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8. リーナの決断

 

 その時は、突然だった。


 いつもは、絶対にリーナの部屋に来ない、実の父親であるドレスナー伯爵が、フラリとリーナの部屋に訪れたのだ。


「おい! リーナ、お前の婚約者を連れてきてやったぞ!」


 突然、ドレスナー伯爵はおかしな事を言う。

 もう、アーモンド侯爵家のエドモンド様との婚約は破談になり、変わりに養女のアイナが、エドモンド様の婚約者になったのだ。


 それで、アイナがアーモンド侯爵家に嫁いだ後、自分が、ドレスナー伯爵領を乗っ取る計画だったのだが、それなのに。


 まあ、乗っ取るというと語弊があるが、全く領地経営が分かってないドレスナー伯爵の代わりに、ドレスナー伯爵領を経営すると言った方が良かったか。


 まあ、全ては、頭が良くなったミミの受け入りなんだけど。


 とか、思ってると、リーナの部屋に、とても臭い体が腐った男が入ってきた。


「ゾンビ?」


「ああ……見ても気付かなかったか? この人は、お前の婚約者のエドモンド・アーモンド君じゃないか!」


「エドモンド・アーモンド? エドモンド様は、アイナさんの婚約者になったのでは?」


 リーナは、話が追い付かなくて、一応、実の父親であるドレスナー伯爵に尋ねる。


「ああ。ほら、アイナは、面食いだろ?

 流行り病のせいで、体が腐り落ち、醜くくなってしまったエドモンド君と結婚するのが、嫌らしいんだ?」


 ドレスナー伯爵は、エドモンドの前だというのに、とんでもない失礼な事を言う。


「それで、エドモンド様の気持ちは?」


「これは、家同士の契約だから、エドモンド君の気持ちなど、どうでもいいのだよ!

 お前は、家同士の結婚の為に、エドモンド君と結婚しなさい!」


 ドレスナー伯爵は、リーナに命令する。

 いつもだったら、突っぱねる案件だが、目の前に、左目が腐り落ち、腐りかけたエドモンド様が居るのだ、リーナには面と向かって、断る事など出来ない。


 今の放心状態のエドモンド様を見て、既に、アイナに酷い事を言われて、婚約破棄されたのが目に見えてるし。


「リーナお嬢様……」


 ミミが心配して、話し掛けてくる。


 しかし、本当に、リーナがドレスナー伯爵家から出て言っていいのか?

 リーナが居なくなってしまったら、魔聖水を作れなくなるというのに。

 だって、リーナが作る魔聖水の売上が、そのままドレスナー伯爵家の全ての収入源だと言うのに。


「あの……魔聖水が作れなくなってもいいのですか?」


 一応、ドレスナー伯爵に質問してみる。


「知ってるぞ! お前、魔聖水は、お前が居なくても、魔聖水が湧き出てくる魔法の瓶で作れるんだろ?」


 ドレスナー伯爵から、まさかの返答が返ってくる。

 なんで知ってる?いつも、誰にも見られないように使ってた筈なのに……。

 まさか、ドレスナー伯爵領を馬車で巡回してた3日間の間に、リーナの部屋を物色したのか?その時、魔聖水が湧き出る瓶を発見したのか?


 リーナの頭は、グルグル回る。


「兎に角、これは領主命令だ! お前には、今すぐ、アーモンド侯爵家に嫁いで貰う。そして、魔聖水が溢れる瓶は、没収する!」


 ドレスナー伯爵の後に着いてきてたアイナが、すかさず、机の上に置いてあった魔法の瓶を取り上げる。


「リーナお嬢様……」


 ミミは心配してるが、リーナ的には、全く問題無かったりする。


 もう既に、魔法の瓶を鑑定して、ステータスを書き換えたのだ。

 で、今の魔法の瓶のステータスは、こんな感じ。


 名前: 魔聖水(下)が湧き出る安価な瓶

 成分: 魔聖水(下)と、ガラス

 効能: 下級ポーションを製作する為の材料


 上と書かれてた3文字を消して、新たに3文字、下という字を付けたしてやった。

 因みに、文字の書き直しとかは、文字が完全に定着する1週間後なら、また、自由に書き直しする事が出来たりする。


 因みに、魔聖水には、上中下とあり、上は超高級品だが、下は、ほとんど水と変わらず、気持ちポーションにしやすい水という所だ。


 まあ、幾らでも水が湧き出る水筒としては使えるが、もう既に、リーナが作った魔聖水が湧き出る瓶は、元の価値は全く無くなってしまっている。


「それでは、エドモンド君。リーナをアーモンド領に連れてってくれるかな?」


 もうドレスナー伯爵は、リーナに有無を言わせない気だ。


「リーナ様が嫁いでしまうと、とても寂しくなりますわ」


 アイナが、泣き真似をする。

 寂しいとか、絶対に思ってない癖に。


「あの、エドモンド様のお気持ちは?」


 リーナは、まだ、放心状態のエドモンドに尋ねる。


「アッ! リーナ?!」


 エドモンドは、やっと目の前にリーナが居る事に気付いたようである。


「で?エドモンド様は、私が婚約者でいいと?」


「ああ。どうやら、自分には婚約者を選ぶ権利が無いようだ……」


 エドモンドは、完全に焦燥しきっている。

 自信もなくなってるし、やっぱり、アイナとドレスナー伯爵に、相当酷い事を言われたのだろう。

 リーナの前でも、かなり酷い事言われてたし。


「そうですか? なら、とっとと、この家を出ていきましょう!

 私も、もうこの家に、未練などありませんから。どうやら、私の実のお父様は、私より養女のアイナ様の方が可愛いらしいですから!」


 リーナは、ここぞとばかりに、嫌味を言ってやる。

 リーナに酷いのはいつもの事だが、体が腐ってしまうという重病に掛かってるエドモンドに対する仕打ちが、リーナ的に、どうしても許せないのだ。


「なんとでも言え、この鬼子が!お前など、とっとと、この家から出て行け!」


 ドレスナー伯爵は、リーナに嫌味を言われてお冠。どれだけ器が小さな男だろう。


「リーナお嬢様! 私も着いて行きます!」


 すかさず、ミミも、リーナとアーモンド侯爵家に行くと決断してくれる。


「ええ、ありがとう。私も、ミミを、こんなひとでなししか居ない家に置いて行けないわ!」


 そう。こんな家に、絶対にミミを置いて行く事なんて出来ない。

 ミミは、リーナにとって大切な家族なのだ。


「リーナ……本当に、僕に着いて来てくれるのかい?

 僕の寿命は、もって5年と医師に言われてるのだよ?」


 エドモンドは、心配そうに聞いてくる。

 こんなに、焦燥されて……お可愛そうに……


「大丈夫です! 私が責任を持って、エドモンド様を元の体に治してあげますから!」


 リーナは、男らしく言い切った。


 ーーー


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 作者がスキップして、部屋の中をグルグル廻ります。

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