キーホルダーにはなんと”ふなっしー”のマスコットがついていたのだ。


 (これは馬場やつの趣味なのか?)


 馬場の心に新たな疑念が渦巻く。翌日、退院した馬場はすぐに航空自衛隊、渋谷基地に向った。


 自衛隊渋谷基地ハチ公前。

 第四次、第五次世界大戦において主戦場となった北米大陸の米軍司令部が日本の渋谷に設置された事件は人々の記憶にも新しい。終

 戦後、米国政府はワシントンDCを放棄して司令部はホワイトハウスごとジュネーブに移転。残った施設を日本政府が摂取して自衛隊の基地に改造したのだ。


 馬場は”KEEPOUT”と書かれた道路標識を跨いで特殊車両専用の格納庫に向かう。お目当ての”箱根”は公には多目的特殊車両として反有されていたのである。


 「やあ馬場。久しぶりだね」


 広大な駐車場で馬場を待っていたのはは細身の白衣の男性だった。


 「お前は…浜口。生きていたのか」


 馬場は昔馴染みの顔を見つけてロコ等に顔をしかめた。


 白衣の男の名前は浜口兄丸、文部科学省所属の研究者だった。


 「ひどい挨拶だな、馬場。これだから低学歴の連中は困る。…ところでどうだい?僕の自信作は…そそるかい?」


 浜口博士は首をくいっと後ろに向ける。そこには片膝をついた巨大な黒騎士の姿がった。言うまでもない”箱根”の勇姿である。


 「またずいぶんと趣味に走った外見だな。このじゃじゃ馬を俺に独活カセッテいうのかい?」


 馬場は好戦的な笑みを浮かべながら指の関節を鳴らす。それを見た浜口はニヘラと笑った。


 「こいつは白兵戦に特化した機体だからね。フローティングライトと君のような脳筋にはぴったりの仕上がりだと思うよ?」


 「だがな浜口よ。敵さんはアンチグラヴィティフィールドなんて搦め手を使ってくるんだぜ?対策はしてあんのかよ」


 「AGF…天龍博士の構想か。くくくっ、問題ない。対策済みさ。おい、あれを起動してくれよ。この脳筋ゴリラにもわからように見せてやるんだ」


 「誰が脳筋ゴリラだ」


 悪態をついていた馬場の表情が凍りつく。全身が黒一色だった箱根の身体は今やライム色のプラズマ光に覆い尽くされていたのだ。指向性蛍光粒子、通称フローティングライト現象の発言だった。


 「どうだい、品の無い言い方をすればビームコートってやつさ。特定の環境下において重力素子を鎮静させるフローティングライトを減衰させるアンチフローティングライト。燃費が悪い。装甲が劣化する事に目をつぶれば事実上、無敵だ」


 「なるほど。銃を使わないんじゃなくて使えないのか」


 馬場は腕を組んで一人、頷く。ガードロボットの携帯する火器の大半はフローティングライト理論の、或いはフェネクスエンジンの支配下にある。

 アンチグラヴィティフィールドどを展開した状況では性能を十分に発揮できない。


 「一応、こいつを持たせてやるよ。AGFを分解するご機嫌なボウガンさ」


 浜口は箱根に並列する小型車両のハッチを開けて巨人の為のボウガンを見せる。それを見た馬場は何とも複雑な顔になった。


 「やれやれ。もっと黒騎士様じゃねえかよ」


 馬場は呆然としながらも戦鬼獣と所属不明機”スカイザーP”との再戦に闘志を燃やしていた。



 場所は変わってジュネーブの米軍本部。

 そこではスーツ姿の白人男性と黒人兵士が白いヴェールに覆われたロボットの前に立っていた。


 白人男性の名はタイガー・ジェット・シン・飛鳥。黒人の方はアブドゥル・ブッチャー。戦災孤児だった二人はフローティング研究者、スタン・ハンセン博士によって兄弟同然に育った間柄だった。


 「アブドゥル、カイザーシリーズを勝手に持ち出した無礼者が日本にいるらしい。どうしてやろうか?」


 ばんっ!


 アブドゥルは拳で掌を叩いた。その表情に変化はない。


 「愚門ダナ、兄サン。カイザーシリーズノ構想ハ、パパノ功績ダ。コレヲかってニ持チ出ス事ハ何人タリトテ許サン」


 そう言ってからアブドズルは拳をぎりりっと握り締める。

 どこか人形めいた瞳の奥には使命感の炎が燃えていた。


 「その通りだ、兄弟。パパが残したDESTROYERこそ、真のカイザーシリーズに相応しい。SUPERIOLなど所詮は型落ち機だということをおしえてやらねばならんな」


 シンは含み笑いを漏らしながらその場にいた整備スタッフに命じて白いヴェールを外させた。


 バササッ‼


 純白の天幕っから現れたのはメタリックブルーの装甲に覆われた巨大なロボットだあった。

 胸にはアルファベットのUの字を模した装飾が施されている。Uとは即ちULTIMATE、究極の称号に他ならない。


 「さあ、いざ出陣だ。アブドゥル、誇り高きその名を呼ぶがいい…」


 青い巨人の胸と腰についているコックピットハッチから上にシン、下にアブドゥルが乗り込む。


 「OK、兄サン。デカイザーU、スクランブル‼」


 アブドゥルの号令と共にデカイザーUはその場で立ち上がる。


 「前、二人とも。まだ出撃は許可していない。すぐに戻るんだ!」


 軍本部のビルから数名の部下を伴って体格の良い白人男性が大急ぎで駆けつける。

 男の正体は言わずと知れた現米国大統領にして米軍総司令官ビッグバンベイダー三世だった。


 「止められるものなら止めてみるがいいさ、米国大統領閣下プレジデント。我々は今から独立国家となるのだからな…」


 「地球上ノ如何ナル国家ニモ属サナイ…ワンマンアーミー。ソレガ俺たち兄弟ダ」


 ジャキンッ‼


 立ち上がったデカイザーUはすぐに身構える。

 気がつくと数体のガードロゴッとに包囲されていた。EU愚Mンンの主力機”シャフト”だった。比較的早い段階でフローティングライトを取り入れた汎用性の高い機体である。

 だがデカイザーUは構えを解き、両腕を組んで立っている。


 「一分やろう。もしも一分以内にデカイザーUに攻撃を当てる事が出来たなら掴まってやる」


 マイクごしに余裕の笑みを隠さずシンは米兵たちを挑発する。下のコックピットで臨戦態勢にあるアブドゥルとは大違いだった。


 「ほざけー‼総員、全力をあげてデカイザーを破壊しろ」


 大統領の怒声とともにシャフトはガードロゴッと用のマシンガンの銃口をデカイザーに向ける。


 「クックック…。降参するなら今の内だぞ、ボーイ?」


 「つまらないジョークだ。次回の大統領選ではコメディアンにトークのABCをレクチャーしてもらうといい」


 シンは口の端を歪に歪めると双鵜重間を握り直した。


 「小僧ッッ‼‼‼こうなれば破壊してもかまわん‼‼撃てええええええッ‼‼‼」


 今や世界的な標準仕様となったフェネクスエンジンを搭載したシャフトは大型機銃をデカイザーUに向けて一斉掃射する。

 フローティングライトでコーティングされた電装弾は同じフローティングライトをまとったデカイザーにも有用であるはずだった。だが一発も当たらない。

 それどころか銃弾は全てで貝Z-あを通り抜け、背後の格納庫に当たっている。


 「ゴーストエフェクト。物質をすり抜ける無敵のディフェンスだよ。短時間しか使えないのが難点だが、短時間ならば核爆発の高熱も凌ぐ。事象の地平を跨ぐ、優れものさ」


 シンはゴーストエフェクトの起動スイッチを跳ね上げる。

 一瞬にして世界を七周半するエネルギーの消耗は無限のエネルギーを精製する事も可能なフェネクスエンジンでも過酷な労働だ。


 「兄サン、敵ハマダ続ケルツモリダヨ」

 

 下部コックピットのアブドゥルから通信が入る。

 確かにシャフトたちは大型機銃からガードロボット仕様のコンバットナイフに持ち替え、じわじわと距離を詰めていた。


 「数なら勝てるつもりか?愚かな。…アブドゥル、お前に任せる。私はこういう泥臭い仕事は苦手でね」


 「了解ダ、兄サン。白兵戦ノ初歩ヲレクチャーシテヤルヨ。COME’N」


 アブドゥルが操縦桿を握るとデカイザーの上半身と下半身が、手が足にm足が手にという具合に逆転する。スマートな外見からゴリラのような猛々しい姿と為った。


 「敵は一基だ‼怯むなっ‼かかれーっ‼」


 ベイダー三世の号令と共にシャフトは列を為してデカイザーUに襲いかかった。

 デカイザーは胸を張って両腕を頭上で折り曲げる。そして背部に設けられたフェネクスエンジンの排出口から浮遊性蛍光粒子フローティングライトhs煙の如く吐き出された。

 そして、鎧袖一触。デカイザーUが両腕を振り回し、シャフトの群れの中を駆け抜けるとハリケーンンにでもあったかのように次々と薙ぎ倒される、

 後に残るは鉄屑の山。

 信じられない光景を目の当たりにしたベイダー司令はもはや一言も声を発する事が出来ない。


 「それでは大統領閣下プレジデント、我々は日本へ行く。貴官に幸大木未来があらん事を貴官

 

 デカイザーUは再び、上下逆転の変形を行い空に向かって飛び立った。



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